82.魔法防御
俺は木に縛られ座らされているリザークの元に向かうと項垂れているリザークの正面に腰を下ろした。
「なぜ村を襲ったんだ?お前がここにきたのは裏切ったリンドバル侯爵への制裁なのだろう?」
「・・・・・・」
黙って何も答えないリザークに俺は話を続ける。
「村1つ落とす為にここにきたのではないのだろう?お前が連れてきた300という数が多いのか少ないのかは俺にはまだわからないが、その数で1つの領を本当に落とせると考えたのか?お前の主は・・。
リザーク・・・お前は牽制の為の捨て駒だったのではないのか?それでなければゼストという男は馬鹿なのか、どちらかだろう。・・リザークお前は死ぬ為にここにきたのか?」
リザークは少し顔を上げる。
「・・・違う。」
俺はリザークに目を合わす。
「そうか・・・。ならお前はこの村がすぐに落ちると考え楽に蹂躙し凌辱し先に進もうと思ったわけだ。だが結果はこれだ。お前は悪だがそれは今はいい。ゼストが牽制でお前を送り込んだのも解るが、それも今はいい。
あそこで燃えているのはお前が連れてきた兵達だ。それも全てだ。・・知っているんだろ?魔法王国ゼストの魔法の本拠はリンドバル領だそうだ。今はゼストと敵対している。何故その数で攻めてきた?その数もゼストの命令か?一度撤退して魔法使いの数・・・・・」
俺はそこで息をつく。俺は何を言っているんだ、と笑ってしまう。
「・・何を笑う・・?」
リザークがそこに口を出す。リザークは不思議そうな目で俺を見る。
「いや気にしないでくれ。俺ならば兵を無駄に潰したりはしない。というだけだ。」
リザークは一つ呟きまた下を向き項垂れた。
「そうか・・・。」
その短い言葉がリザークの最後の言葉になった。次にリザークの元に向かったレイラさんが発見したのは自分の舌を噛み切って自害したリザークの姿だった。
リザークの亡骸は村人達に他の兵と同じように装備を剥がされ死体の山に放り投げられる。俺はリザークの傍らに落ちていた剣を拾い上げレイラさんに尋ねた。
「これ・・貰ってもいいですか?」
レイラさんと近くにいた妹のライラさんは怪訝な目で俺を見ると首を傾げ尋ねてくる。
「その剣は村を攻めた敵の剣よ?どうするつもり?」
ライラさんが俺に尋ねる。
「シルバーソード・・・アンデットに有効で鉄の剣よりも攻撃力が高い。それだけです。」
俺がそう言うとライラさんは俺と剣を交互に見る。
「確かにいい剣ね。だけど村の中ではその剣を腰に下げないでいて頂戴。」
俺はすぐに頷き「シャドウ」と魔法を唱える。黒い剣を持つ闇の青年が現れた。それにはライラさんもレイラさんも驚いた。
「何・・それ?闇・・の魔法なの?」
レイラさんが狼狽えながら呟いた。
そうか、聞いてないのか。と内心ミスったと思ったがもう遅い。
「はい。これは闇の魔法です。侯爵とマーサさんは知っている筈ですよ。」
俺は侯爵とマーサさんの名前をそこで出しトラブル回避に利用する。ゼストと同じ系統の珍しい魔法だ。怪しまれても面倒くさいのだ。2人の視線を気にせず淡々と作業を開始する。
俺は闇の青年に、今持っている錆びた剣を捨てるように指示を出す。すると闇の青年は直立に立ったままポトリと錆びた剣を落とした。俺はリザークのシルバーソードを取り出し闇の青年に渡す。
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★★☆☆☆
闇の兵士 ランクG レベル 1
闇属性
HP 13/13
MP 6/ 6
攻撃力 5 + 11
防御力 5 + 2
敏捷性 5
魔力 4
魔法防御 3
装備
シルバーソード 攻撃力に+ 10
(アンデットに特効×1.5倍)
服 防御力に+ 2
スキル
格闘 レベル1
剣術 レベル1 剣装備時×1の補正
闇魔法 レベル0
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銀色に輝く剣は吸い込まれるように黒い剣に変化していく。これでアンデット戦はかなり期待できそうだ。俺はすぐに闇の青年を戻した。MPは10消費したままだ。
俺は元々スケルトンが使用していた錆びた剣を拾い捨てようとしたが、おかしな現象に気付いた。
この錆びた剣に魔法属性が付与されていたのだ。
攻撃力は+3、そこに魔法攻撃力なるものが+1付与される。通常の敵には魔法防御が存在している。
魔法攻撃力が+1された所でダメージすら与えることは出来ない。
俺はまたMP10を消費して闇の青年を呼び出しシルバーソードを受け取り確認する。やはり魔法攻撃力は存在し+1と表示される。闇の青年にシルバーソードを返す。
闇の青年を連れ、俺は攻め込んできたリザークの兵達の鎧などの武具が積みあがった場所にくる。レガースを1セットその山から取り出し闇の青年に装備させる。やはりだ。
闇の青年が装備している間は防御力+3なのだが、それを外し俺が装備すると防御力+3に魔法防御力が+1付与されていた。棚から牡丹餅ではないが、そういう感覚に喜んだ。
「欲しいなら差し上げるけど?その剣もあるし今更だわ。」
ライラさんが俺の喜色に反応し提案してくれる。だがこの剥いだ装備達は復興などに使うつもりだろう。
「いや。それは申し訳ないです。自分で買う事にします。この剣だけで充分です。」
「そう。ならリンドバルで購入するといいわ。」
ライラさんがそう言うと俺はライラさんにそのレガースを渡す。
「この装備は全部売却するんですよね?」
「そうね。全部売却して復興のお金にするつもり。もっと防衛費に当てたいわ。」
ライラさんは腕を組む。
「だったらこのレガースだけ鑑定してもらって値段を知りたいのですが?」
ライラさんは俺の話に首を傾げる。
「なぜ?」
「そのレガースは俺の召喚魔法で呼び出した奴に装備させました。俺も初めて知ったのですが、そのレガースは魔法防御を備えています。+1ですが。」
ライラさんもレイラさんもそれには驚いた。
「魔法防御ですって?それは本当なの優?」
レイラさんが直ぐに食いつく。
「はい。鎧も籠手もレガースも全ていけると思います。それに・・・増産も容易かと。基礎の魔法防御に併せて、エリアドルさんが使用した防御の魔法も組み合わせる事が出来れば、レベルの低い魔法攻撃
の脅威は減るんじゃないですか?」
レイラさんもライラさんも目を輝かせる。
「そうね。凄くいい案だわ。闇の魔法には驚いたけれど・・。」
「ですね。転移者は光か闇の魔法を使えるそうですよ。ですが昔の巫女は光だったのですよね?闇の魔法が使える転移者が別に居たのですかね?」
俺は思わずそう言ったが、自分が何気なく言った言葉が腑に落ちなかった。昔の巫女が1人で転移したのであれば闇の魔法を転移者が使えるのを知らない筈だ。俺は首を傾げるが考えるのを止めた。
今はどうでもいいのだ。




