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レイチェルが、双眼鏡を使って、レーサーたちの様子を見つめていた。
「スタートダッシュは予想通りね、相手のブラックウルフが一番で、ティナが二番手、その後はユニバースのピンクとブルー、その後ろにエンディ、ウルフブラウンと来て、カインと…」
加速する一団からやや遅れて、最後尾を走るマガネの姿を捕らえるレイチェル。
「マガネはちゃんと言われた通り、しんがりを務めているわね!えらいえらい!」
レイチェルの無邪気な言葉に、それって、ただ、スタートが遅れただけなんじゃ?との疑念がッよぎるテムジだったが、
「ドローンの追跡カムも良好です」
モニタに移る映像を見ながらレイチェルにこたえた。
「じゃあ、我々の監視ドローンも、中継地点に先回りと行きますか」
ユアンが促すと、レイチェルとテムジは、ウインドウの画面を切り替えて、コース各地で中継を始めているカメラにアクセスして、予定エリアの先を追って行った。
ウエストサム湖の外周、ループロードを走り抜けるライダーたちが、湖に流れ込む中洲沿いのコーナーバンクを攻めて、イエローストーン川からヘイデンバレーに向かって抜けていく。目指すは、イエローストーン河川沿いのロードコースだ。
ビーストライド・エンデューロ用に特設されたロードマップは、一般公道とも接しているが、ビーストレースとして許可された時間帯は、道交法の制限は一部免除され、ビーストライダーの制限スピードは大幅に緩和される。
高速にでも乗ってるつもりか!と、踏ん張るマガネも、前方を走るライダー達に遅れまいと、最後尾ながら奮闘していた。前方を走るカインのマシン、オセロットパールの後ろに付けるように、自身のオセロットグリーンのハンドルを握るマガネだったが、想定以上のスピードに拳が震える。最後尾を走っているのは、先生たちの指示だからとかではなく、今は単純に自分のスタートダッシュとコース取りの甘さが原因だからだと感じていた。焦るマガネにオセロットグリーンが警告した。
「マガネ!コース予測をもとに、IN、OUTのタイミングを調整してください。ペースが崩れます」
「俺の操作が悪いっていうのか?」
「体移動の負荷をかけるタイミングが良くないようです。タイミングサポート、致しますか?」
「い!いらねーよ!」
コーナーアウトと同時に無理して加速するマガネは、自分の中にオセロットグリーンに対して不信感が増していくのを感じた。
猛スピードで走るマガネ達にとって、稜線に沿って敷設された緩やかなスラロームでさえ、集中しなければ体を吹き飛ばされそうな急カーブに感じる。
「こんなスピードで、みんな平然とパスしていくなんて!」
正直、今は目の前を走るカインのペースにさえついていくのがやっとだ。
湖の河口から河川に従って、コースが左へ曲がっていくビーストライダー達。ウルフブラック、ビフを先頭に、オセロットシルバーのティナ、ウルフピンクのカルラ、ウルフブラウンのベル、オセロットイエローのエンディ、ウルフブルーのクラン、、オセロットパールのカイン、そして、オセロットグリーンのマガネと続いて、マシンがバンクを加速させてイエローストーン川に沿った丘陵地帯に入っていった。
前方を凝視しながら、IN、OUTのコースを見極めようとするマガネ。しかし、カーブに差し掛かった次のストレートで、すでにカインたちのシルエットが遠くに移動している。
「タイミングサポート、致しますか?」
オセロットグリーンがマガネに問いかける。
マガネは何も言わず、自分の力だけでカインたちに追いつこうとするが、徐々に引き離される自分に絶望を感じた。
くそっ!くそっ!こんなはずじゃなかったのに…。
悔しさで胸がいっぱいになるマガネ。
イシュバランなら…
「タイミングサポート、致しますか?」
「うるさい!」
思わず叫ぶマガネ。
こいつを黙らせたい!
一人遅れていく自分のふがいなさを感じながら、マガネはオセロットグリーンのメッセージに耳をふさぎたい気持ちで一杯だった。




