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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
2章05~カイザーファウンテンエリア~
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「おおっととと!あぶねえ!」

 エンディが慌てて急制動すると、オセロットイエローが地団駄を踏んで横づけにとどまった。瞬間、目の前から沸き立つ水蒸気があたりに広がり、エンディとカインの体を包んでいく。


 ランダムに噴き出す間欠泉が、白い柱のように立ちふさがった。その向こうには虹色の淵に彩られたエメラルドの泉が口を開けて広がり、まるで神殿の丘のように荘厳で荒涼とした風景を広げていた。


「こりゃすげえ」

 ごくりと生唾を飲んで、「ちょっとでもタイミング間違うとイチコロだぜ」とエンディ。「どうする?ティナの後を追う?それとも…」カインが応えながら、モニター上で、ティナのたどったルートを目で追っていく。カイザーファウンテンエリアの中央を突破していくティナのルートは、中央エリアに行くほど警告表示が増加していった。


「まじかー!危険度マックスじゃん!」

「ティナ、よくあんなにペースを保って…」

「推奨ルートを表示します」

 オセロットがマップに比較的安全と考えるルートを表示する。

「ティナが残してくれたルートのが、道は平たんだし、ラップは縮められそうだけど、間欠泉の数が多くて、リスクが高い」

「迂回ルートは、西と東で分かれているね…」

 西の奥を伺うと、とユニバースのウルフブルーとブラウンのマシンが高台の岸壁の上を走っていくシルエットが見えた。

「エンディ…どうする?」

 目の前の間欠泉の飛沫が次第に収まって小さくなっていく。

「どうするって…決まってんじゃん!」

 ティナの走破ルートが示され、ジャンプタイミングが表示された。走行データをエンディが確認すると、オセロットイエローは、大きく跳ね上がってダッシュした。

「追いつくために、勝負するっきゃないでしょ!」

 エンディが、目の前の間欠泉を越えていくと、沼地のように広がる岩盤のエリアを勢いよく駆け抜けていく。左右の間欠泉の激しく沸き立ち、モニタ上に警告表示がポップアップされる。蛇行するエンディのすぐわきから盛大に熱水泉がはじけ飛んだ。


 大きい!


 想像以上の飛沫の大きさに、エンディの機体がぐらりと傾き岩盤の傾斜を下っていく。

「うおっととと!」。

 予定のルートをそれて、その向こうに石灰石の隆起でできたあぜ道のようなルートをかけて抜けていくエンディ。さらに前方に展開する三つの間欠泉がエンディを待ち構えていた。

「うわあああ!」

 噴き出す水しぶきを慌てて回避するエンディが最後の間欠泉を飛び越えて着地すると、大きくドリフトして、地面に滑っていく。その瞬間、飛び越えた間欠泉が噴き上げエンディの姿を隠していった。


「エンディ―!」

 叫んだカインが、エンディのもと駆け出した。噴き出す熱水泉がカインの行く手を阻む。

 その先には、足を滑らせたエンディが熱水泉の泉に落ちていく姿が見えた。

「くそっ!」

 次々噴き出す間欠泉をよけて、カインのオセロットパールが手を伸ばす。ヒューマノイドモードになったエンディのオセロットイエローの手を、カインのオセロットパールがつかんだ。顔を上げたエンディの足元を隠す白く濁った水蒸気がはけていくと、オセロットパールの下半身は泉の淵ぎりぎりで止まっていた。


「やば~!たすかったよ…カイン!」

間欠泉から逃れるレストポイントに収まっる二人。白い靄に囲まれたカインとエンディの機体がヒューマノイド形態で立ち上がると、目指すべきルートの先を見つめた。

 カインがモニターを確認する。進んだ分だけモニターが更新され、いくつかの推奨ルートが表示される。


「くそう…、やっぱ、中央のルートはリスク高けえや」

 悔しそうなエンディの言葉を聞きつつ、推奨ルートを見つめるカイン。

「でも…、ティナの走破記録のおかげで、間欠泉警告の位置は正確だ」

 カインはエンディを見て、

「リスクは高いけど、越えられないルートじゃないかも…」

 エンディは驚いた表情を浮かべて、まじまじカインを見つめる。

「へえ、まじか?カイン?」

 と感心したように言うエンディ。カインは照れくさそうに笑みを見せて、

「次は慎重にいこうね!エンディ!」

 と言うと、エンディは

「わかった!」とカインに先行して、岩場の隆起を乗り越えて行った。


 ウルフブルーのクランとウルフブラウンのベルは、迂回ルートを巡っていた。

 大きな間欠泉が二人の前に立ちはだかっていた。

「クラン!あいつらだ!」

「あ?」

 ベルが指し示す方向をクランが見ると、後方湯気の向こうにエステートのオセロットパールとイエローがファウンテンエリアの中央ルートを選択して進んで行く。

「どうやら中央のルートをたどるみたいだね」

 ベルの言葉を聞いてあきれたようにクラン。

「無謀な脳筋ライダーには頭が下がる」

 そんなクランにベルが、

「それってビフのこと?」

 不意にちゃちゃを入れるると、少し困った表情を浮かべて、

「おいおい!やめろよ!」

 と慌てて苦笑いを浮かべるクランに、ベルがふん!と笑う。

「付き合わされるカルラは大変だね」

 と言って、ベルはひらりと岩場を越えていった。


 クランとベルが、しばらくビーストモードで走っていくと、目の前の岩場が開けてエメラルドグリーンの湖に阻まれた。迂回路の先に岩場が隆起して、激しく噴き出す水柱が天に向かって伸びていた。


 エリアから外れたトレッキングスポットには、柵から身を乗り出した観光客が、クランとベルが乗るマシンに歓声や口笛を吹いたりしていた。徐々に収まっていく間欠泉に合わせて、観客の声が沸き立ち、飛び越えろ!飛び越えろ!歓声を上げて煽り立てた。

「まあ、こっちはこっちで集中だ!合流まで気をぬくんじゃねーぞ!」

「りょーかい!」

 ブクブクと泡立ちながら弱まっていく間欠泉に向かって、クランとベルが同時に飛び出していった。



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