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転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
2章 2部
70/82

70.リノ



侯爵の屋敷とその裏の山は少し高台にあり草原の間に作られた道路を下っていくと街が見える。更に街側に下り侯爵の屋敷を少し遠くから眺めると屋上に大きな鐘が見えた。

俺はまた街の方を振り向き歩き出す。

「こんにちは。」と老婆が話しかけてくる。俺もその挨拶を真剣な顔で返すと少し怪訝な顔をされ、「若い子は笑顔でいなさい。」と諭された。

俺は若さと笑顔は関係ないだろうと思ったが、自分の口元に指を這わせ口角を上げてみた。・・・苦手だ。


街は1m程の木の柵に囲まれていて領主宅からまっすぐ大通りで遠くに入口が見える。大通りはレンガが敷き詰められ、大通りの左右に商店が立ち並び、その大通りの途中から十字路に東に道が伸び魔法学園と大きく看板が柱の上、大通り左右に矢印で示されている。俺はまず武器を見に左手二軒目の比較的大きな建物に入った。


「いらっしゃい。」


と笑顔で対応する大男。店の中は右側に剣、左に槍とまず需要が多そうな商品が並んでいた。樽の中に金貨1枚と書かれた鉄製の剣や逆にガラスの中には白金貨5枚と書かれた商品まであった。

俺はその大男に金貨を5枚見せる。


「おお。兄ちゃん。その金貨5枚で何が欲しいんだい?」


俺は店内を見回しながら答える。


「素手で戦えそうな武器で頼みたい。」


そう言うと店員は奥に案内してくれた。友紀が城から盗んだガントレットも防御性能と攻撃力と両方備わっているが、基本素手武器ではないだろう。それに凄まじくリュックに嵩張るし、装着していると違和感を感じるのだ。

それなら、と、友紀には申し訳なく思うが、俺はガントレットよりも通常の素手の武器と籠手を装着する方を選びたかった。


「銀製のナックルなんかはどうだ?」


店員が指を指した方に俺は顔を向ける。鉄と銀製のナックルが飾られていた。ようはメリケンサックだ。持ってみると攻撃力は4で同じだった。

先程のレイラさんの話だとアンデットには銀製が特効なのだろう。俺は銀のナックルを掴み、表記されている値段を見る。金貨2枚と銀貨6枚。これを買うと残りが金貨2枚と銀貨4枚になる。

ちなみに鉄のナックルだと金貨1枚と銀貨8枚だ。この世界の通貨を知らないのもあるが、値段に悩んだのは初めてだった。俺は少し親に感謝の気持ちを持ちつつ、銀製のナックルを選択した。

籠手は革製の籠手を選ぼうと思ったのだが、ガントレットが金貨1枚で売れた為、鉄製の籠手を購入した。

話を聞くに武器や防具はここの店一軒のようだ。俺は武器屋を出て街を少し散策した。道具屋と薬屋、あとは八百屋、肉屋などが大通りに面していて賑わいを見せている。


俺は大通りの十字路に差し掛かると左右を眺めた。左の通路を進むと住宅街だろう。右が・・!突然身体に誰かがぶつかった。


「何ぼーっと突っ立ってんのよ?邪魔になるじゃろうが!」


年寄ではなく女の子だった。髪は白く腰まで長い。色は浅黒く耳が尖っている。その子供が腰に手を当て俺を睨みつけていた。


「ああ。・・済まない。」


俺は咄嗟に謝る。エルフ?という種なのか?


