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ビフは、残りのカウントが20秒を切ったところでルームランナーのスピードを30Kの速さに設定してスパートをかけた。
ダンダンダン!と激しい音を立てて足の回転を上げていく。
カウントがゼロになったところで、両脇の手すりに体重を預けて、体を浮かして一呼吸置く。そのまま反動をつけると、ルームランナーの脇に着地した。
ここは、ビフが住むマンションにしつらえられた専用のトレーニングルームだ。
夜のこの時間は、ビフの日課である筋トレの時間である。エレメントスクールからこっち、かつては30%以上の体脂肪率で、典型的な肥満児だった体形も、トレーニングを続けることで、今は10%ほどに絞れ、均整の取れた体へと変化している。
そうとも、もう!ピザ野郎とは言わせない!
ビフはスウェットスーツを脱いで、シャワールームで汗を流すと、普段着に着替えて、その足でマシンルームに向かった。
6thまでは、ユニバースのビーストライド部で使用している汎用のビーストマシンを使用していたが、これからは違う。
パチンとライトをつけると、マシンルームの中央でスタンドしているマシンが照らし出された。黒いボディに覆われたそのシルエットは、まるで狼のようだ。
「まったく最高のマシンだぜ」
ビフが満足げに見つめるそのマシンは、型は、ユニバース学園内で採用されているウルフタイプのビーストマシンだが、今日納車された、このウルフブラックは、ビフ専用にカスタムされたマシンだ。プロと同じように最高のメカニックによって再設計とチューンアップがなされている。
ビフは手に持っているイグニッションキーを見つめながら、明日からの練習に備えつつ、これからの計画を頭の中で思い描いていた。デビュー戦がエステートとの練習試合になる。それまでに、こいつとの相性をばっちり上げていかないと、ここからが、ビフ様の伝説の始まりだぜ!
「ビフ・マーティンはNO1でないといけない…」
と自分に言い聞かせるようにつぶやくと、
「明日からは、お前が俺の相棒だ!頼んだぜ…フェンリル」
とマシンに声をかけた。
漆黒のマシンのヘッドアイがじっとビフを見つめているように見える。
ビフは、ライトを消すと、扉を閉めてマシンルームから出ていった。




