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転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
2章 2部
80/82

80.集まる部隊


リザークは叫んだ。歩兵部隊が入れ替わり村の周りを囲みだす。村の中はシンと静まり返った。約300名の歩兵で4方を囲んだリザークは大きな声で叫んだ。


「お前ら!もう全滅だからな!男共は皮を剥いで晒してやる。女共は犯してバラバラにしてやるからなぁ!突撃しろ!」


300人の兵に村の周りを4方に取り囲まれ一斉に掛け声と共にリザークの兵が村の周りに押し寄せる。村側と言えば戦える戦力は50人弱。村にしては多いくらいの戦力だが300人を撃退させることは到底できない。

ライラはその50人弱を4方に分散させる。正面の門のあるところはリザークの兵が殺到する。その門には果物や野菜の入った重い箱を積み上げ対応し左右を弓兵で対処しつつ魔法兵は全て後ろの壁に配置した。

後ろに回る兵を各個撃破する事で左右の兵が後ろの壁に廻っていくからだ。堀の水を抜けた兵達が壁に指を掛けると即座に指を剣で落とす。ライラは周りを見ながら魔法戦士10名に指示を出し左右の壁や後ろの壁に走らせる。


「ぎぁあああ」と左の壁から叫び声が聞こえライラが左側の壁を見る。

村の弓兵が乗り越えてきたずぶ濡れのリザークの兵に胸を剣で貫かれ倒れた。

魔法戦士がすぐさまその兵の首を斬り落としたが、更に壁をよじ登ってくる。

堀が周りに無ければもう村は全滅していたであろうが、その堀も死体が重なり兵達の足場となっていた。堀が無ければ只の150cm程の壁でしかないのだ。魔法戦士は更によじ登ってきた兵を斬り、弓兵に斬りかかろうとしているリザークの兵に風の魔法を飛ばし腕を切り飛ばす。だが、後ろからよじ登ってきた兵士に背中を斬られ倒れた。

止めとばかりに兵士は剣を振り上げた、魔法戦士は風の魔法をリザークの兵士に飛ばし首を飛ばしたが自分の胸にも剣は深々と刺さっていた。霞んでいた目をもう一度開き壁を登ってきた男に魔法を飛ばし首筋が切れるのを確認すると静かに目を閉じた。

村の戦力は少しづつ減ってきている。死傷者は10名を越え、だが防衛戦で堀が功を奏して相手は60名以上の死傷者を出していた。ライラは正面壁を幼馴染であるギリ―と2人で守っていた。多少レベルが高い2人だが無理があった。

2人で15名は殺していたがまだまだ壁を登ってくる者は後を絶たない。


・・その時だった。「うぉおおおおーー」という声が壁の向こうから聞こえてきたのだ。




リザークはそろそろ村は落ちる。と確信していた。だが悩みもあった。ここに来た目的はこの村を落とす為では無いのだ。予想以上の兵の損耗。もう兵の3分の1を失っているのだ。

更にリザークに追い打ちを掛ける。20程の騎馬に跨った男達が槍を振り回しながら村の側面を走り始めたのだ。

背中を襲われた兵達は1人また1人と倒れていく。先に辿り着いたのはポルトのギルドメンバーだった。

彼らは村の周りを騎馬で走り回り兵の数を減らしていく。その様は、決して無理をせずヒット&アウェイを繰り返す。だがライラ達からすればそれは有難かった。壁をよじ登ろうとする兵が圧倒的に減ったのだ。


ライラは助勢の第1陣に気付きギリ―に後ろの壁に行くように指示を出した。

魔法兵はMP切れが存在するのだ。ギリ―はライラを心配したが、頷き走り出す。

狭い村の中すぐにギリ―は後ろの壁に辿り着くのだがライラの予想は当たっていた。

25名いた魔法隊の半分は殺されていてその中にはギリ―やライラの父の姿もあったのだ。ギリ―は歯を食いしばり剣を強く握り登ってきた兵達を相手に戦い始めた。



「撃てぇぇぇ!」


第2陣の女性の声が村の中まで轟いた。


パルが叫ぶと西側、門から右側に火炎や風の魔法が怒涛の如く叩き込まれた。

堀から壁に登ろうとしている兵士に、である。兵士たちは泡を食ったように慌てふためき南北に逃げ出していく。南に逃げた兵達は、東から南へ移動してきた騎馬たちに外周から槍の餌食となる。


パルが来てくれたのだとライラは確信し右壁の守りを放棄して右壁の守りの弓兵を全て左の壁に進ませ、残った魔法戦士を正面壁に急がせた。

正面壁と門の内側に集まった魔法戦士、ギリ―を覗いた生き残り4名は2名、2名に分けられ南壁へと走らせた。

村の戦力は既に半分にまで減少している。狭い村だ。父が亡くなった報告も既に受けている。

ライラは拳を強く握り正面の壁に目を向け3人で防戦を始めた。


パルは西の壁から左右に逃げた兵達を追う。

だが南は放置し北側に逃げた兵達の掃討に移った。

南を放置した理由はリンドバル軍中隊100が騎乗し真っすぐこちらに向かっているのが見えたからだ。


リザークは目の前の状況を把握できずに口を開けていた。目の前、村を取り囲んでいる右側から自分の兵達が逃走してこちらに向かっているのだ。その背後から背中に執拗に魔法が直撃して切り刻まれ、燃やされている。


