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ティナが乗ったエステートのスクールバスは、山間の道を抜けると、湖を横断する大きなつり橋を超えて、サカヴィニアの街までやって来た。様々な企業の工場が集まる都市のサカヴィニアはこのあたりのでも人口が多い、中心的工業都市である。
ティナは、帰り道のスーパーマーケットで買い物を済ませると、折りたたみのカートバックに食材を詰め込んで、道路沿いに自分の家に向かって歩き出した。
まだ日が高いとはいえ、ティナが住んでいる周辺は、あまり治安がいいとはいえず、冬も近づくと、日が傾く前に練習を切り上げて早く帰らねばならない。早足に進むティナは、高架下のマンションの表玄関のロックを開けると、廊下の先まで進んで自宅の扉の前に立って呼び鈴を鳴らした。
目の前のスコープに顔を近づけて待っていると、中からバタバタと音がして、ドアの奥から、誰かがこちらを覗く気配がした。
「ただいま。ミル!マイヤ!いい子にしていた。」
ティナがにこりと笑って呼びかけると、内側から鍵とドアチェーンを外す音が聞こえてきた。
「おかえりなさい!お姉ちゃん!」
扉がガチャリと開いて、飛び出してきた二人の子供がティナに抱き着くと、ティナはその頭を撫でた。
ティナの双子の兄弟であるミルとマイヤは、泣きホクロの位置が正反対であることを除けば、ほとんど見分けがつかない双子の兄弟だ。右目下がミルで、左目下はマイヤ。褐色の肌にウェーブがかかった髪はセミロングで、ティナは、髪形も変えればいいのに、といつも思うのだが、本人たちが好む髪形が今は同じで、そこはミルもマイヤもゆずらなかった。強情なのは家系なのかしら?と、自分のことは棚に上げて、ややあきれているティナだった。
「はい、これ、キッチンまで運んで!」
とカートバックを二人に渡す。ミルとマイヤは、バックをもってキッチンに向っていった。
ティナはドアの鍵をかけると、上着を脱ぎつつリビングを抜けて、自分の部屋に向かう。学習カバンを机の脇に置くと、上着をクローゼットに仕舞い、そのままキッチンに向かった。すると、奥の部屋から車椅子に乗ったティナの祖母スイが現れた。
「お帰りなさい…。ティナ。お母さん…今日も遅くなるって…」
「わかった、すぐご飯作るから、待っててね。おばあちゃん!」
そう言うと、ティナはキッチンに向かった。
カートの中の食材は、ミルとマイヤによって仕分けされ、冷蔵庫の中にしまい込まれていた。キッチンのシンクにまな板を置き、包丁を取り出す。帰ってきてからのいつも作業、そして、夕飯を作り始める時間は、マンション近くの高架線に、定刻の列車が通り過ぎる時刻だ。
タガタガタとアパートの部屋が地震のように揺れると、バケットに入れた食材がカタカタと揺れた。




