65.サブイベントの終結
ホークは薄い傷を一瞥して構える。リンダも腰を据え両手に炎を纏わせる。
先に踏み込んだのはまたもリンダとホークだった。リンダは炎の纏った両腕で連打を繰り出す。それを全て剣で弾くがホークの剣までは受けきれない。
リンダの拳を食らうと魔法ダメージが入ってしまうのだ。ガルバルはホークの攻撃の方が幾分かマシだと判断した。
残念だが俺は接戦をしている相手にキュアを飛ばせないでいた。ガルバルを回復させてしまう恐れがあるからだ。ゲームのようなカーソルはないのだ。最悪の場合近づいて掛けようとは思っている。
ガルバルは少しづつだが傷を負って息を荒くしている。レベル差はガルバルとリンダに関しては殆どない。差といえばスキルによる攻撃力の差と剣技をまだ1度しか使っていないというアドバンテージだけだ。
それでも敏捷は若干だがガルバルが高い。だがリンダの攻撃に防戦一方になってる。それはホークの援護と、その援護に自分が少しづつ傷ついている事に他ならなかった。
それともう一つはリンダの攻撃を腕で受ける訳には行かなかったのだ。戦況が進んだのはその直ぐ後だった。ガルバルはとうとうホークの剣にイラつき対応してしまったのだ。
ガルバルはリンダの燃える拳を弾いた直ぐ後にホークの剣を足で蹴り上げ更に後ろ回し蹴りをホークに叩きこんだ。ホークは壁まで吹っ飛ばされる。そのほんのコンマ何秒で命運を分けた。
直ぐに剣をリンダの拳に合わせるのに間に合わなかったのだ。とうとう左腕でリンダの拳を受けて鋼の籠手ごと腕が真っ赤に焼け爛れた。
俺はホークにキュアの魔法を掛けようと手を向けたが、ホークはこの好機を逃すまいと鋼の剣を拾い上げガルバルに向かって走り出した。ホークは剣をガルバルの焼けた左の籠手を狙い叩きつける。
ガルバルもその腕で防がなければリンダの拳を右手の剣で受けられない。ホークを避けるとリンダに隙を与えてしまう。一瞬で苦渋の選択を強いられるが結局ホークの剣を左手の籠手で受ける決断をした。
焼けて赤くなった鋼の籠手は防御力を殆ど失い、剣で叩きつけられ籠手が拉げ、焼け爛れた腕を破壊した。痛みに顔を歪めるガルバル。出血も多く、とうとう出血ダメージで少しづつHPが削られだす。
リンダも好機と残り少ないMPを炎の纏う拳に注ぎ拳を振り上げる。だがガルバルも諦めてはいなかった。剣を振り下ろす瞬間に剣閃一斬で剣を振るスピードを瞬発的に上げたのだ。
肩から胸を斬られるリンダ。
だが、一撃で死ぬことはなく炎を纏った拳は既にガルバルの顔面を捉えた後だった。リンダの拳がガルバルの顔面に突き刺さる。だがガルバルも衝撃を緩和すべく顔を半分燃やしながら上体を逸らせ後ろに避けた。そこにホークの一撃がガルバルの左腕に2撃目として突き刺さった。とうとうガルバルの左腕が千切れ飛んだ。もうリンダのMPは切れ、HPも剣閃一斬をまともに受け、半分になっていた。
黒い魔獣革の鎧の防御性能に救われた形だが、リンダの出血もダメージを追加している。俺は流石にもう無理だと悟り2人をガルバルから引きはがし2人にキュアの魔法を掛けた。
ガルバルは天井を眺めて意識を朦朧とさせていた。
「・・俺は負けたんだな。・・・あの・・クソガキだったホークも強くなったもんだ。」
それだけ言うとガルバルは膝をついて剣を落とした。膝を付いたままの姿でガルバルは息を引き取った。
ホークは立ち上がってそのガルバルの亡骸に頭を下げた。
「終わったわね。」
そう言うとリンダの目から涙が落ちた。しゃがみ込み暫くリンダは泣いていた。この言葉はリンダたちにとって、途轍もなく重い言葉だった。
俺とホークは笑い合うと拳と拳をぶつけあった。
数日間は亡くなった兵士達や敵であった護衛兵達の葬儀と墓の準備などを旧西下層の教会の周辺で行った。勿論ホークが駆り立てたチャフの部下たちもである。
教会の横には大きな慰霊碑が建てられるそうだ。俺はというとホークと2人で狩りに出ていた。ホークは俺のいう盾に興味を示し、俺はリンダの着用している黒い装備に魅せられていた。
街は復興の只中にあり復興支援の俺の役割は前の戦いで終わったと言えた。そういう訳での狩りなのだ。肉も狩るので文句も出ないだろうとホークの助言もあった。
「はっきり言うが俺は文句を言われる筋合いはないぞ。」
と俺がはっきりとホークに釘を刺す。
「いや。俺の言い訳だ。まあ気にするな。」
と、ホークに肩を叩かれた。まあ・・なら仕方ないかと俺もそう思うことにした。
俺達は黒い魔獣を求め少し北に向かう事とした。青い狼が少しづつ増えてきているが、俺達は比較的楽に狩りをしていく。俺達は少し欲を出し更に北に歩を進めた。
「この辺りまでだな。少し遠いが目の前に高い砂丘が見えるだろう。それを越えればパルディアの領内だ。まあ兵士がうろついている訳ではないがな。」
俺は高い砂丘を遠くに見る。南の亀の時と同じくらいの砂丘だ。
「パルディアってところはやっぱり壁に魔獣やモンスターは近づかないのか?」
ホークは眩しい日差しを掌を使ってバイザー替わりとし俺をちらりと見る。
「そうだが、珍しいのか?俺は他のところは知らないからな。」
ホークがそう言うと、俺もそうだ。と思い、考えを仕舞った。ホークは話を続ける。
「さとしみたいな旅人も殆どいないだろう。大勢の護衛兵を連れて貿易などに出かけるのが普通だろう。それでも半分近くの護衛兵を失うがな。」
「だったら護衛兵の連中ももっと強くてもいいんじゃないか?」
ホークは首を振る。
「いや。貿易なども年に1度程度だ。それに貿易に狩りだされるのは使い捨ての奴隷上がりなんかだよ。俺も元は奴隷だしな。」
ホークがとんでもないことを暴露するが俺はそれを聞き流した。
「・・そうか。あそこに黒い蛇がいるぞ。狩ってみるか?」
ホークは頷いた。
「ああ。行こうか。」
俺達はひたすらに黒い魔獣を探しては狩りを続けた。




