02_04_02
600万年以上前の噴火活動と地殻変動が生んだ赤茶けた大地を覆う、巨大針葉樹林エリアを駆け抜けていくビフとカルラ。
その後方で、ペースを伺いながらティナが二人を追いかける。このエリアは木々の密集度が高く、地上の起伏激しいため、バイクモードでの走行はほぼ不可能だ。獣道は細く、幾重にも分岐し、ルートの探索は困難を極めるため、木々の前方に開けた細いルートを頼りに、ほとんどライダーは、経験と勘で自身のルートを開拓していくエリアとなっている。
ウルフブラック、ビフもウルフピンク、カルラも、ビーストモードとヒューマノイドモードを使い分け、ワイヤーを伸ばして枝葉を伝い、まるでターザンのように木々の間をすり抜けていった。カルラはちらりと後ろを振り向くと、後方で自分たちを追跡してくるティナの気配を伺った。
グラウンドキャニオンエリアのポイントゲットをした時の、あの鮮やかなライドテクニックが頭を離れない。ショートカット後に前方に躍り出たことは良しとして、その後の起伏の激しい、石灰岩と泥の混じった丘陵地帯を、スピードを落とすことなく突き進んでいったティナ。カルラはその後ろ姿を追っているとき…、
追いつけなかった。
段差の激しいオフロードや、険しい断崖のコースは、カルラの得意な領域だ。不整地での臨機応変な動きや空中軌道でのしなやかな体幹とそのバランスで、アクロバティックに超えていくことにおいて、ユニバースでも右に出る者はいない。と他の部員からも高い評価を得ていた。しかし、
ティナって娘のバネの強さを侮っていた。
もともと、短中距離でのアクロバティックな演舞ライドが得意分野であり、ダンスビーストライドが自分の主戦場であるカルラは、スポットライトで派手に照らされた華やかな舞台で、観客の歓声を浴びながら、美しく舞うように走るのが好きなのであって、こんな、長距離で泥まみれになって走るハードエンデューロなんていうのは、まっぴらごめんなのだ。
しかし、今回の練習試合のために、ビフがカルラを担ぎ出してきた。
針葉樹林帯を越えた後は、慣性走行に切り替えて、後半戦の体力勝負に掛けに出るつもりはない。それもビフは織り込み済みだ。それで構わない、全部、ビフがおぜん立てたことだし、このレースで求められた成果を出して、後でビフにきっちり報酬を頂ければ、カルラとしては、順位もポイントもどうでもよかった。
でも、カルラは、抑えた走りを見るにつけ、ちりちりと自分の中に何かそれだけで済まないくすぶりみたいなものを感じている。
ハードエンデューロのビーストライドに本気になるつもりはないカルラにとっては実に煩わしい感情だ。
カルラがちらりと後ろを伺う。はるか後方のエリアに木々の間を飛び交うシルエット。ティナの白銀のオセロットマシンのシルエットが針葉樹林の枝を交互にワイヤーを這わして、空中を飛ぶように機動していく。
なんて大きな振り子半径。
カルラはその軌道を見て、背中にじりっ、と悪寒を感じた。後方で大きく旋回しながら、自分たちよりもはるかに高い位置で、木々の枝葉を伝い飛んでくるティナのオセロットは、まるで、いつでも私たちを抜けることをまるでアピールしているようだ。カルラは唇の端をぺろりと舐めると。大きく上空にオセロットピンクを跳ね上げて、ティナの後方にその機体を滑り込ませた。
トップを走るビフが異変に気付いて後ろを伺う。
カルラの奴がティナの後方に付けた?どういうつもりだ?
ビフはいぶかしみつつ、自身のペースもやや落としつつ、リスクオフの走りを心掛けた。
まあいい、針葉樹林帯に入る時にポイントゲッターをティナに譲ったのもビフにとっては、ある程度予定通りだ。
ティナは、このハードエンデューロのレースで、ビフの期待にキチンと答えてくれている。
ここを抜けた後のカイザーファウンテタインエリアは、ティナの自分への答えを聞く最後のエリアだ。
もっと。その技量を見せてくれ!
ビフはアクセルをふかすと、自身のスピードを大きく加速させた。




