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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
2章03~グランドキャニオンエリア~
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 グラウンドキャニオンの激流をさかのぼるように走るウルフブルーのクラン、ウルフブラウンのベル、そしてその二機は、前方を走るオセロットイエローのエンディをとらえながら走っていた。


 早くティナに追いついて、レースのサポートができる位置までたどり着かないと、と焦るエンディの目の前にロウワー滝が迫る。激しく舞い上がる水しぶきの先に、立ちふさがるようにそびえる黄金の岸壁。その中腹に三機のマシンが見えた。


 いた!ティナだ。


 オセロットシルバーのちいさなシルエットの脇に、それと争うように先に向かうウルフブラックとピンクが見える。どうやら、ユニバースがやや先行しているようだ。ほぼ垂直にそびえたつ岸壁に、ごうごうとなだれ落ちる滝、舞い上がる水しぶきが薄毛無理となってエンディの視界をふわりと覆った。青し空に溶け込むような黄金の岸壁が空高くそびえたつ。へばりつくマシンが豆粒のように見えるその巨大な威容に、エンディは軽くめまいを起こした。


「やべー!あんなとこ上るとか!まぢやべー!」


 オセロットイエローのモニタに推奨ルートが表示される。気を取り直したエンディが焦りながらルート選択をすると、ポップアップされたルートから、単機でティナに追いつく最適なルートを選び、登頂に踏み切った。ワイヤーを撃ちだし、ボルダリングルートまで一気に上り詰めると、オセロットイエローの指を張り出しにかけてぶら下がり、次に手をかける場所を探してバランスをとった。


 その姿を見て、ウルフブルーのクランがにやりと笑った。ウルフブラウンのベルに指示を送ると、二機のマシンは二手に分かれると、それぞれ別の登頂ルートを登り始めた。


 ごつごつとした岩盤の向こうに、オセロットシルバー、ティナの姿が見える。わずかな岩の出っ張りや隙間をつかんで登っていくティナ。オセロットマシンが持つバネと、ティナの筋力のしなやかさが伝わってくるような迷いのなさに、エンディは感心しつつも、自分も追いつかないと!と、さらに上方にある出っ張りに手をかけ、反対の手からワイヤーを撃ちだした。落下する水流が岩に当たって分岐がちぎれて舞う水しぶきの合間を抜けて、一気にウィンチで上方向へマシンごと押し上げていく。


「お!なかなかやるなあ!」

 とうすら笑いを浮かべるクランはモニターを眺めながら、次の登頂ルートを見定めた。

「だけど、オセロットシルバーに追いつくことを優先するあまり、登頂ルートがバレバレなんだよな~」

 ウルフブルーの機体を軽くスイングさせると、自身もワイヤーを撃ちだしてルートを攻略していく。


 オセロットシルバーのティナが、ちらりと下を見た。はるか下方に、エンディのオセロットイエローの姿を確認したティナは、続けて、ウルフブラックとピンクの様子もうかがった。彼らの踏破まで、あと2~30Mといったところだろうか?ティナの残り踏破距離は若干ビフ達に後れを取っているようだ。それに比べれば、エンディとユニバースのチームはまだロウワー滝のふもとみたいなものだ。ラップの縮まりはあまり期待できない。


 エンディはオセロットシルバーの姿をはるか下方で見上げていた。高さと険しさのせいか、ティナまでの距離をすごく遠く感じる。エンディは歯を食いしばり、ペースを上げるため、岩の張り出しに手をかけると、ワイヤーを撃ちだしてショートカットを目指した。


 ロウワー滝の登頂を間近に確信するウルフブラック、ビフとウルフピンク、カルラ。横目でティナのルート位置を確認すると、ティナのペースが速いのか、思ったよりもラップ差が開いていないようだ。そのペースの保ち方に感心しながらも、ビフは手を伸ばして、下から上がってきたウルフピンクを上に押し上げた。


 一方、ジャンプアップしたティナは、頂上までのルートが確実に見えるようになった。わずかな足場でバランスしつつ、ちらとはるか下方で壁をよじ登ってくるオセロットイエローの姿を見下ろした。そのエンディを左右に挟むようにユニバースのマシンが登ってきている。


「気を付けて!エンディ!」


 ティナの声にエンディが上を向くと、エンディの前に黒い影がかぶさった。アンカーを撃ったウルフブラウンがティナの頭上に舞い上がり、前方の張り出しにとりついた。エンディの顔がゆがむ。その先はエンディが踏破したいルートだった。


 先手を取られた。


 エンディがそう確信したとき、ウルフブルーはブラウンの脇をさらにかすめて舞い上がり、別のルート上に陣取っていった。モニタ上の予測ルート、推奨されていた選択ルートが、途端に警告表示が上書きされる。


 せっかく先行できていたのに!完全に逆転された!


