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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
1章  ~ビーストライド~
20/95

16

 日の光が天頂から差し込む中、マガネ達はフットボールめがけてスクラムを組み、ぶつかり合う。


 選抜試合は一週間後に控えている。それまでに体を仕上げておきたいマガネは、あまり無茶をせず、フィートを詰めていくよう心掛けていた。

 セットから、短いダッシュで、できるだけ短くポイントを稼ぐ。周りのシフトも、マガネのそんな気持ちにこたえてくれるかのように、小刻みにパスワークを決めてくれる。

 今は、このチームの期待に応えないと…

 そう思った瞬間によぎる一抹の不安。


 昨日の一件以来、マガネの胸に去来する過去のリフレイン。


「インチキライダー!」

「スクラップ野郎!」


 テムジとは授業でもタイミングが合わず、会話を交わすこともない。


 ㇵっ!と気が付くと、マガネの脇を敵フォワードがすり抜け抜いていく。


「なにやってる!マガネ!」

 しまった!集中しなきゃ!

かぶりを振るマガネは、陣形に戻るとチームメイトの気合の入った掛け声とともに、一気に前にダッシュした。

 再びボールを囲み、ラインを組むマガネ達、押し合いもみ合い、転がったボールに群がっていく。ボールを手に取ったマガネのチームは散開し、再び相手陣営のラインを詰めていく。それぞれ対峙する選手にぶつかり合うと、両陣営は拮抗し、ボールに向かってもみ合いが始まった。手を伸ばしてボールを奪うマガネが再び飛び出していくと、ハーフバックで守りを固めていた相手選手がマガネに向かって突進してきた。


 ルートが見える。


 マガネは、前方を見据えると、襲い掛かる選手を潜り抜け、ゴールラインに向かって加速していく。

 いける!と思った矢先、マガネシフトを組んでいた相手側のディフェンスが折り重なるようにその進路を阻止してきた。マガネは、このまま止められるくらいなら…と、一か八かフットボールをゴールに向かって思い切り蹴った。


 大きく弧を描いて飛んでいくフットボール。


 固唾をのんでボールの行く先を見つめる一同。飛んでいくボールは、ゴールポストの脇をそれて、グラウンドの外へ抜けていった。

「あーあ…残念」

「惜しかったな!マガネ」

 部員たちがかける言葉を聞きながら照れくさそうに笑うと、

「スイマセン!俺、取ってきます」

 マガネは、ボールが消えて行った方に向かって走っていった。


 ボールを探してグラウンドから出ていくマガネ。どこまで転がったのかと探していると、仕切りネットの破れた端から抜け出たのか、ボールは坂道をさらに転がっていく。


 面倒な場所まで行ったな…と、草むらを分けてボールの場所までたどり着いたとき、隣接する山間の高低差を利用して作られたコースの向こうから、大きな爆音が響いて来た。


 丸太で組まれた壁を乗り越え、急こう配のオフロードをドリフトしながら走るバイクが迫ってくる。


 ビーストマシンだ。白銀のボディをまとったオセロット。ティナのマシン。


 マガネが茫然と見ていると、ティナのマシンがバイクモードに変形してドリフトし、マガネの見ている前に止まった。顔を上げてバイザーを上げたライダーと金網越しに目が合うマガネ。


「ティナ…」

「マガネ…」


 しばらく見つめあう二人だったが、ティナが、マガネの持っているフットボールに気が付くと、ふっと目を伏せた。、


「球拾い?大変ね?」

 しばらくぼうっとしていたマガネが、ㇵっとなって気を取り直すと、

「…ば…!ばっか!ちげえよ。俺、次の試合でスタメン入りなんだぜ。来年は、レギュラー確実だよ!」

 と慌てるようにティナに言った。

 それを聞いてティナは、「ふうん…」と目を細めてマガネを見つめると、

「よかったね、これで、もうビーストライドも諦められるってわけだ…」

「んだよ!それ…」

「別に、気にしないで…」


 一人ごちるようにティナは言うと、ダートに土煙を舞い上げてマシンを転回し、マガネに背を向けていく。慌てたマガネは叫ぶかのようにその背中に向かって叫んだ。

「しかたがないだろ!俺は!」

 言いかけてぐっと言葉が詰まるマガネ。


 「インチキライダー」


 ビフの声がマガネの頭の中で反響する。テーブルで頭を抱えている母の姿、父の遺影、クラッシュする映像がフラッシュバックするかのようマガネの頭の中に流れ込んで来た。胸を押さえて、押し黙るマガネ。


 その様子を肩越しに見ているティナ。

「そうね…そうやって、ずっと言い訳していればいいわ。」

 つぶやくように言うと、アクセルを吹かし、ティナのマシンが急加速で煙を上げてコースに戻っていく。空中でくるりと回転すると、ビーストモードに変形したオセロットは、オフロードのコース軽々と乗り越えていくと、土煙を上げて加速し、そのシルエットはみるみるマガネから遠ざかって行った。



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