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マップ上のシグナルが、カイザーファウンテンエリアに入ったことをティナに告げた。ルートに飛び込んだ瞬間から、間欠泉の警告常時でモニターが埋め尽くされていく。幾重にも仕掛けられた間欠泉から、激しく水しぶきが舞い上がり、ティナの走る周りの視界を覆い隠していった。
まるで、本物みたい!
目の前に広がる地獄の温泉郷のような風景に、レプリカだとわかっていても、ティナの背筋に悪寒が走る。
続いて、ユニバースのマシンも続々ファウンテンエリアに突入していった。バックミラーでその様子を確認すると、ユニバースは二手に分かれて、ウルフブルーとウルフピンクは西のルートへ迂回していった。ウルフブラックとピンクはティナを追跡するかのように、中央のルートに歩を進めてきた。
白と茶の色が複雑にまじりあう、棚田のような石灰岩の段差をビーストモードで飛び越えていくオセロットシルバー、ティナ。彼女の目の前で、巨大な白い水しぶきの柱が立ち上がった。
このコースでは、熱水泉にはまったり、間欠泉に当たったりした場合は、即リタイア扱いとなる。
これらが全て本物だった場合、PH1~2を超える酸性の熱水泉にさらされたビーストライダーは、マシンともども無事では済まないことを前提としているからだ。実際に現在でもイエローストーンエリアに点在する酸性の熱水泉にはまって観光客が死亡してしまう例は後を絶たない。
慌てて飛びのくオセロットシルバーに降り注ぐ水蒸気の雨。体制を立て直し、改めてルートを探索するが、ところどころにエネルギーをためたような間欠泉が、マップで明滅、モニタ上の警告がポップアップで示された。
ビーストライドでは、突発的な自然現象はもちろん、コース上に意図的に仕掛けられたトラップに関しては、AIナビがデータで決定的な予断を下さないことがルール化されている。
ビーストライドを行うカイザーファウンテンエリアは、レプリカで作られた人口のエリアではあるが、間欠泉のタイミングか、ライダーたちに正確に共有されることは無い。実地に基づいたシミュレーションの過去記録のみ共有される。モニタに表示されるのは、あくまで過去記録に基づいた予測であり、当然、外れることもある。
なかなか思い切って前に進めないティナは,距離を測りながら、目の前の間欠泉のタイミングを計っていた。
「1、2.3…」
ここ!
何度目かの間欠泉が収まった瞬間を狙って一気に岩場を抜けていく。大きく跳ね上がったオセロットシルバーの後方を、大きな水柱が噴き出していく。
抜けた。
ティナは止まらず、次の間欠泉までビーストモードで走り抜けていった。
ユニバースのライダー達も、トラップに引っかからないようにそれぞれのルートを進んでいった。まるでこのエリア自体が巨大な迷路のようだ。一旦進んだ先には、必ず足止めをされる何かが存在していた。
それは大きな段差だったり、バクテリアが生息する酸性の熱水泉だったり、巨大な間欠泉だったりだ。
「ぜんぜん自然じゃねーし」
カルラがぼそっと吐き捨てて突っ込むと、先行するビフに続いて、間欠泉が多く存在する中央ルートを駆け上がっていった。
瞬間、トレイルスポットにいる観光客から歓声があがった。
ウルフピンクが高いジャンプで間欠泉を越えていく。打ち出したワイヤーをつかんで、ウルフブラックがさらに大きく跳躍して見せると、そのアクロバティックな演舞を見て、ファウンテンコースを見学していた観光客が歓声を上げた。
その様子を横目で伺うティナ。自らも目いっぱい後ろに下がると、吹き出す水しぶきが弱まるのを確認して、一気に前方に向かって走り出した。