 このままでは、ユニバースのマシンに阻まれて、ペースを上げることができない、どこかに抜け道がないか探すエンディが、ロウワー滝の絶壁の上を見上げた。


 くそ!このままじゃラップ差は広がるばかり!!


 焦るエンディがギリっと歯を食いしばると、ウルフAIに向かって問いかけた。

「オセロット!左の斜面からのクライムルートで迂回できる?」

「タイムロスが予測されます」

 オセロットイエローのモニタ上にルートマップが新たに表示される。

「OK!迂回して、ユンバースの二機から一旦離れて、別ルートからのアタックをかける」

 言うやいなや、ワイヤーを側面に打ち出し、右に大きく迂回してルート変更をかけた。


「かかった!」


 ウルフブルーも側面方向へ移動、張り出し部分に足をかけてぶら下がり、さかさまになってウルフブラウンに合図を送る。

「そのートは土砂に削られたフォールルートだ!」

 ウルフブラウンが振り子のようにウルフブルーの手につかまると、さらに反動をつけて上へ舞い上がる。

「一度滑り落ちたら、一気に下までなだれ落ちるぞ!」

 放物線を描いて飛ぶウルフブラウンが降下する場所。そこは、オセロットイエローが目指すルートポイントだった。

「な!」


 伸ばしたオセロットイエローの手をウルフブラウンの足が蹴り上げた。


「しまった!」

 エンディの目に、オセロットブラウンのシルエットが覆いかぶさると自分を踏み台にして上を目指すかのように視界から離れた。勢いエンディの目の前の風景が大きく回転していく。目測を誤ったその手は宙を掻き、体勢を崩して降下していくオセロットイエローは、そのまま急こう配の斜面を滑り落ちていった。


「うわああああー!」


 その叫び声に振り返るティナ。


「エンディ―!」

 叫び声とともに駆け付けるオセロットパールとグリーンの姿。

 ビーストモードで斜面を飛ぶように走ってきたカインとマガネが落ちてきたイエローを挟み込むように支えて食い止めた。


「大丈夫!エンディ!」

「ああ、だ、大丈夫!ありがとう…カイン…」

「ケガはない?立てるか?」

 頭を振ってマガネとカインを見るエンディが、オセロットイエローをヒューマノイド形態に変形して立ち上がる。

「つー…、モニタ上では故障個所もなさそうだよ…」

 見上げるエンディ。中腹近くまで登りつめたウルフブルーとウルフブラウンがこちらを見下ろしている。

「畜生!やりやがった、完全に狙ってやがったあいつら!」

 睨みつけるエンディが、吐き捨てるようつぶやいた。


「これで、エステートのポインターと、その他大勢は完全に引き離したな!先を急ごうぜベル」

「OKクラン!」

 ウルフブルーとウルフブラウンが再びヒルクライムに向かって行く。そのさらに上、ロウワー滝の頭頂部では、ウルフブラックとピンクが登頂を終えようとしてた。


 見上げるマガネに、一瞬振り返ったビフの姿が、そのまま上流に向かって行く姿が見えた。はるか90Mも断崖の先、ビフの表情はうかがい知れないが、マガネは拳を握りしめて、カインとエンディに向きなおった。

「行こうぜ!勝負はこれからだ!」

「おう!」

 立ち上がったカインとエンディが答える。そして、各々がロウワー滝の黄金の絶壁を見上げた。オセロットシルバーのティナのマシンが登頂に成功し、こちらのほうを見た。

「待ってろ!ティナ!」

 マガネは大きな声でティナに向かって叫んだ。

「必ず追いつく!だから、先に行け!ティナ!」


 断崖の先からマガネ達を見下ろすティナ。ややあって、踵を返すと、ビフ達の後を追うように、ごうごうと降り注ぐ滝の向こう側に消えていった。



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