48.東西のいざこざ
「ザックさん。戦える兵は何人いるんですか?全部で。・・それとギルド側の戦闘員は?」
そういう事か・・と、一人ごちるザックさん。
「みんな回復させたとして、戦える兵は18人だ。俺を含めて。西下層の男は少ない兵を残し皆、鉄鉱石を掘りに鉱山に行かされている。生きているのかも解らん。・・生かされてるとは思うんだが。
ギルドの連中の戦闘員は、ざっと120人程だ。全部動員すればだが。」
18人か・・考えていた人数の半数以下だった。40〜50人はいるかと思った。向こうの120人は、まあそんなところだろう。・・・ここまで人数差があるとはなぁ。
「18人ですか・・。」
と俺は呟いた。
「私も戦えます。強くなりましたから。」
エリンさんが前に出て主張した。シンと静まり返る。
「馬鹿言うんじゃねぇ。エリン。戦える訳がねぇだろう。」
ザックさんが反応する。だがエリンさんも剣を持たせばかなりの戦力だ。ギルドの連中は恐らくそんなに強くない。スキルを伸ばす気がないのは何故なんだ・・。
「ザックさん兵達をみんな確認しておきたいんですが・・・今から。」
ザックさんが驚く。
「確認って。何をだ?・・・アンタがステータスを見れる能力があるのは見れば・・解った。だが何を見るんだ?」
この人は本気で言っているのか・・。
今までのやり取りでステータスを見れるって事を見抜くのは簡単だろう。
だが・・・何故だ?・・ステータスが見れると解ったのならレベルやスキルを見るだろう。
剣のスキル3で攻撃力に倍の補正も解っている筈だ。
それに俺が東下層に行ったという事は敵のレベル視察だろうと想像は付く。
こちらのレベルを確認・・するのは当然頭に浮かぶ筈だ。
エリンさんもレナさんもこちらを真剣に見ている。・・・俺はフゥと息を吐いた。
俺は、俺の考えと、これから俺がしていく事のおさらい。レベルとスキルの双方の確認を皆に話していく。時間はそんなには掛からなかった。
「なるほどな。そういう事なら解った。」
と真剣な顔で話すザックさん。決して馬鹿にしてる訳ではない。NPCの思考に限界があるのかもしれない。だが成長も感じているのだ。
ステータスが見える。で止まっていた人間にWHYとWHATを教える感じだ。そして直ぐに理解する。理解したふりではなく、そこで理解するのだ。向こうは問題が解けたという気分なのだろう。
「エリンさんは・・・」
話している途中で東から喧騒が聞こえだす。まあそうなるわな・・・。
時間が欲しい。・・俺が焦って壊した時間なのだが、それで死者をだしたら反省では済まない。
「ザックさん。これを。」
俺は瓶からバラバラとザックさんの両手に干し肉の欠片を落とした。数える暇はもうない。
「出来るだけ兵士に食べさせ西下層の守りを。とにかく守りを硬めてください。エリンさんは動ける人を教会に。エリンさん教会の入口は任せます。」
まだ起きないモヒーの鉄の剣と頭が潰れて倒れている男の鉄の剣を拾いザックさんとエリンさんに渡す。足が折れ縛られている男の鉄のナイフを拾いエリクに渡した。
「俺は騒ぎの所に行ってきます。エリク、マリンを守るんだ。」
エリクは頷く。ザックさんとエリンさんが剣を見てからこちらを向く。
「さとし君、俺も行こう。」
いや・・それでは先に進まない。兵士達を回復させるのが先なのだ。
「だから、ザックさんは兵士のステータスを回復させるのが一番の近道なんです。しっかり18人を集めて下さい。」
ザックさんは大きな声を出した俺に驚いたが、わかったと頷き南に走って行った。
「さとしさん。よろしくお願いします。エリクは教会とレナをお願いね。」
そう言うとエリンさんも南に走っていった。俺とエリクはそれを眺めた。
