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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
2章03~グランドキャニオンエリア~
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 イエローストーンのロウワ―滝の展望台から残念そうな声がざわめきと共にひろがった。


 一機が滑落。それまで互角の速度で登っていた二機に大きく離され、クライムヒルのスタート地点に戻されてしまったエンディのオセロットイエロー。ビーストライダーたちを撮影しているドローンカムは、レイチェルたちが乗っている中継モニタへ、その様子を送っていた。

「ああー、いいところまで行っていたのに」

思わず目を覆うレイチェル。そんなレイチェルにテムジが、

「でも、カインとマガネが追い付きましたよ!」

と、期待を込めるもユアンが残念そうに、

「これから、挽回してくれれば!」

と答える。しかしユアンは、カインはグラウンドキャニオンあたりで、前に進めなくなるのではないかと考えていた。練習コースでも、高低差の激しいコースでのカインは、ライン取りの甘さが目立つ。ボルダリングコースも、基本的に下を見ることが出来ないカイン。オセロットAIのサポートに従う従順さはあるが、状況を判断する柔軟さに欠ける部分は否定できない。それは、本人もあまり意識していない、高所への恐怖からくるものではないか?とユアンは考えていた。

「何とか登り切ってくれるといいが…」


 ユニバースのトップゲッターの二人は、ウルフブラック、ビフとウルフピンク、カルラ、続くエステートのオセロットシルバー、ティナは、すでにロウワー滝を乗り越え、残りのグラウンドキャニオンの走破に向かっていた。


 そして、ユニバースのウルフブルー、クランとブラウンのベルは、崖の中腹をあたりに差し掛かり、残りを登りきるためのスパートに入っている。


 崖のふもとに立って、エンディ、カイン、マガネの三人はその様子を見上げていた。

「ちきしょう!きたねえまねしやがって…」

 エンディにとって、ルート確保をしようとしたオセロットイエローを上からかぶさってきたウルフブラウンが妨害した体だったが、たまたま同時にルート取りに行った二人が被ったと言われれば、そう見えなくもない。

「悔しがるのは、後だ!オセロット!三人で踏破するのに有力なルートを出してくれ!」

 マガネの声にこたえるように、オセロットが三機のモニタ上にルートの一つを赤くポップアップされる。

「マジか…」

「単機走破できない右側の崖…」

川を渡ったその先の、ほぼ直角のクライムヒル。ボルダリングの技術のみで踏破しなければならないルートだ。そして、その先のルートは川の右側に通じているので、次のエリアまでの走破距離が短くて済む。

「たしかに…三機で連携すれば予測タイムを繰り上げられる」

「でも…難易度が高いルートじゃん…」

 カインがおろおろとして答える。そんなカインにエンディはにやりと笑って言った

「ビギナーズラックって知ってっか?」


 はるか崖の上で登頂を目指すクランとベル。崖の出っ張りに取りついて片手でぶら下がるウルフブルーのクランが、崖下のマガネ達の様子を伺った。

「お!腹をくくったようだな…」

 エステートの三機が怒涛の水量が落ちていく滝から離れ、反対側の斜面移った。

「まあ、ラップを詰めるなら、そのコースを選ぶだろうがな‥」

「滝つぼに落ちなきゃいいけどね」

鼻で笑ってあしらうように吐き捨てるベルは、体をひねって頭上の張り出しに手をかけると、崖の上を目指して登っていった。


「誰が先行する?」


マガネが聞くと、「あたしが先に行く」とエンディ、「私はこれでもクライムヒルは得意なほうだったんだけどね!でも、あいつらにいくつか借りを作っちゃった!」上り続けるユニバースの二機を睨みつけるエンディは、大きくため息をつくと「あいつらに借りを返させて」とマガネとカインをまっすぐ見つめて言った。「それに、今はティナが一人で走ってるんだから、はやく私らも行ってやらないと…!ね!マガネ!」と改めてエンディは、マガネのほうを向くと、はにかんだ笑いを浮かべた。マガネはちょっと当惑した表情を見せつつも、「ああ!」とうなずいて答えた。

 その様子をにんまりと受け止め、エンディが、「さて、みなさんデータリンクはできたかね?」というと、マガネが、手を上げて、「3番手でセットした、レイチェル先生にシンガリ、って言われているからな」

 と言うと、カインが、「ぼ、僕、二番手でセットした!」と続いた。二人の言葉を受けて、エンディは「ひょっほーい、私はファーストゲットね」と、なんだか浮かれたように答えると、やや呆れたようにマガネとカインが「ああ、はいはい」とたしなめるように答えた。


「じゃあ!行くよ!」


 言うが早いか飛び出すエンディ。

 舞い上がる水しぶきが横殴りにエンディの体を打ち付ける。張り出しを一気に2~3個とび越して登っていくと窪地の隙間に体を寄せて崖に背中を向けた。

「カイン!」

 次にカインが飛び出すと、先ほどエンディが登っていったルートをたどり、エンディのいる場所に向かって大きくジャンプアップした。岩場にワイヤーを固定して手を差し出すと、カインのオセロットパールがその足を手に乗せる。エンディのオセロットイエローがその手を大キックして上空に振り上げると、壁面に沿って大きく跳ね上がったカインのマシンが岩場にとりつき、さらに張り出しの岩場を乗り越えて、岩場の壁面にその身を潜り込ませる。


 エンディと同じように背中を壁面に付けるカイン。すると、その目の前に広大なグラウンドキャニオンの渓谷が広がり、風が舞い上がってカインの体を通り抜けた。その高さと広さに、カインの血の気がさっと引いた。


 マガネがやや腰を落としてダッシュの用意をする。

「エンディ!カイン!いくぞお!」

 走り出すマガネは、二人がたどったルートを追いかけるように駆け上がった。

「エンディ!」

 エンディのオセロットイエローが手を差し出す。その手に足をのせて、さらに上方へ機体を持ち上げていくマガネ!次にたどるルートはカインがたどったルートだ。

「カイン!」

 心臓の鼓動が跳ね上がるカイン。マガネの声に反応して、やらなきゃ!と思うも、体が緊張でうまく動かず、マガネにうまく手を伸ばすことができなかった。足を滑らしたオセロットグリーン、マガネがバランスを崩し、ルートをそらして滑落していく。

「マガネ!」

「くっ!」

 マガネはワイヤーを放つと側面の張り出しに括り付け、エンディの機体のやや上にかろうじてその機体とどめることに成功した。


 おおーっと、観光客から残念そうなため息が漏れた。


「大丈夫か!マガネ!」

「ああ!大丈夫だ」

 周りを見まわすマガネ。まだルートは生きている。ここから再度カインに橋渡ししてもらえば、上を狙うことができる。

「カイン!もう一度行くぞ!」

 カインに呼びかけるマガネ「オセロット、タイミング頼む…」


「だめだ!マガネ!ごめん」

 突然のカインの言葉「どうした?カイン」

「ごめん!怖くて!体が動かない…」


 カインは、目の前に広がる光景を見つめて、ただただわなわな震えていた。


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