表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
2章 2部
69/82

69.レイラとカレン


俺が立っている洞窟の出口から約300mは森まで離れているだろうか。


洞窟の方を見ると高さ100m程の崖壁となっている。それを国境まで人力で山を削っているのだ。城壁のレベルではない。山を登ってこないようにそうしているのだろうが凄まじい労力だ。

更には森から鋼鉄製の柵が何重にも組まれ柵の間に兵が長槍を持ち配置されている。俺の目の前にはやぐらが多数組まれ上には弓兵が陣取っていた。その弓兵達の横には昼間から松明が轟轟と燃えている。

アンデットが現れた時に火矢にして射るのだろう。


「優、君に言うべきではないのだろうけど我々はここに殆どの兵を交代で配備しているわ。今までこんなことなかったのだけれど、アンデットが来ても数体、それも年に何回かだったのよ。

それが今は皮肉なもので兵達もレベルを上げてくれている状況なの。ゼストとの揉め事は避けたかったわ。・・今はね。」


そうだよな。その通りだ。これは愚痴ではなく兵達の事を考えている指揮官なら当然の言い分だ。


「すみません。俺に出来る事は何でも言って・・下さい。」


レイラさんはフゥと息を吐いた。


「悪かったわ。愚痴だったわね。侯爵から聞いたわ。ここから更に南にある大陸に友人を探しに行きたいそうね。私はその大陸のことすら知らなかったわ。この侯爵領の南、大壁砦。その上から南の景色を眺めて見るといいわ。

この死の森がちゃちな草原に見えてくるわよ。ここはまだ北って事よ。」


レイラさんは小さく笑い踵を返した。


「行くわよ。貴方もここの前線に配備するわ。覚悟しなさい。」


レイラさんは今来た道を歩き出す。


「はい。」


俺は拳を握りしめた。嬉しかったのだ。



俺とレイラさんは山を削り取った壁から洞窟内部に戻る。


「優。そこにいたのね。レイラさんお疲れ様です。」


俺は洞窟内の暗がりで街の領主の家の裏から歩いてきた女性に声を掛けられた。


「ああ。カレンか。帰ってきていたのね。優を預かっているわ。」


レイラさんが直ぐに返事を返す。


「はい。よろしくお願いします。」


カレンさんがレイラさんに頭を下げたので、俺も思わずレイラさんに頭を下げる。カレンさんは話を続ける。


「レイラさん。瘴気が濃くなってきてると聞きました。」


レイラさんは腕を組んで頷いた。


「ああ。カレンも見れば解る。一陣は防いだわ。その時は少し瘴気が晴れたのだけどね。恐らく奥に大物がいる筈よ。もう暫くするとまた押し寄せてくるわ。貴方もリカルドも戦力に数えていいのよね?」


カレンさんは頷く。


「勿論です。では私は前線に向かいます。」


レイラさんはカレンさんに頷くと街の方に向かって歩き出した。俺もカレンさんに頭を下げて、レイラさんに付いていく。

洞窟を抜けて街の中に戻ると平和そのものという雰囲気を醸し子供達の喧騒すらも聞こえて来るようだ。

俺は振り返り洞窟を眺める。


「優、ここはいい街よ。だけれど、目の前の洞窟からこちらにアンデット共が押し寄せれば・・解るわね?」


俺は小さく頷き洞窟を睨みつけた。


「不安にしてごめんなさい。まあアンタが気負う必要はないわ。それにさっきも言ったけどここはまだ北なの。マーサ様が出張る必要もない程度よ。安心して。」


俺はフゥと息を吐く。強い敵は気持ち的に大歓迎だ。だが俺は今レベル1。一体も倒せないのであればレベルを上げるどころではない。


「で、俺はこれからどうすればいい・・ですか?」


レイラさんは頷き俺に金貨を5枚持たせた。


「・・・これは?」


「金貨よ。侯爵から餞別ですって。働きの前払いだと思うことね。ここの領主はゼストに重税を支払っている割には領民からの税金が安いの。兵士達はね、皆自分の給金で武器や防具を揃えているわ。

領主に負担させないために自らね。今から武具屋を自分で回って装備を整えて明日の朝にはここにくるように。宿泊は目の前の侯爵の屋敷でいいという事よ。じゃあ解散。」


俺は「はい。」と頭を下げた。この金貨が一体幾らなのかも解らない。レイラさんは侯爵の屋敷からまた洞窟の方に向かいスタスタと歩いて行った。俺はその金貨を握りしめレイラさんに頭を下げ街の方に向かった。



死の森前線でレイラとカレンが簡易的な天幕で話をしている。


「カレン、優とはどんな奴なの?なんかね、死に急いでる雰囲気を持つ子のような気がしてね。」


カレンはそれに小さく頷き、水袋の水筒から一口水を含んで飲み込んだ。


「そうですね、確かに不思議な人ですね。誰かを守ることに必死というか・・。まあ、あちらの方々は皆そうなのかもしれませんね。」


カレンはクスリと笑い、レイラは首を傾げる。カレンは懐から小さな円筒状の物を取り出し光を灯した。するとレイラは大きく目を開く。


「これは優から頂いた光源です。凄いですよね。」


「ああ。これは凄い光だ。あちらの世界のやつなんだろうな?これなら死の森の奥を照らせるかもしれんな。」


カレンはこんどは自慢げに冗談っぽく笑いレイラに話す。


「これは差し上げませんよ。」


レイラも少し口角を上げカレンに返す。」


「じゃあカレンは最前線に配備だな。勿論、優もな。」


カレンはしまったと思い笑顔を少し引き攣らせた。レイラは大きく笑った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