77.大壁砦
「そうか。青で気付いたじゃろう。黒もピンからキリじゃ。なんせレベル15から24までは黒じゃからの。明日の朝にレイラにわしから話しておこう。しっかり見てこい。それじゃ今日は遅くに悪かったの。
ゆるりと休むがよいぞ。」
と、マーサさんはいうと立ち上がり先に扉の外に出ていった。
「優、1日でどれくらい強くなったんだね?」
侯爵が立ち上がって外に出ようとする俺に話しかける。
「今、レベルで10ですかね。では、また明日。おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
俺は侯爵の自室から頭を下げ退出した。
「一日で10まで上げてしまうか・・・。」
侯爵は少し笑い席を立った。
常々侯爵はマーサより兵のレベリングを言われていた。それでも侯爵は他のゼストで爵位を持っている者たちよりレベリングに勤しんでいた方だと言えた。
リンドバル侯爵領は死の森以外には、東に迷わずの森という川に隣接した小さな森を持っている。そこに出現する小鬼やサーペント、ホーンラビットなどの魔獣を定期的に狩るよう兵に伝えていたのだ。
それにマーサや他の魔法教職に着く人物たちの協力で魔法学校に税を使い徴兵される可能性のある水以外の魔法を、他領より多くの兵や町人たちに合格させていた。
なのでこの領は各地の村民も含め魔法によるそこそこの自衛手段を持っている。だがマーサはそれ以上にレベリングと領の強化を訴えていた。マーサはレベルアップによる防衛手段が一番優れていることを知っているのだ。
それが普通なのだがこの世界で、この考えれば分かるような事の理解に近づく者は少なかった。
・・この領のレベリングの効果は数日先に発揮されることになる。
俺はアルコールの助けもあり泥のように眠ることができスッキリした朝を迎えた。
服がまだ乾かないのもあって侯爵に借り受けた服で屋敷から表に出た。
「待ってたわ。じゃあいきましょう。」
レイラさんは先にサッサと歩き出す。いつものズボンにシャツ、ブーツという少しラフな格好だ。
俺は靴ひもを結びなおしレイラさんに追いつくべく駆け足で追いかけた。
街を抜け東に魔法学校の看板の方に向かう。外では生徒達があつらえたローブを纏い魔法を的に向かい放っている。エリアドルさんが使っていた風の魔法や、ゼブラという男が使っていた火の魔法だ。
「アイツらは卒業生よ。生徒の期間は1年間、色々な勉強をさせてから魔法を習得させる。と、いうのもマーサ様の授業が週に1回あるだけなのよ。」
レイラさんが魔法学校の話を交えながら校舎の横を通り過ぎる。そこから南に進むと高さ20m程の砦と城壁が見えてくる。校舎で隠れて遠くからだと視認できないくらいのサイズだが・・そうではなかった。
街も学校もかなりの高台にあるのだ。そこから南に少し進んだ先に見晴らしのいい高台に辿り着いた。
「あれが、大壁砦よ。300年ほど前に30年掛かって作ったそうよ。」
俺はそのとんでもない建造物に言葉を失っていた。崖下に100m級の城壁が見渡す限り東西に広がって、俺の立っている高台から馬車が離合出来るくらいの橋が繋がっている。その高台から橋を渡っても
20mの壁が目の前にある形だ。大きなダムを見ている感じだ。レイラさんは橋の手前で警備している兵士に話しかけ橋を渡る。俺もそれに付いて行く。
「この壁は?」
レイラさんは1つ頷いて話し出す。
「この大壁は国境よ。壁の向こうはサウスリッド王国・・・の跡地よ。」
それだけ言うとレイラさんは橋を進みだす。200m程の距離のレンガつくりの大橋。高さは80m程だろう。これを作るだけでも相当な労力だったに違いない。
「レイラ大隊長、お疲れ様です。今日はどのようなご用件でしょうか?」
橋を渡り聞いて砦の門の前で兵士に声を掛けられる。
「エイダンはいる?」
「はい。エイダン大隊長なら中に。」
「入ってもいいかしら?マーサ様からの用事よ。」
兵士は直ぐに門の中に合図を送り門を開けさせた。
「どうぞ。お入り下さい。レイラ大隊長。」
レイラさんは兵士に笑いかけると中に入っていく。門から中に入ると左右に道が分れていた。
「こっちよ。」
俺はキョロキョロしながらレイラさんの後に付いていく。外の兵達と違って中はローブを着こんだ魔法兵が歩いている。門から左へ進み、ひたすら真っすぐ行った先、通路の途中、横に丸い螺旋階段が見え上階へと登っていく。
狭く暗い螺旋階段を登って行くとまた通路があるが、それを通り越して只々ひたすら螺旋階段を登っていく。すると漸くといった頃合いに光が階段に差し込んだ。
「着いたわ。ここが大壁砦の最上階よ。」
東西に遥か彼方まで続くレンガの道路、馬車が1台通れる程度の幅で1.5m程の落下防止の壁が道路の両脇に続いている。




