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転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
2章 2部
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71.マーサ


俺も笑顔で頷き桶を持って表に出た。庭先の藪の中にお湯を捨て軽くなった桶を持ち空を見上げた。日本では見えないであろう星空が輝いて月のような物が空に張り付いている。

耳をすますと、カンカンとどこからか金属を叩く音が響き、蟲の鳴く音が近くでそれを気持ちいい具合に消していく。俺はそれを暫く聞いていると中からリノさんが現れこちらを見て、リノさんも空を見上げた。


「中に入りますよ。」


リノさんに促され俺も中に入った。直ぐに食事の準備が終わるそうなので食堂で待つようにとの事だった。


「やあ。優くん。どうだい?この街は?いいところだろう。」


玄関前の広間から直ぐの階段からリンドバル侯爵が下りてくる。


「はい。心地いい・・空気です。」


リンドバル侯爵はその言葉を聞きフゥと笑い息を吐いた。

「空気・・か?不思議な事をいう。そうだな。この環境も空気も綱渡りみたいなものだがね・・・」


俺は死の森を思い出す。リンドバル侯爵は話を続けた。


「もう食事の時間だ。食堂に行こうか?」


「はい。ありがとうございます。」


フッとリンドバル侯爵が少し笑い俺の肩に手を置いた。


「君は雰囲気が少し変わったな。自然とそうなったのならいいが・・・。

まあ、今日はマーサが食事を作っておる。旨いぞ。」


リンドバル侯爵は食堂の方に歩き出した。


広い食堂に俺とリンドバル侯爵のみ、貴族が食事をするダイニングの様相は呈していない。

6人掛けほどのテーブルが4つ、奥に2人掛けが1つ。という食堂がしっくりくる作りだ。

だが調理場は隣接している訳ではなく広間を食堂に使っている。という方が正しいと言えた。

ガチャリと食堂の扉が開き2人の料理を運ぶ女性が現れた。一人はリノさんだ。


「なんじゃ?おぬしは・・・。先程通りでボーっとしとった奴ではないか?」


侯爵には子供がいたのか?いや・・種族が・・・。


「妻のマーサだ。魔法学校の校長をしておる。」


マジか・・中学生程にしか見えん。友紀やさとしは絶対に驚くぞ。俺も驚いたが・・とりあえず挨拶だ。


「・・・は・・初めまして、優です。」


マーサさんは怪訝な顔を見せる。


「さっき会うたじゃろう?わしがマーサじゃ。」


なんで喋り方が爺なのだ・・マーサさんは6人掛けのテーブルに自分の持ってきた料理を置いた。リノさんも俺達をちらりと見たがマーサさんにならって料理を6人掛けのテーブルに置く。


「4人おるのじゃぞ。お前らは何を偉そうに2人掛けに踏ん反りかえっておるんじゃ。」


俺は慌てて立ち上がる。リンドバル侯爵も頭を撫でながら立ち上がった。


料理は蒸した肉料理と野菜のスープ、そしてパンだった。

蒸した肉はさっぱりした味わいに塩加減が程よく香りの乗ったハーブも使っていた。スープも野菜の旨味と塩味が絶妙だった。

俺は腹が少し満たされたところで話し出す。


「ごちそうさまでした。ところで、死の森からアンデットが押し寄せるのはいつもではなく定期的・・なのですか?」


マーサさんが口をハンカチで拭い話し出す。


「そうじゃのう。お前は最近、その定期的が増えているのは聞いたか?」


「・・はい。レイラさんにある程度は。」


「・・そうか。答えは定期的であった。じゃな。確かに今でも時間は短くなってはいるが定期的に押し寄せてきてはおる。それがいつもとなりつつあるのじゃ。恐らくだが・・原因はお前らじゃ。」


俺は驚き口を震えさせた。マーサさんは続ける。


「・・いや。お前らかもしれん、という話じゃ。例えお前らじゃったからとしても責任などはない。

知っとるという奴は知っとるという話じゃ。わしももう300年以上生きておる。

前の巫女、美和様が来られた時もそうじゃったからの。あの時も死の森の瘴気が増して大変じゃったしのう。」


マーサさんが笑う。そういう事か。辻褄を合わせられるだけの年月生きているということか。


「どうやってそれを収めたのですか?・・・で、あれば各地の瘴気も濃くなっている?」


マーサさんは俺を見る。


「そうじゃろのう。」


リンドバル侯爵が顎に手を置き話し出す。


「今、この時にゼスト王が公爵達と攻めてくれば大変な事になる。」


マーサさんは首を振る。


「それは、まあ、ないじゃろう。」


俺が会話に入る。


「前にエリアドルさんとリンドバル侯爵の話で聞いた帝国のドーガですか?」


マーサさんが俺を見て口角を上げる。


「優よ。お前は聡い子じゃのう。その通りじゃ。ゼストと同じくドーガも不老不死みたいな生き物じゃ。巫女の転移に気付くじゃろうのう。」


リンドバル侯爵がテーブルを叩く。


「4賢者様と4国の同意ではなかったのか?」



エリアドルさんはそれらしい話をしていたが本当に同意の元であればこのゼストに召喚させるのは考えにくい。ゼスト王に対するはったり・・だとしてもゼストも気付くだろう。牽制と考えるべきか・・?


「同意じゃと?それはゼストが言ったのか?・・ドルじゃろ?まあ落ち着け旦那様よ。弟がゼストに対して言ったのじゃろう。」


俺もその会話に入らせて貰う。


「ですが、ゼストの独断ですよね?同意などという言葉がそもそもエリアドルさんの口から出るのが不思議で。」


俺もエリアドルさんの真意を確かめたく聞いてみる。まあまあと、マーサさんは手で俺を止める。


「不思議じゃと思うよ。わしも。じゃがの、風の賢者エリアドルという男がそれをしてしまう力があるとすればどうじゃ?それに、あちらにははったりで済ませて置けばよいのじゃ。他の国も知っていると思わせるだけでな。

ゼストも公爵連中も攻めてはこまい。そのうちドーガが気付くはずじゃからの。今頃、戦々恐々としておるじゃろうのう。

そうそう、いつか王城から雑魚は大量にくるかもしれんの。あやつも馬鹿じゃあるまい。まあ自分の首を締めとる時点で馬鹿なのじゃが・・。公爵領を通って雑魚どもが南下してくる可能性がある。とだけ言っておこうかの。」


マーサさんは面倒くさそうに息を吐いて話を戻した。


「・・まあ、かなり話が逸れたの。死の森を収めるのは、このリンドバル領に一番近い首領を討つ事じゃ。まあアンデットじゃ。レイスもおるかもしれんのう。」


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