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転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
2章 2部
79/82

79.リッカルの村




「ゼストの尻尾・・・?・・それは本当ですか?」


レイラさんが驚き叫ぶ。


「ああ。リッカルにもう到着しておるじゃろうのう。」


「そんな悠長な!」


レイラさんはマーサさんを睨みつけ街の方へ駆け足でマーサさんとの会話を切る。


「まあ待て待て。もう先遣隊は行かせておる。侯爵の護衛のリカルドとカレンも兵の端に付けておる。ざっと100は行かせたかの。」


レイラさんは立ち止まりマーサさんの話を聞いた。マーサさんは話を続けた。


「カシム大隊長に指揮を執らせておる。奴は塔のゲオルグ隊長のライバルじゃからの。そこそこ働くじゃろう。」


俺はそこに口を挟んだ。


「マーサさん。俺はよくわからないんだが・・マーサさんやエリアドルさんが動けば人死は押さえられる気がして・・。なんかマーサさんはボードゲームでもしているように思うのですが・・。」


マーサさんは首を振る。


「いや。それは違うぞ。わしやドルはこの閉鎖した国の最後の要じゃ。自分で言うのもなんじゃが失う訳にはいかんのじゃ。それに指揮官とはそういうものじゃろ。」


俺は下を向き、解ってはいるが釈然としなかった。


「ではなぜ、兵達のレベルに拘ってこなかったのですか?もっと前からレベルを上げてればゼストの兵達には負けないはずだ!」


マーサさんはじっと俺を見る。


「平和じゃったから・・・じゃろうな。侯爵を王城に行かす事でゼストからの攻撃も止んでいたのも事実じゃし、お前らが来る前までモンスター達も大人しかったからの。それも何百年もじゃ。」


レイラさんがそこに割って入る。


「私も行かせて下さい。マーサ様。」


マーサは腕を組んだ。


「レイラはリッカルの出身じゃったか・・。」


「はい。妹がリッカルの村に。」


マーサさんは俺を見て話し出した。


「早い馬でレイラと優と2人でリッカルへと加勢に走ってくれるか?」


俺は頷いた。


「はい。直ぐに準備します。」





「リザーク様、あれがリッカルの村です。」


1人馬に乗ったリザークはその高台に囲まれた村を見て怪訝な顔を見せるが、直ぐにニヤけて側近の兵に言葉を返した。


「あの村を落として若い女共を攫うとするか。後は全て殺せ。」


リザークに付き従う兵達も口角を上げ士気を上げた。歩兵300、魔法兵20、弓兵30からなる総勢350の内戦を起こすには大隊に属す数である。その大隊は歩兵を前に少し離れた高台から村を見下ろしていた。

高台から下りた平原には畑が広がりその奥にぐるりと掘りが村の周りに設けられ1m程の深さの水が貯水されている。その奥、1つの小さな橋を渡ると村の入口があるのが見える。

木の扉はしっかりと閉じられ、堀の内側、村の外周の柵には1.5m程の木の板が差し込まれている。

外から乗り越えようにも堀の深さが1m以上幅は2m程もある。堀を飛び越えても平の板壁が塞いで簡単に中に入れない。


「歩兵、前へ。」


リザークは号令を掛け高台から下りて畑の中を行軍する。村から50m程手前で止まりリザークが喋り出す。


「我が名はリザーク。ゼスト王のひ孫にしてこの大隊の隊長だ。黙って門を開けば手荒な事はしないと誓おう。」


リザークはそう言うと前線に並んでいる歩兵に向け手を挙げた。

歩兵は一斉に剣を抜き攻撃の構えをとる。するとシンとした村の中から男の声がする。


「この村に何か御用でしょうか?騎士様。」


リザークは歯をギリリと噛みしめ声を荒げた。


「御用じゃねえだろう。ゼスト王の親族で王都から来たんだ。黙って開けろと言っているんだ。」


そのリザークの言葉に何の返答もなかった。リザークは一息つきまた話し出す。


「まあ、この村をちょっと通して欲しいだけなんだ。わかるだろ。」


するとまた男の声がする。


「ではこんな寂れた村は迂回して行かれると良いでしょう?ここはリンドバル侯爵が収める場所。王都との確執も存じております。」


リザークは地面を蹴り上げる。


「じゃあ戦るって言うんだなぁ!俺達と!魔法兵、弓兵、前に出ろ。」


リザークの兵が動き出す。


暫くすると中から若い女性の声がする。


「待って下さい。リザーク様。準備をしてから門を開けますので暫くお待ち下さい。」


その若い女性の声を聞いたリザーク達は口角を上げ弓を下ろさせた。


「ああ。少し待っていてやろう。だがあまり待てんぞ。」


柵に嵌め込んだ分厚い板の隙間からリザーク兵達を覗く兵長のライラが指で少年少女達で組織された20名の弓隊に150cmの柵板に張り付くように指示を出した。

その弓隊の後ろに25名の魔法隊を息を潜め配置する。

リンドバル領しか出来ないであろうこの村の戦力の布陣。

村の老人たちも魔法隊に所属している。ライラ達、魔法戦士10名は門の前で待機しライラは時間稼ぎをする。レイラの妹のライラは戦闘開始の合図を固唾を飲んで待っていた。


何十分か経過しただろうか、リザークは待ちきれずに声を荒げた。


「どれだけ待たせるんだ。もう待てないぞ。」


ライラは弓兵を見回し手を挙げる。弓兵の少年や少女は自警団でホーンラビットや小鬼程度なら倒した経歴を持つ者ばかり。レベルは然程高くはないが初心者と言う訳ではない者ばかりだった。

それと、この村はマーサから鉄の弓と鉄の矢が大量に防衛用に送られてきていたのだ。


その弓兵達はライラの合図で屈んだ状態で弓を引き絞った。


「すみません。リザーク様。直ぐに門を開けます。」


リザークは二ヤリと口角を上げた瞬間だった。これが弓兵への合図だったのだ。


時間を置き緩み切った士気で待機するリザークの兵達。弓を地面に置き空を見上げる弓兵や胡坐をかき話し込んでいる魔法兵達に一斉に20本の弓矢が飛んでいく。リザークの兵達は軍というよりは賊の集まりであった。

まずライラは男性の魔法戦士にリザークを挑発させ、鎧を着こんだ歩兵と装備の軽い弓兵と魔法兵と入れ替えさせ遠距離部隊を前に配備させるよう促した。魔法兵が前に出たのを確認するとライラは門を開けて歓待する旨の話をしだす。

気の短いリザークは遠距離攻撃で脅せば小さな村は直ぐに門を開くと踏んでのライラの策だった。ライラの策は直ぐに嵌り雑談している魔法兵や弓兵に矢が届く。防御の薄い魔法兵の背や腕に矢が刺さり悶絶して転げまわる。

リザークは目を見開き周りを見やった。村の弓兵は直ぐに屈み弓に矢を番える。入れ替わりに魔法兵が立ち上がるとライラが挙げた手をサッと下ろした。風の魔法や火の魔法が、弓を拾い慌てている弓兵に殺到する。

魔法防御を有していない弓兵は首や手を切られ、更には火だるまとなり走りだし、周りに抱きつき2次被害を出し始めた。更にそこに弓の追撃を受ける。

堪らずリザークは弓兵と魔法兵を引かせたが、もう既に魔法兵と弓兵の半分を失っていた。しかも負傷兵も入れるとリザーク側の遠距離攻撃部隊はほぼ全滅と言っても過言ではなかったのだ。


「なんなんだ!この村は!」



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