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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
2章04~メアリー山・巨大針葉樹林帯エリア~
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 ウルフピンクが上空に向かって大きくひらりと舞い上がった。


 ワイヤーを左右交互に撃ちだしながら、リズミカルに密林の間を起動していく。その視界の先には、銀色のオセロットのマシンのシルエットが、こちらは針葉樹林帯の間をビーストモードで駆け抜けていく。


 不整地で木々が密集する針葉樹林帯はバイクモードで走るルートはほとんど存在しない。ビーストモードで蛇行しながら走るか、ワイヤーアンカーで空中機動を取って走るかの二択になる傾向になる。ゆえに、密林地帯はテクニックと体力を余計に必要とし、ライダーの平均走破ペースも相当落ちる。ビーストモード中心に針葉樹の間をルート開拓しながら走破していってはいるが、カルラからすると、相当スピードが落ちているように感じていた。しかし、ティナは、ビフのペースにぴたりと合わせ、巨大な針葉樹が生える密林の不整地を走り抜けていく。蛇行するように走ったかと思うと、おもむろに空中機動転じて木々の間を飛ぶように抜けていく。軽やかな軌道を見せて、ペースを崩すことなく再び、ビーストモードでの走りに転じる。


 ペースメーカーをビフに任して、自身の体力を温存しながらの安定した走りを見せるティナ。カルラは、そんな銀色のオセロットの走りを後方から見つめながら、自身の唇の渇きを潤すように、ぺろりと舌で舐めた。


 ちょっとしかけてみようか…


 ふと、そんな衝動に駆られてスピードを上げると、カルラはオセロットシルバーに横付けして、急接近していった。


 そんなカルラを涼し気に見つめるティナ、その視線と目が合った瞬間、不意に空中機動に移ったティナが、脇にそれて、後方へペースをダウンしていく。肩越しにその様子を眺めるカルラ。自身もややペースをダウンさせビーストモードに変形して、木々の間をすり抜けていく。そんなウルフピンクに、ぴたりと後ろに付けて走るティナ。しばらくその状態が続いたかと思うと、オセロットシルバーはおもむろにワイヤーを撃ちだして、再び空中機動に移った。


 跳ね上がった銀色のオセロットは、先ほどのカルラの空中機動をトレースしたかのような動きを見せた。そして、一気にカルラのウルフピンクに接近すると自らの機体をそばに寄せて、ティナとカルラは目があった。ちらりとカルラのほうに視線を送ると、再びスピードを上げ、ウルフピンクの前方に収まって走り始める。カルラは、ウルフピンクを空中に舞い上げ、不整地を走るティナのビーストモードにぴったりとスピードを合わせると、機体を空中に跳ね上げて徐々にスピードを落とし、ティナのオセロットシルバーのやや後方についた。


 あっという間に追い越されたカルラの背筋にゾクゾクとした感情が走った。冷静なティナの一瞥を思い出し、カルラの口の端がにやりと上がる。


 ビフ…あんたに、このタマはもったいないかも。


 その様子をドローン映像を見ライアンコーチが手をたたいて喜んでいた。


「ブラボー!ブラボー!なるほどビフ!君が執着する気持ちがわかったよ!」


 モニターの脇に映し出されたマップを見てコーチが一人ごちる。

「あのカルラと,空中機動で互角かそれ以上とは…、次のエリアでの演舞が楽しみだ!期待しているよ!ビフ!」

 にやりと笑いながらモニターを見つめるコーチ。次にモニター上のドローン映像がビフを映し出す。

「そして、次の君の課題は決まったな」


「目標の数値から低下がみられます、冷静にタイミングを見極めるよう努めてください」

 ウルフブラックに叱責され、激しく息を切るビフ。ペースを落とすまいと必死の表情でタイミングをナビに合わせて、、迫りくる木々の群れビーストモードでよけながら、ナビの指示に食らいついてく。

「次の課題は、空中機動の向上と、ジャングルコースの攻略ですね」

ウルフブラックAIの言葉に、黙って歯を食いしばって走るビフは、ペースを落とさず走るのに必死だった。


 メアリー山の中腹も越えて、下りの斜面が多くなってきたところに、噴き出す間欠泉の蒸気の噴霧が漂い始める。つんとむせ返るような臭気がライダーの鼻に降りかかった。このままの下りルートを超えて、次のエリアに備えなければならない。ティナは、次のエリアは未知のアクロバットエリアだ。ナビが役に立たない場面では、先行するライダーの様子を見てルート攻略に移りたい、と思った。後方でマークにつくカルラの様子をバックモニター越しに越しにちらと見る。じっとこちらのほうを伺うカルラの視線が、少し緩んだような気がした。そんなカルラのマシンがふわっと宙に浮くと、その奥からマシンのシルエットが迫ってきている気配を感じた。


 ユニバースの残りの二機が追い上げてきている。ウルフブルーとウルフブラウンだ。


 木々の合間をぬった瞬間にティナにまとわりつく噴霧の雲。一瞬視界が白く濁り、薄靄の世界に潜り込む。その雲を乗り越えると、なだらかな下りの斜面が開け、地熱のために枯れた針葉樹が、墓標のように立ち並ぶ荒涼とした台地が目の前に現れた。茶と緑がまばらに変色した奇岩が広がるエリアが遠く垣間見える。


 カイザーファウンテンエリアだ!

 ティナのハンドルを握る手に力が入る。次のエリアがもう目の前だった。



「次のエリアは、イエローストーンコースの最大の目玉…」

 ユアンが固唾をのみつぶやく...

 石灰岩の隆起の激しい岩場に、ところどころに高熱と酸性の泉をたたえ、噴き出す水蒸気と、グロテスクな虹色の波間をたたえて口を開ける池が、多数存在する危険なエリア。


 ルートの攻略を失敗すれば即失格のデットコース。


 モニターのマップ上にマシンの順位を映し出される。ビフのウルフブラックを先頭に、ティナのオセロットシルバー、カルラのウルフピンクが続き、そこにユニバースの二機のマシンマーカー、ウルフブルーとブラウンが迫る。エステートのブース内でその様子を見つめるレイチェルたちは、このままだと次のエリアでは完全にティナがライダーとして孤立してしまう可能性を危惧していた。


「でも、エンディとカインも追い上げている!」

 テムジが、健闘している部員たちに心からエールを送る。今これだけ頑張れているなら、本大会…もしかしたら。

 ユアンもレイチェルも、片時も目を離さず、モニターを見つめた。


 目の前のモニターの最後方に点滅する緑のマーカー。マガネは、まだ前に向かって走っている。しかも、エンディとカインのエリア外退場を避ける健闘っぷりで、しっかりしんがりを勤め続けている。


 予想以上に部員たちがペースを保っていることに驚きを禁じ得ない3人の思いは一つだった。


 頑張ってみんな!絶対、完走して!




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