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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
2章01~スタートポジション~
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 マガネのヘルメットを乱暴につかんで、ピットガレージに連れ込んだティナは、そのまま放り込むようにマガネをガレージ内に押し込むと、思い切り壁を、ドン!とたたきつけ、マガネを頭から怒鳴りつけた。


「まったく!ただでさえ状況悪いのに!さらに厄介ごと増やしてどうすんのよ!あんたは!」


 ヘルメットを目深に肩をすくませたマガネは、上目遣いにティナを見やり、口をとがらせてすねるように言った。

「そ…そこまで言うことないだろ…せっかく助けに来てやったのに…」

 カチンときたティナはさらに一発ヘルメット越しにゲンコツを見舞わせると、

「えらそうに!今までライドの練習すらまともにやってないあんたが、そんな簡単に戦力になるわけないでしょ!」

 とマガネに迫った。しゅん…、となるマガネ。そこにテムジが

「まあ、まあ、まあ、二人とも落ち着いて…とりあえず、僕がマシンに乗るよりはいいと思うよ…、基礎体力もないし、完走すら自信ないし…」

 おずおずと手を上げたテムジが、

「できれば、僕も変わってもらいたいんだけど…」


 腕を組んで困ったようにその様子を見ているレイチェル。神妙な面持ちでレイチェルを伺うユアンは包帯で巻かれた自分の手でさすると、ため息をついてレイチェルに向かって言った。


「君は…、ビーストライド・レースは経験あるのか…」


ユアンの言葉を受けて、ちょっと言い淀むように、マガネが


「…ポケットライドからは、ブランクがある」

ぼそっと言うと、ばっと顔を上げて、レイチェルに訴えるように言った。

「でも、ここ1週間くらいは、イシュ・バランで練習して、ビーストライドの勘は取り戻しているんだ!最悪、完走するくらいの体力はある!」


 レイチェルは、ハッ!という顔を上げた。イシュ・バラン。その名前のマシンは聞いたことがある。あのマシンは、まさか…。


「なあ、先生!俺を出してくれよ!ライドチームの方針には従うからさ!」


訴えかけるようなまなざしでレイチェルを見つめるマガネ。困ったような顔で思案するレイチェルだったが、

「先生、イエローストーンコースは、長距離エンデューロの体力勝負です」

ちらっと、マガネのほうを見るユアン。

「そもそもテムジも無理やり参加させられているようなもんだし。同じセーフモードでの参加なら、彼、アメフト部で基礎体力だけは付けているでしょ?ポケットとはいえ、ビーストライドの経験もある…、まだ、こっちのほうが分がありそうだ…」


「ユアン!」


 ティナが抗議するかのようにユアンに向かって叫ぶ。

「それに、君らは依然ペアライダーだったんだろ?」

「そんなの、もう何年も昔の話よ!」

「それに、テムジもそう望んでる…」

 その会話を聞いていたテムジの顔にやや安堵の表情が浮かぶ。


「でも!」


 それでも、まだ何か言い返そうとするティナを制して、ユアンがマガネに向かって言った。


「ただし、この練習走行はチーム戦なんだから、安全走行で完走を目指すこと。無茶をしてチームの足を引っ張らないことを約束してくれ」


 真剣な面持ちでマガネに語りかけるユアン。マガネはパッと表情を明るくして、

「も!もちろん!ありがとう…、えーと…」

「ユアンだ…、いいかい?ティナ」

「ユアン…」


 困惑した表情浮かべるティナが押し黙っていると。その沈黙を破ってレイチェルが決心したように言った。

「わかった!じゃあ、多数決ということで、マガネ!レースエントリーするからライダースーツに着替えて」

「先生!」


 マガネが顔を上げると、レイチェルはマガネにくぎを刺すように続けた、


「ユアンが言った通り、無茶はしない。とにかく今回は、君はみんなの言うことをちゃんと聞くこと!一番後輩なんだからね!わかった」

 マガネがその言葉を受け止めると、まっすぐレイチェルを見つめて、うんうん!と首を思い切り縦に振る。

「わかってる!先生!」


 嬉しそうな様子で返事をするマガネを前に、レイチェルは自嘲気味にため息をつくと、そのはやる気持ちをたしなめるように言った。

「でも、そのマシンでは出場できないから、テムジ君が乗る予定だった、オセロット・グリーンでチーム戦に出てもらうわ、イグニッションキーは持ってるわよね」

「ああ!」マガネが自らのイグニッションキーを取り出す。

「テムジ!マシンのセッティングをお願い。できる限りの最適化をマガネに」

「任せといて!」


 テムジが答えると「マガネ!こっちだ!」とパドックのトレーラーに向かって走っていった。


「ありがとう!先生!」と言って、マガネも後に続く。


 困った顔で見送るティナに、後ろから見ていたエンディがツツっと近づくと「あのアメフトライダー、助っ人なんですか?」と脇から聞いた。エンディのほうを向くと、むすっとした顔になったティナは、


「あいつはただの同級生で、ただのバカよ!」


とまゆをひそめて、自分のマシンが待機しているパドックエリアに向かってずんずん歩いて行った。


「ははーん?」とその後姿を見送るエンディは、

「なんか、相手方のライダーも知っている風だったし訳ありかしらね?」

とにやにやしながらカインに話を向けると、

「せ、詮索はよくないよ…」

と、困った表情を浮かべて、その場をとりつくろうようにカインは言った。


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