「あんちゃん、ここは任せてくれ。」
俺はエリクに頷いた。教会は大丈夫だろう。
俺が真っすぐ東に向かえば狩ればいいのだ。モンスターと一緒だ。考えるな。
「行ってくるよ。」
とエリクに手を振り俺は真っすぐに東へと向かう。
10m級の壁を左手に、月明りさえ見えない下層から壁の上を見上げ、今なら登れそうな気がする俺が怖い。俺はインドアのオタクなのだ。
大通りには直ぐに着いた。喧騒は更に東、俺はここで待つことにした。
喧騒は近づいてくる。モブが一人一人と見えてくる。そいつ等のステータスをサッと確認だけしていく。
全員レベル3程度、レベル1の奴さえいる。
後ろの奴で偉そうにしている少しデカい奴がレベル7といったところか・・・。
やはりだ。その奥からホークが現れる。
下卑た笑いを見せるモブ達が一斉に俺の前に・・・・・整列した。
レベルの低い奴らが前で奥にホークとレベル7の巨漢が見える。
何だ?これは・・・こいつら本当はステータス見えるんじゃないのか?全部で30人程、ザックさんが一枚岩ではないと言っていたのを思い出した。
真ん中をモブが避け、ザッザッとこちらに歩いてくるホークと巨漢。
最初から前に居ろよ。と思うが、今は言わない。
「朝は世話になったなぁ。」
と自分の掴まれた手首を回し、二ヤリと笑顔を浮かべるホーク。
「いえいえ。お世話だなんて、とんでもない。お礼を言われる程でもないですよ。」
俺は照れながら頭を掻いた。敵をステータスで見てしまっている俺は日本にいる頃の怖い人に対する恐怖心などはもうなかった。
「礼なんて言ってないだろう?」
ホークは目を細めた。
「それよりも教会に雑魚が5人程来てたけど・・アンタが送ったのか?」
俺はホークを睨みつけた。ホークは少し考えてから答えを出す。
「・・・?・・・だったらどうした?」
ホークの言葉に少し違和感を覚えたが・・気にしないことにした。
「ホークさん、こんな奴に何してるんですか?おいコラ、調子乗ってんじゃねぇぞ糞ガキ。」
ホークの横にいる巨漢だ。身長は2m程、プロレスラーの様な体系で上は裸だ。
・・・このステータスと装備命の世の中でだ。
短パン1枚なのだ。雑魚にもてはやされてるのは敏捷と攻撃力だろう。
拳には鉄の錘の付いたグローブを左右に付けている。格闘スキル4。
グローブの攻撃力補正は+6となっているが、左右でだ。片方の攻撃力は3のはずだ。
ここは勘違いしやすいところだ。
純粋な攻撃力が8あってグローブで+3、スキルで+8。一撃で19の攻撃力になる訳だ。
俺も顔や腕は少しダメージを受ける。痛いのは嫌だ。
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ガズ レベル7
拳闘士
HP 28/28
MP 20/20
攻撃力 8 +14
防御力 9 + 1
敏捷性 10
魔法力 15
魔法防御 7
装備
鉄のグローブ 攻撃力に+3×2
短パン 防御力に+1
スキル
格闘 レベル4 攻撃力に+8
魔法
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しかし、しっかり魔法使いのスキルになっている。・・・このなりでだ。
魔法が使えれば凄い戦力になるはずなのだが、何せ魔法防御を上げる術が無いのだ。
その巨漢は俺の顔を上から見下ろす距離まできていきなり拳で俺の顔面に振り下ろしてきた。
俺はその拳を1歩右足を下げる事で避け、左手でその拳を払い除け、俺は右の拳で目の前にあるデカい顔面を殴りつけた。
デカい顔面はゆっくりと歪む。
歯が飛び散り、顔はこっちを向いているが下顎だけはへし折れ逆の方を向いていた。