「何をじろじろ見ておるのじゃ。・・ふん。もうよいわ。」


その女の子はツカツカと大通りの方に歩いて行った。台風のような子供だな。俺は少し笑い十字路の隅に立つ。こっちが学園か。

少し離れた場所に存在するこのレンガの建物達は朝に高台から見た景色そのものだった。夕方になり日が斜めに赤いレンガを更に赤く染めていく。俺はそれをしばらく眺め、踵を返し侯爵の家へと戻った。


街の商店たちも夕方になると少し様相を変え、酒屋が並びに椅子やテーブルを置き始め外に店の灯りが灯っていく。それ以外の食べ物屋も軒に食事スペースを作る。

俺は見回しながら真っすぐ侯爵邸を目指す。すると侯爵邸に続く坂をゾロゾロと兵達がこちらに向かって降りてきた。俺は隅に寄って兵達に道をあける。

兵達は思い思いに酒屋や食べ物屋の軒先に並ぶテーブルに付いていく。エプロンを付けた女性達が注文を直ぐに取り始める。そうやってこの街の夜が始まっていった。

日も落ち始め俺は駆け足で侯爵邸に走り邸宅の前に付いた。邸宅を囲むように後ろを大きい山がそびえている。死の森を見てしまった俺の目にはその山すら禍々しく写った。


俺は扉の前に立ち扉を軽めにノックする。

扉は直ぐに開きメイド服を着た金色の髪の女性に迎えられた。


「優様ですね。私は侯爵にお仕えしていますリノと申します。今日から私が優様を担当いたします。」


優雅に頭を下げるリノさん。


「よろしく・・お願いします。」


俺も頭を下げた。


「ではお部屋にご案内致します。」


俺はリノさんに案内されるがまま付いていく。2階の奥の部屋だった。ランタンを1つ渡され机の横に掛けるように指示を貰う。


「お食事はまたお呼び致します。お体を拭く湯は直ぐにご準備致します。」


それだけ話すとリノさんは俺の顔を見たが、俺が黙って頭を下げると興味なさげに部屋から離れていった。

俺は机の隅の壁にランタンを掛けベッドに座った。部屋は客間ではなく質素なつくりの小さな部屋だった。俺はホッと息を吐く。この部屋はしっくり馴染む。

リュックを下ろし1袋の干し肉と缶詰が幾つか、それとカンパンを2缶、ペットボトル2Lの水を2本取り出し部屋の隅に置く。さとしと友紀みたいに食べ物を大量には持ってきていない。

異世界の食料の効果を知っていればもっと持ってきていたんだろうがそれはもうどうしようもない事だ。だが他の兵達と比べると充分に恵まれていると言えた。ドアからノックの音がする。俺はリノさんだとドアを直ぐに開いた。

お湯が入った大きな桶を抱えるリノさんが立っていた。


「お湯を持って参りました。」


「ああ・・すみません。ここに置いて貰えますか?」


と俺は入口に置くように促す。重い物を女性にいつまでも持たせるのは。と思ったからだ。俺が取りに行けばよかったのだ。


「いえ。お気になさらず。」


と、リノさんは中に入って部屋の中に桶をゆっくり置いた。俺を見て少し笑い話し出す。


「気を使わなくても結構ですよ。それでは後でまた伺います。」


それだけ言うと直ぐにドアを閉め出ていった。俺は身体を拭き大きな桶を返そうとドアを開け桶を持ち上げた。少し重さを感じるがあちらの世界にいる程の重量を感じない。

俺は部屋を出て真っすぐ2階の階段に向かう。2階の少し広い大階段から左右に分れていて俺は登って左側通路の先だった。右は長く通路が続いているが暗くて奥は見えない。

俺は階段から右奥の通路を一瞥したが直ぐに階段を降りて1階に到着した。桶を抱えキョロキョロとしていると、1階の階段の裏手からリノさんが現れた。


「取りに伺うと言いましたのに。」


とリノさんが少しだけまた笑った。


「・・いや・・だが・・」


と俺が口ごもるとリノさんが指を指した。


「では外に出て左奥の藪にそのお湯を棄ててきて貰えますか?」


と、リノさんが笑顔で話す。


「ああ。了解した。」



私の駄文が少しマシな駄文になってきたと愚考しましたので1話からすこしずつ話をきれいにしていこうと思います。誤字等多いと思いますが、読んで下さっている方はいつもありがとうございます。

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