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転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
2章 2部
81/82

81.勘違い

 

リザークは帰ろうとしていた魔法兵に向かい走り出し、兵たちもリザークに続いて走り出した。

だが1つ目の勘違いはリンドバル侯爵領であることだった。


ポルト兵は剣を右手に左手を正面にかざし魔法を放ったのだ。

パル目掛けて走っていたリザーク兵の横っ腹に魔法が突き刺さる。

パルのローブを着た魔法兵は腰から剣を抜き正面に構える。

リンドバル領の殆どの兵士や戦いに赴く町人達はすべからく魔法戦士なのだ。

2つ目は1つ目が成り立つと起こる数の誤解だ。最早戦力とみなしていなかった36人の魔法戦士は全て剣を扱えている。それは即ちポルト兵も含めれば90人程にもなるのだ。

攻撃手段が剣と魔法が入れ替わっただけに過ぎなかったということだ。

パルの正面に辿り着いたリザークが口角を上げ上段から剣を振り下ろした。パルは剣でそれを見事に受けきりリザークの剣を弾き、パルとリザークは正面に対峙する。

3つ目の勘違いはパルの剣の実力はやや劣るとはいえリザークと拮抗する程だったという事だ。

パルは自分の痺れる手を見て若干苦笑いを見せ、反対にリザークはパル戦の勝利を感じたが焦りも見える。

俺は決闘に水を差すのは申し訳なく思いつつ、素早くその決闘の横に身を躍らせリザークがこちらに気付く間もなく顔面に拳を叩きこんだ。リザークは顔を歪ませ5m程吹っ飛んだ。

4つ目はリザークの誤算というべきか、実は今この中で一番レベルが高いのは俺なのだが、リザークは俺を敵として頭数に入れていなかったのだ。

吹き飛ばされたリザークを見てパルは驚いたが、直ぐに剣を鞘に納め離れていく。

リザークのレベルは9でパルは7。エリアドルさんが使ったウィンドバリアがあれば勝利していたであろう程の差だ。

逆を言えばリザークにウィンドバリアを掛ければ俺も危ういところと言えた。小隊長クラスには俺もなった訳だ。

残りの雑魚はポルト兵とパルの部隊に殲滅させられた。暴れるリザークを殴りつけロープを借り受け近くの木に括りつける。HPはまだ残っている。


ゆっくりと村の扉が開いて、レイラさんが1人の女性を連れて表に現れた。レイラさんは木に括りつけられたリザークを一瞥してからパルとポルトの町の兵長に挨拶をしていた。

そのレイラさんが連れてきた女性はライラといいレイラさんの妹なのだそうだ。ライラさんはパルに抱きしめられ泣いていた。今回の侵略で父親を失ったという話だ。レイラさんはポルトの兵長と握手を躱すとポルトの兵達は去っていった。

騎馬に騎乗した男達も挨拶をして自分が倒した首だけを持ち去っていく。レイラさんは去っていく彼らにずっと頭を下げていた。

レイラさんはパルのところにも行き頭を下げ、パルは照れながら両手を振っていた。レイラさんは辺りを見回しながらゆっくりとこちらに歩いてくる。


「優、リザークを殴り飛ばしたって聞いたわよ。凄いわね。」


レイラさんは俺に笑顔で話しかけた。


「あ・・・いえ。レイラさんは・・その・・大丈夫なんですか?」


レイラさんは腕を組んでジッと俺を見つめる。


「気を使わせてしまったのか?まあ悲しいと言えば悲しいわね。妹も生きていたわけだし、父も妹を守ってくれたのでしょう。そう思うしかないわ。」


レイラさんはオレンジ色の空を見上げそう答えてくれた。レイラさんは俺を見て笑い、明るい話題で話を続ける。


「ところで優はステータスが見えるって聞いたわ。私のステータスも見えるのでしょ?この領にはカシムとエイダンと私と3人の大隊長がいるのよ。今度、マーサ様主催で武術大会があるの。私は正直優勝を狙ってるわ。それで、エイダンとカシムの強さって解るかしら?」


俺はレイラさんの初めてみる顔にホッとするが親が亡くなったばかりでこういう会話が出来るのだな。とも思った。俺の父であったなら・・・まあ確かにそこまでショックも受けないだろうな。俺は苦笑いで答える。


「いいですよ。エイダンさんは確かに強いですよ。今のレイラさんより上でしょうね。カシムさんは先程、通り際にいた人ですよね?流石にステータスまでは見てないですね。会える機会はありそうですか?」


レイラさんは村を眺めながら俺に言葉を返した。


「ええ。ありがとう。機会は作るわ。結構な賞金が出るらしいからね。この村の再興のお金は出ると思うのだけれど・・・。母は村は継がないでしょうし。きっと責任感の強い妹が継ぐのでしょうね。・・不良の私とは大違いね。」


・・何が不良なものか。村の為に、妹の為にここまで出来る人間は決して多くはない筈だ。・・俺も兄や義妹の為に何か出来たのだろうか・・・。


「それで、武術大会っていつあるんですか?」


「それね。来週末って話よ。」


この世界も7日の週刻みで月がある。12か月で1年というのも同じだ。

なので星も月も地球と全く同じといって間違いないだろう。


「来週末ってあと10日ありますね。では俺と死の森に行きますか?」


「そうね。私も考えたわ。でも先に死の森の話はマーサ様からもあるそうよ。」


それは行幸だ。俺はまだまだ強くなれる。俺は村の様子を外から見る。村は1つの要塞を成している。村人や南のリンドバルから来た兵士たちが壁に張り付いた死体を転がし壁を上にスライドさせ外すと通常の村の柵が現れる。

それから村人たちはリザークの軍の死体から鎧や剣を剥ぎ取ると山のように積み上げた。死体はその横で藁を組み、その藁の上に積み上げ火をつけた。轟轟と燃えていくリザーク軍の死体が現実と夢の狭間のような感覚を起こしてしまう。


俺は自然と目を閉じ手を合わせ、ここが現実だと狭間から覚醒する。


「燃えている奴等は敵なのよ。」


レイラさんがあきれ顔で俺を見やるが俺は目を閉じたまま口を開いた。


「死人に敵も味方もない。・・です。」



俺がそう言うとレイラさんはフッと笑い歩いて行った。



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