07
来賓用の駐車場に音もなく滑りこんでいく黒いリムジンの運転席から、白髭を蓄えた運転手が降り立った。つと、後部座席のドアに滑り込むと、うやうやしくそのドアを開けた。
ぬっ、と降り立った少年は、年の割には鍛えられたように見える体躯は、ブレザーの上からでも、胸板が引き締まっているのがわかる。そばかす気味の顔はまだ幼さを残しているが、年恰好から見るとハイスクールくらいにも見えなくはない。
「ふん!しっかし、貧相な学校だな…おい!ビーストライド部の練習場の場所はわかってんだろうな?クラン?」
「先日軽く視察してきたから、そこは抜かりはないよ。ビフ。」
スマートタッチのデバイスに何事か打ち込んだ後、ウェアラブルディスプレイを展開しながら、クランと呼ばれたもう一人の少年は答えた。バンダナにキャップを後ろ前にかぶり、ビフと呼ばれた少年と同じ制服らしきブレザーを着ている。その少年は、展開したディスプレイで、ユアンとティナの画像を確認した後、送信ボタンを押した。
その情報を自分のデバイスに受け取り、見ながら車から降りる女の子が二人現れた。こちらも同じデザインのブレザーを着ている。ブルネットの髪をかき上げて、降り立ったその少女は、
「部員数は、ほぼ四名って…、必要な部員数に足りてなくない?」
と、リムジンの屋根越しに聞いた。
「まあ、ギリ?黙ってたら来年なくなってるかもね?ベル」
からかうように答えるクラン。ベルと呼ばれたその少女は、耳半分でそれを聞きつつ、もう一人の少女にちらと視線を送った。
くちゃくちゃ‥と、ガムを噛みながら降りてきたその少女はセミロングの髪が赤、青、黄と色鮮やかに染め上げられていた。見た目にも派手な髪の毛と、デザインが同じながらところどころ自分好みに改造がほどこされた制服が、やや彼女を特徴的に見せている。
「ちょっと、降りたばっかで、ガム膨らませるのやめなさいよ。カルラ」
とベルがたしなめると、カルラと呼ばれた少女は、そちらのほうにジト目を向けて膨らませたガムをパチンとはじいた。そのまま口の中に戻すと、その後、ポーズを決めて写メを自撮りするカルラ。「到着しました!」の文字を添えて、そのままクラウドにインスタにアップした。
先ほど送ったデータを展開して、自分のデバイスウインドウで確認するクラン。それは、先だって視察した時に、録画をしたエステート、ビーストライド部の練習風景だった。共有された練習風景の再生データをベルとカルラもじっと見る。落ち込んだダートコースを遮る高い壁を乗り越え、空中に跳ね上がるティナの軌道を見て、ベルが、へえ…、と感心しそうに声を漏らした。
「ほんと…ティナってのが主力っぽいけれど、部員2名じゃあなあ…。なんだってこんな学校の練習相手なんか受けるんだい?」
と、とクランがビフに尋ねると、
「すごいけど…、このくらいならマークするほどでもないんじゃない?それともスカウトでもする気?」
ベルが便乗して聞いた。その映像を確認しながら、ビフと呼ばれた少年はにやりと笑みを浮かべた。
「なに、ちょっとした野暮用よ…、昔の借りを返しに来たってとこかな?」




