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転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
2章 2部
78/82

78.ゼストの尻尾 

ご無沙汰です。モデルナは思った以上にキツイですね。


その落下防止の壁に寄りかかり煙草をふかしている男がこちらを珍しそうに見ていた。


「やあ、珍しいなレイラ。久しぶりと言っておこうか。」


男は煙草を南側の壁の外に投げ捨てこちらに歩いてくる。


「エイダン、ここにいたのね。まあ探してはいなかったけど居たのならいいわ。彼は優。巫女様とこちらにきた騎士ってとこかしら。」


エイダンさんはスラリと高い背に腰にロングソードを帯刀しており金髪で30代半ばと言ったところでブルーの魔獣の革を装備している。


「は・・じめまして。優です。」


俺は頭を下げる。エイダンさんは少し笑い俺の肩に手を置いてそのまま歩いて俺を通り過ぎ南側の壁から外を眺めた。


「マーサ様が連れてきたんだろ。ここに。大体わかるさ。優・・だったか。ちょっと来い。」


俺はエイダンさんに言われるままエイダンさんの横に近づいた。


「ここから南をよく見てみろ。」


壁の向こうは300年前に滅びた国の跡地。恐る恐る俺は外を眺めた。俺の立つ壁は外からは200m級の高さを誇っており、空は通常通り青々としているのに対し下は真っ暗で所々木々がその闇から顔を出しているという

状態だ。「キシャァァァ」「ウォー――」と雄たけびが彼方より聞こえるばかりで他に何も見えない。見渡す青い空の先に黒々とした闇が遥か遠くに見え、あれがスタンピードの元凶だと思わせる。


「もっと目を凝らして下を見ろ。」


エイダンさんが隣でつぶやく。俺はそれに従いじっと下を覗き込んだ。すると闇が動いている。いや違う・・黒い魔獣や赤黒いモンスターがそこらをうろついている。まだ南の山まで1国分程距離があるというのに目視で見えるモンスターや魔獣のレベルはほぼ全て20を越えている。

更に先にはもっと強い魔獣がいるに違いないと思わせるのに時間は掛からなかった。


「優、お前の友人はあの遥か先に見える霧の砂漠より先にいるのでしょう?そこに行くには生半可な覚悟では無理よ。私やエイダンでさえここの壁の真下で恐らく1分も持たないわ。エリアドル様やマーサ様はここで修行していたって言うから驚きよね。」


死の森が本当に小鳥がさえずる林に思える程の闇の世界なのだ。友紀はこの先から押し寄せるモンスター共を押さえねばならないのか・・・。俺は拳を強く握った。


「確かに魔法が有効なのだろう。だがここから魔法を飛ばしても当たりはしない。奴等は感が鋭いからな。しかも遠距離武器で仕返しされる恐れもある。前にそれをして頭を吹き飛ばされた魔導士が居たという事だけ言っておこう。」


エイダンさんが俺に一応の注意勧告をする。ここからのレベリングも無理と言う事か。


「じゃあ優、もう行くわよ。ここは寒いわ。」


「ふん。つれないな。レイラ。もう少しゆっくりして行ったらどうだ。茶ぐらいは出すぞ。」


「いいえ。遠慮しておくわ。貴方も壁の西端から死の森の監視しなくちゃいけないのでしょう?」


エイダンさんはつまらなそうに腕を組んだ。だが何か思い浮かんだのかこちらを向き話し出す。


「あ。そうだレイラ。死の森の瘴気が少し薄くなってきていると部下に連絡を受けたところだった。」


「あー。それは恐らく優のお陰でしょうね。」


エイダンさんはヒューと口笛を吹き、レイラさんは薄く笑った。




俺はレイラさんの後に付いて大壁砦を後にする。橋を渡り振り返り大壁砦を見る。レイラさんも立ち止まり待ってくれていた。

街に戻るとマーサさんが学園の前で俺達を待っていた。


「どうじゃった?優よ。」


俺は頭を下げる。


「はい。思い知らされました。壁の向こうに俺が行けるのはいつだろうと気持ちが急いてしまいます。」


マーサさんとレイラさんは大きく目を開く。


「こりゃたまげたわい。1日でレベルを10まで上げただけはあるのう。」


俺は鼻を掻く。


「死にかけましたからね。まあそれも慣れていきますよ。」


レイラさんはフゥと息を吐く。


「化け物が出来上がりそうだな。・・ところでどのようなご用件でしょうか?」


マーサさんは思い出したように話し出した。


「そうじゃった。そうじゃった。とうとう来おったぞ。ゼストの尻尾共じゃ。」





「なんなんだ!この村は?」


兵士が叫ぶ。リザーク達は村人達から魔法一斉射撃を受けながら村の中の高台のやぐらの炎に目を向ける。

 