左は・・・騎馬が・・いや馬車が4台、高台から駆け降りて来ている。馬車が停止し中から剣を抜いたポルトの軍小隊50が3列に並び「行けぇぇ!走れぇぇ!」と小隊長の号令と共に一斉に東壁へと突っ込んでくる。


これでリザークの残り200の兵は更に南と北に分断された。



南側に取り残された兵達80人程はもう村の壁を登ろうという気力を失っていた。北に逃げた左右の兵達も背中をパルの魔法隊、ポルトの兵士達に北に北に追い込まれていく。


カシム大隊長はその80人を見据え馬上から剣をブンと振り下ろし、それを号令とした。

「おおおぉぉぉ!」という掛け声が南から響き渡り、逃げ場を完全に失ったリザークの南に集まった兵達はカレンやリカルド達と同等のレベルの兵達100に蹂躙されていった。


北に追い詰められたリザークの兵は更に左右から追われ殺され数を減らしていく。

南を蹂躙しつくそうという時に1頭の馬でレイラと優が到着した。


「レイラ殿か・・・ここはいい。北に向かってくれ。」


レイラさんは村の状況を外から眺めながら馬で北上していく。堀の水は真っ赤に染まり死体が積み重なっている。更に死体を踏み台に登ったであろう兵士達も壁に張り付き死んでいる。

登り切って村の中に入った兵もいるのだろう。暫く進むと正面に睨み合っている同数くらいの兵と魔法隊がそこにいた。両軍80人程だろう。


「優、後は頼んだ。」


レイラさんはそう言うと村の前に陣取っている兵士と魔法使いに頭を下げ扉の横の壁から死体を足蹴にヒョイと村の中に入っていった。


俺に頼まれても困るのだが・・・。付き添いだった俺は完全に取り残された状態だった。ゼストの兵は我先に北に逃げようとするが魔法によって一瞬で滅せられる。


「レイラさんに連れられてきたと言う事は只の人という訳じゃないわよね。私はパル。ここから南西の村から加勢にきたの。」


俺は山麓の篝火が目にとまる。


「そう。あれに火が灯ると見える範囲の担当は火を付けないといけないのよ。」


パルさんはショートカットの女の子という感じだが、この世界だ。年齢は解らない。マーサさんを見てから年齢を言い当てるなど烏滸がましく感じた。だがこの伝令方法は、今の世界で最高の速さを誇る伝令手段だろう。


「パルさんは・・」


「パルでいいわ。私と貴方の年齢は然程も変わらないはずよ。」


俺は頷くが年齢を聞く根性までは持ち合わせていなかった。


「じゃあパル、俺は優。アイツらは何故この村を襲ったんだ?目的はリンドバル侯爵だろうに。」


パルは俺の名前に頷き、そして首を振った。


「ゆ・・優ね。・・・そんなのは知らないわよ。景気付けに殺そう、とか女を犯そう、だとかそんな理由でしょ?」


俺もそういう奴等がいるのは解ってはいる。死人もでる。それで返り討ちにあってれば冗談では済まないだろうに・・


「何故こんな馬鹿な事をするのだろうな・・」


俺は呟いた。その俺の呟きにパルは答える。


「馬鹿が馬鹿な事をする理由は1つだけよ。それは馬鹿だからよ。・・だけどね私はこういう馬鹿は許せないの。」


パルは身もふたもない話しをすると魔法使い達の前に出る。そして大きく片手を振り上げた。


「もうそろそろお開きよ。村に帰るわ。MPが切れるまで撃ち尽くしなさい。」


パルはそう言うと振り上げた手を勢いよく振り下ろした。一斉にリザーク達に炎と風の魔法が怒涛の如くぶつかり火が付き風が煙を巻き上げた。


「帰るわよ。優、またね。」


それだけ言うとパルは馬車を呼びよせ、もう終わったとばかりに帰ろうする。ポルトの兵長も肩を持ち上げ溜息を吐く。その時だった。


「うぉぉぉぉぉぉぉ糞がっ!舐めやがってぇー!」


突然リザークが自分の髪を掻きむしり血走った目でパルを睨みつけた。余程パルの行動が許せなかったのだろう・・。ポルトの兵達は剣を抜く。リザークのレベルはサムソンより高い。

だが数の暴力を圧倒できる程ではない。今はポルトの兵残り40と騎兵15程、リザークの兵も40〜50は残っている。


「数はまだ俺達が多い!勝機はある。俺に続けぇ!」



リザークは勝機を見付け突撃を選んだようだ。だがリザークは4つの勘違いをしていた。



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