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転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
2章 2部
68/82

68.リンドバル侯爵領

 

馬車からもう遥か先ある風の塔。俺達一行はリンドバル侯爵領に付き、小さな村で一晩泊り今はリンドバル魔法学校を目指していた。


「優、俺達に付いてきて本当に良かったのか?」


リカルドの心配そうな声が馬車の後ろに座っている俺に届く。


「ああ。大丈夫ですよ。友紀達の方が安全だと思います。」


カレンさんがクスリと笑う。


「そういう事じゃないと思うのよね。・・まあでもこれからよろしくね。」


俺はカレンさんに頷いた。


「ああ。・・いや。はい。」


皆で一頻り笑う。リンドバル侯爵が運動とばかりに御者を務めていたが指を指し俺を呼んだ。


「あれがリンドバル侯爵領の魔法学校だ。」


峠道をひたすら走り、漸くかと俺は馬車から顔を出した。

まだ山の上だが崖下に広がるレンガ作りの建物たち、その光に照らされた街並みを俺は山の上から見下ろしていた。絶景とはこの事だと思った。

俺がまだ感動している横でリンドバル侯爵が話しかける。


「感動しているところに悪いが出発するよ?」


俺はハッと我に返りリンドバル侯爵に頭を下げる。


「ああ。すみません。」


リンドバル侯爵は笑う。


「そんな畏まらずともよい。じゃあ行こうか。」


馬車は左に街並みを移しながらゆっくりと下って行った。



俺達は門の中に入ると直ぐにリカルドとカレンさんが飛び降りた。


「状況を聞いてくる。優は暫く乗っていてくれ。戦いになったら直ぐに呼ぶからな?」


リカルドは冗談っぽく笑顔で話すと直ぐに走り出した。俺は頷きリカルドに答えた。


「はい。」


馬車はリンドバル侯爵の屋敷に到着する。大きい屋敷だが思っていた程の大きさではなかった。


「さあ、優君、付いたぞ。ようこそ。と、言いたいところだが私も情報の確認をしなければならない。」


そういうとリンドバル侯爵は中に入っていった。することがなくなった俺はとりあえず馬車の荷下ろしをし始めた。

すると屋敷から勢いよくドアが開かれ一人の女性があらわれた。綺麗なブロンドの髪に俺と同じくらいの身長、モデルのような体系には全く似つかない大剣を背に背負っている。

服は革のズボンに白いシャツを一枚だけ着用している。


「侯爵から聞いたんだけど、アンタが巫女様御一行の一人だって?アンデット討伐だけど大丈夫?特別扱いはしないわよ。いい?」


「はい。大丈夫です。」


俺は自然と頭が下る。


「じゃあ荷物はいいからこっちにきて。私はレイラ。アンタは?」


「ああ・・はい。優です。」


本当に俺なのかと、自分の敬語に笑ってしまう。


「あの、レイラさん・・何処に・・」


「いいからアンタは黙って付いてくればいいの。」


侯爵の屋敷からぐるりと回り込み裏手に回ると広く、庭にしては雑多でその先に人為的に削られた大きな山がそびえその山の削られた中心に小さな穴が空いている。


「この山の洞窟の先が最終防衛地点になるわ。」


俺は削り取った山の広さに呆然とする。


「聞いてるのか?優。」


「はい。」


洞窟の前には兵士が2名立っている。


「隊長。今のところ異常なしです。」


レイラさんは兵士を一瞥しスタスタと歩き出した。俺は兵達に頭を下げた。兵達は俺に少しだけ苦笑いを見せ、レイラさんがこちらを向くと直ぐに真剣な顔に戻した。


「優。こっちよ。ちゃんと付いてきなさい。」


俺も洞窟の中に入る。人工的な洞窟は5m感覚位にランタンがぶら下がっていて少し明るくなっている。湿気が強く、何か腐った臭いが漂ってくる。俺は自然と目を細める。


「この臭いかしら?」


レイラさんが俺の表情を読み取る。


「はい。何の臭いなのか、何か腐ったような臭いがします。何なのですか?」


レイラさんは頷きその臭いについて答える。


「これはグールの臭いよ。戦うと解るけど、こいつらは直ぐに消滅しない。だけど銀と魔法には弱いようね。・・・私が持つこの大剣も銀製よ。まあ合金ではないけどね。」


レイラさんは背中の剣の柄に軽く振れる。


「合金とはなんですか?」


レイラさんは少し笑い答えてくれた。


「そうね。合金とはミスリルという金属よ。凄まじい瘴気を纏った魔獣の躯の中で生成されるらしいの。魔獣が死んで暫く経つと酸性の液体を出すそうよ。

そもそも酸を溶解させて銀が出来ると考えれば、辻褄は合うのでしょうね。狼やウサギ程度では腐って終わるわよね。」


レイラさんと会話をしているうちに洞窟の出口の光が見えだす。この洞窟はひたすら真っすぐ山をくり抜いただけの通路だった。

洞窟から出ると眩しさで目が眩んだが直ぐに回復し目の前の光景に圧倒される。遠くに大きく広がる漆黒の闇。と言えばいいのか膝まではあるだろう瘴気の闇。木々は1本1本が30mはあるだろう真っ黒な葉を付けしっかりと育っている。日本人が樹海というのも烏滸がましいくらいの闇そのものだった。



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