02_05_10
岸壁を越えて行こうとするカインとエンデイ。しかし、すぐに四方から警告音が鳴り響き、途端に周りを熱水泉で覆われてしまった。
レイチェルたち三人が見つめるマップに、ライダーたちの位置マーカーが点滅とともに表示された。第二ファウンテンエリアの中腹で足止めを食らっているエンディとカインは、なかなか前に進む気配がなく、その進行ルートがジグザグと一進一退を繰り返していた。
「だめだ!先に進めない…」
「やっぱり、二機編成だと、ティナの走破データと乖離があるんだわ…」
レイチェルが残念そうに声を上げる。
「エリアに広がる間欠泉に翻弄されて、タイミングとルートを見定められていない…」
ユアンが口惜しそうにこぼす。
そもそも、ティナとユニバースがとっさに見せた連携は、高度なライドテクニックの上に成り立っている。データを共有したとして、簡単にあの二人に同じ芸当ができるのかと言われると、レイチェルも自信をもってそうだとは言えない。
ユニバースの二機に目前まで近づいたっていうのに…。
レイチェルがほぞを噛みモニターを見つめていると、エンディとカインがいるエリアの前方で、ユニバースのウルフブルーとブラウンも、なかなか先に進めずにいる様子がうかがえた。
エンディとかインは、レストポイントで熱水泉が収まるのを待った。先行するティナのマシンから送られてくるデータが、モニター上で、線で結ばれて示される。レストポイントまでは相対的に距離が遠く、平地を一気に走り抜けなければ、あっという間に熱水泉に飲み込まれてしまう。そうこうしているうちに、目の前の水飛沫が、どんどん下がっていく。エンディは、カインとマップデータをリンクして、オセロットから得られた推奨ルートの候補を共有すると、お互いのレストポイントにマーカーをつけて示し合わせた。
水飛沫の先に地平が開くと、カインとエンディは一気に飛び出し散開していった。ビーストモードで盛り上がった岩場を駆け上がっていくカイン、エンディ。走る二人の先に、ユニバースのウルフブルーとブラウンの機体も姿を現した。先行する機体を見つめ、コース取りを見定めようとするエンディの眼前で、不意に二機のシルエットが、それぞれ迂回のコースに分かれるように二手に分かれ、せりあがった岸壁の上に登っていった。
マシンモニターでは、間欠泉エリアの警告マップが膨れ上がり、あちこちから熱水泉が吹き上がり始めていた。エンディは、あわて予定されたレストポイントに向かい、バイクモードで加速していく。そこはトレイルの端、七色の湖のへりに位置する岩棚の隙間だ。
加速するエンディのオセロットイエロー。すると岸壁の上から、ビーストモードのウルフブルーが、大きくジャンプをして、エンディの頭上を飛び越していった。
「なに!」
逆さまで見つめるクランが、構えるエンディを見下ろしている。一瞬にやりと笑ったクランが、バイクモードに変形すると、そのままエンディの駆るオセロットイエローの横に降り立つと、体制を整えるようにドリフトして、ぴったりと後方についた。
エンディの脳裏にイエローストーンバレーで、このウルフブルーに蹴落とされた記憶がよみがえり、悪寒が走る。
「陣取り合戦をするってか…?」
ビーストライドは、あからさまなラフプレイは基本的には減点対象だが、スピードプレイによるルート争奪戦においては、レースの性質上、ぎりぎり攻防戦として判断されそうなライドファイトは避けられないこともある。エンディは、頭を上げて目を凝らし、自嘲気味に笑うと、
「いいじゃん!やってやんよ!」
とアクセルをふかして、自分が目指すレストポイントに向かってマシンを加速させていった。
レストポイントを確保するための動きを頭の中でシュミレーションするエンディ。先に到達したところを、後からタックルを賭けられてしまうと、自分が押し出されて、熱水泉の餌食になってしまう。なら、レストポイントに入る瞬間、ヒューマノイドモードに変形して、ターンドリフトで滑り込み、そのままあいつを熱水泉に突っ込ませる!
そう決めたエンディが、レストポイントに加速すると、ウルフブルーもぴったりついてきた。完全にチキンレースだ。
でも!
勝つのは私!エンディ様よ!
横滑りにドリフトしながら180度回転するオセロットイエローがヒューマノイド形態に変形して向き直り、対峙したウルフブルーを睨みつけると、そのまま後方に滑っていく。見るとウルフブルーはビーストモードに変形して、オセロットに向かって突進してきていた。
響き渡る警告音とともにモニターに広がっていく間欠泉のアラート表示。
レストポイントは渡さない!
オセロットイエローが身構えると、目の前に迫るウルフブルーがひらりと横に飛び上がり、ルートを外れていった。
え?
虚をつかれ、驚くエンディがレストポイントに収まると、周りを間欠泉の水飛沫が埋め尽くし、視界を覆って行った。
飲み込まれた?
息を飲み込み、ウルフブルーが消えていった先に目を凝らす。リタイアの通知は来ていない。
すると、ユニバースからデータリンク要請の通信が入った。
通信もとはユニバースのウルフブルーだ!
エンディはその文字を見て思わず目を疑った。
「データリンク要請。レストポイント共有、後続4機で協力してのルート踏破を希望」




