64.ガルバル
俺は宮殿に入り急いで2階に繋がる大階段を登っていく。下には4人、階段には燃えた人間が2人倒れている。1人は顔だけが真っ黒い骨だけとなってプスプスと熱を持っている。
宮殿入口に到着している兵士に俺は上の階から頷いた。合計29人の死体を確認したという合図だ。兵士は頷き走って宮殿を出て行った。これはガルバルを覗く護衛兵小隊全滅の確認だった。
2階の大きな扉は開け放たれ中の大広間でホークとリンダが椅子に腰掛けている誰かと話していた。
「間に合ったか?」
ホークとリンダは俺を見ると少しホッとしたような表情をした。それもそのはずで、恐らく目の前の城主の椅子に座っていたのがガルバルという男で間違いないだろう。
俺でも分かる。今までに感じた事のない威圧感だ。
「新しいお友達か?」
ガルバルは立ち上がり俺達を睨みつけた。
「随分と余裕ね?ガルバル。」
ガルバルは首を振る。下からは俺たちに聞こえるように歓声が街全体に響きわたっている。
「いや、正直余裕はないな。お前ら2人ならと思ったが、そうか、確かにバーダをお前ら2人で倒したのは驚いたが、ギルは大勢で囲んで殺したのか?・・まあいい。俺も多勢にはちと分が悪い。
3人のうちに殺しとくか。だがこの街もお仕舞だ。北から援軍を連れて押し寄せてやる。俺を怒らせた事を後悔しながら死ね!」
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ガルバル レベル16
剣士
HP 49/49
MP 29/29
攻撃力 17 +25
防御力 17 +21
敏捷性 16
魔法力 31
魔法防御 12
装備
鋼の剣 攻撃力に+10
鋼の鎧 防御力に+11
鋼の籠手 防御力に+ 5
鋼の脛当て 防御力に+ 5
スキル
剣術 レベル5 剣使用時 攻撃力+15
剣技 剣閃一斬 (MPを10消費し敏捷を1.5倍に高める一刀)
格闘 レベル3
魔法
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確かに強い。が、魔族で良かった。だが、魔法を使えたら俺もやばいだろう。
「どうする?2人でやるか?」
俺が提案する。
「そうだな。その予定だが危なくなったら手伝ってくれるか?」
ホークが俺に聞き返した。
「ああ。・・ホーク、あいつは鋼の武具を装備している。だけど腕や足はダメージが入る筈だ。それとあいつは必殺技みたいなのを使う。」
「剣閃一斬だな?昔は全く剣閃が見えなかったが・・・。」
「ああ、それだ。今は少し見える程度だろう。俺でもあいつのは避けられるかわからない。頭だけはしっかり守れよ。その技を使える回数は2発だ。」
リンダもその話を聞いて苦笑いを浮かべた。
「やるしかないわね。さとし、骨は拾ってよね。」
「俺のもな。」
ホークも苦笑いを浮かべ真剣な顔に戻りガルバルと対峙する。
この世界は基礎防御力というのがある。ホークのHPは37で基礎防御力が13だ。ガルバルの攻撃力の合計が42。頭を剣で切られても真っ二つ、にはならないのだ。
HPが8残るからだ。リンダに関してはそこまで心配はしていない。頭に攻撃を受けない限りは1撃では重症にもならないだろう。
「じゃあいくぞ。」
ガルバルが会話を待ってくれていたのか、リンダとホークが臨戦態勢に入ったと同時に踏み込んだ。
まずは小手調べとガルバルは剣を上で回し素早くホークに踏み込み斜め上からの閃でホークを斬りつける。ホークはそのガルバルの剣を自分の剣で弾く。剣術スキルで底上げした攻撃力は腕力では無いため
ホークは少し表情を歪めるだけで剣を受けきった。だがガルバルの敏捷は早く、弾かれた剣を斜め下から上へと斬り上げる。ホークも素早く避けたつもりだが頬を下から縦に切り裂かれ血を流す。
ガルバルが上へと剣を上げた瞬間にリンダはガルバルの腹部に剣を滑り込ます。ガルバルはそれをちらりと見て回避しようとするが、それもリンダのブラフで左手にはしっかりと炎を纏っていた。
ガルバルは舌打ちをして敢えて剣を腹部に受け傷を付けたが、左手から迸った炎の弾丸は辛うじて避けることに成功した。ホークも頬の血を左手の平でふき取りその血液をガルバルに飛ばす。
炎の弾丸を避け安堵したが突然の飛んできた血液に一瞬目を閉じるガルバル。その足を素早く鋼の剣で斬り、ガルバルに頬のお返し程度のダメージをガルバルの足に与える。そこで溜まらずガルバルは少し距離を取る。
と、直ぐに上段に剣を構え「剣閃一斬」と呟きホークに向かって剣を下した。それにいち早く対応できたのはリンダだった。剣を上げて言葉を発する瞬間を見逃さなかった。
リンダはホークの首根を掴みホークを後ろに放り投げたのだ。ホークの前を剣閃が縦に通り過ぎる。ホークは間一髪避ける事に成功する。
それを見ていた俺も息を吐いた。ホークは見えなかったわけではなかった。ホークも剣を頭の上で横に一瞬で構えようとしていたのだ。ダメージは受けただろうが頭を守る事は出来ていたことになる。
「よくわかったな。メリンダさんよ。」
リンダは腕を深く斬られていた。
「そうね。運がよかったわ。」
ガルバルが鼻で笑った。
「その腕でか?メリンダ、お前は最後にしっかり楽しんでから殺してやるよ。」
リンダが薄く笑い、目だけ俺に向けてガルバルに言い返す。
「それは無理よ。私を最後にすると考えた時点でもうあなたに未来はないのよ。」
ホークも立ち上がりリンダを見る。
「そうだな。それは言えてる。」
ホークも薄く笑った。ガルバルは目を細めた。
「キュア」俺は2人に回復魔法を掛ける。
リンダの腕の傷がブクブクと泡立ち完全に消えてしまう。ホークの頬の傷も無くなっていた。
「もう、なんか俺に託す感じになってるんじゃないか?」
俺も笑ってしっかり援護する。
「あら、そうね。さとしは回復魔法も使えるのを忘れてたわ。」
「だったな。じゃあ仕切りなおすか?リンダ。」
「そうね。ボスが援護してくれるし、もう疲れたと思ったけど、やるしかないわね。」
「だな。」
ホークも相槌を打つ。ガルバルが怪訝な目で俺を睨んだ。
「水魔法じゃないな?何者なんだ?お前は。」
俺はデジャブを思い出す。
「俺は・・あれだ。街の復興支援課ってところだ。前もどこかでいったような。」
ガルバルは少し笑う。
「そうか。まあいい。どの道、お前らを倒さないといけない訳だしな。MPにも限界があるだろう。」
ガルバルの笑みが消え真剣な顔になっていく。
剣を両手で握り踏み込んで剣を振った。少し離れているホークの手の甲に薄く風圧で傷を入れた。