リンドバル領北西の村 リッカル


北の公爵領から攻めてきたのに気付いた北の見張りの先遣の村人が早馬で村に戻ると一斉に南北の門が閉められ手製のバリケード板を村の周りの柵にはめ込んだ。男女問わず鍬を剣に持ち替え腰に差す。


「急げ急げ。10km北にもう迫っているぞ。ゼストの兵は恐らく300程だろう。だがハウゼン大公の領を通ってきている。数はまだ増える可能性がある。」


子供達は慣れた手つきで弓を準備し始めた。1人の少年が高台に登り更に上にある櫓の藁に火矢を飛ばし火を付ける。すると遠く南に見える櫓にも火が灯り、その灯った火を確認すると更に南の櫓にも火が灯っていく。

そうしてリンドバル領各村々の住民が武装し始めるのだ。この方法を考えたのはマーサであり、高台には至る所に櫓が組まれて村人やはたまた兵士が常駐している。

何百年も前からゼストからの進攻は度々に起こっておりマーサはそれをことごとく防いでいた。

今の旦那がリンドバルに就任してからは進攻は無くなっていたのだが今回の巫女騒動で完全に領はまた分断されたと言えた。



リンドバル領 西の村 パル


「おい!マジか?櫓に火が灯ったぞー。急いで村に知らせろ。リッカルに向かうぞ。」


一人の男が叫ぶ。

リンドバル魔法学校に程近い村であるパルは住民の半分が魔法使いである。

知らせを受けた村長は急ぎ馬舎の馬を全て解放し準備させた馬車に馬を繋いでいく。

魔法を使える住人とそこに常駐する兵士は直ぐに装備を整え次々に馬車に乗り込んでいく。


「1番馬車出ろ!二番馬車の準備を急がせろ!」


指揮を執っていたのはその名もパル。年若い女性で10年前にハウゼン大公との子競り合いで両親を失い女手1つでこの村の村長を務めていた。村の名称はパルが産まれた時に改名されリンドバル侯に申請を済ませている。

パルは2番馬車を出すと3番馬車に、ローブを着こみロッドを片手に颯爽と乗り込んだ。1つの馬車に詰め込める人数は15人程、だがパルは馬の速度を考慮して人数より速さに重きを置いた。


御者含め12人を乗せた3台の馬車は時速15km程の速度でリッカルまで40kmの距離を走った。




リンドバル領 北の町 ポルト


この町はカルナック領の南に位置し侯爵たちがゼストの王城や風の塔から帰る道すがら必ず立ち寄る要所である。西には崖とその下に川が上流を思わせ、その川は北のカルナック領のウエストウッド、ハウゼン大公領へと流れている。

南には大きな山がそびえ、この大きな山を越えた先がリンドバル魔法学校となるのだが距離にして迂回路60km程の山越えになる為、魔法学校に行く者の休憩地になっていた。

だが今日は朝から宿屋以外の店が締められ魔導士や兵達が慌ただしく動いていた。

ここには冒険者ギルドという町の雑用や溢れた魔獣を狩ったりなどを金銭で請け負う冒険者という職業が存在している。

その冒険者ギルドがゼスト兵1人に対し金貨2枚の討伐報酬を緊急で打ち立てたのだ。

この町の冒険者ギルドは領の税金で賄っており、各国に支店を配置している。


本店はヴァレンシア帝国にあり魔法王国ゼストは変わり者のゼストのひ孫、東のエレナ大公が鎖国した今でもヴァレンシア帝国にギルド費用を支払っていた。


ポルトの町の冒険者達は殆どが地元民か、各領からの難民で構成されており戦士やシーフ、魔術師がその職業である。冒険者達は久しぶりの稼ぎ場に嬉々と我先に馬をリッカルに向け走らせた。


「冒険者達に遅れをとるなよ。俺達も稼ぎ時だ。出るぞ。」


兵長が叫び、兵達にも臨時収入の約束をし、準備の整った兵から馬車に乗り込ませていく。


リッカルまでの距離はおおよそ西に30km、山の篝火が灯ってから15分程度の出来事だった。





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