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転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
2章 2部
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44.ザックとエリン




ザックさんはそう言い、大きな麻袋を持って歩き出した。俺も付いていく。

ザックさんは麻袋から硬いパンを1つ取り出しバサリと2つに割って俺に差し出した。


「食っとけ。食事は必要だ。」


そう言うとザックさんは慣れた足取りであばら家の隙間を通り抜け、あばら家にもたれて座っている老婆に麻袋からパンを取り出し1つ渡す。


「いつも済まないね。」


老婆が答える。


「いや。いいんだ。頑張ってくれよ。」


そう言うと老婆がニコリと微笑んだ。そんな感じで他の家やテントの中にもパンを置いていく。

他の兵士だろうか・・所々兵士たちがパンを配っているのが見えた。俺は涙が出そうになる。

エリンさんの所に到着する前にパンは殆ど無くなっていた。


「ザックおじさん!お、あんちゃんも一緒か。」


「おいちゃん!あんちゃん!」


エリクとマリンがあばら家の前で掃除をしていた。すこぶる元気そうだ。


「おう。エリク、マリン。顔色もいいな。」


ザックさんは涙目でマリンに頬ずりをする。


「痛い痛い。」


マリンは嫌がり両手でザックさんの顔をどかそうとする。


「おお。悪い悪い。」


マリンは頬を膨らます。


「ザック義兄さん・・・。」


エリンさんがあばら家から顔を出した。


「エリンか?エリンなのか・・・?」


ザックさんは大粒の涙を地面にポタリポタリと落とし地面に膝から崩れ落ちた。

そのザックさんをエリンさんが涙を溢しながら包み込むように抱きしめた。


「姉も・・・私も、ザック義兄さんには迷惑ばかり掛けました。本当にごめんなさい。」


「いいんだ。いいんだエリン。生きててくれてるだけで・・・いいんだ。」


俺はこういうのは苦手で頭を掻いて後ろを向いた。すると後ろのエリクも頭を掻いて照れくさそうにしていた。俺とエリクは目が合いにこやかに笑いあった。


暫くしてザックさんが俺に話しかけてきた。


「さとし君。色々とありがとう。疑ってしまって申し訳ない。あと・・心苦しいが頼みがある。これをレナの所に持っていってくれないか?俺は兵士の仕事があるのでな。」


俺は聞き返す。もうあまり時間を浪費したくないのもあるが、心を決めたのもあった。


「ザックさん、俺と外に行きませんか?それとエリンさんはこの西下層で鍛冶師と革加工師を見つけて欲しいんです。それとあなた方は剣をお持ちではないですか?」


ザックさんとエリンさんは顔を見合し、エリンさんが話し出す。


「剣ですか?・・・剣は鉄製でしたので全部取り上げられてしまって・・・。」


そうですか、と俺は肩を落とす。


「木剣ならあるんだが・・・どうだ?」


どうだ?と言われても木の槍よりはスキルが高い分、いいかもしれない。

が、木剣はそもそも剣なのか?斬るではなく殴るではないのか?

棒スキルを発動させてる時間はないのだが・・・。


「まあ・・それでいきましょう。ところでザックさんは門から出れるんですか?」


「ああ。それは兵達に言えば問題ないが・・。

それで、どうするんだ?・・・いや、さとし君、アンタに任せる。」


俺は頷いた。もう改善の余地が少なすぎるのだ。このままだと指輪を付けた同志は少しずつ減っていくだろう。俺もずっとこの街にいる訳にもいかないのだ。


「じゃあ私は鍛冶師と革加工師を探します。」


ザックさんがそこで口を挟む。


「絶対に大通りには出るなよ。ギルドの奴に見つかるとヤバいからな。」


エリンは頷いた。一つ閃き俺はリュックを下す。


「エリンさんこれを。」


俺は殺虫剤を出して地面にシューと殺虫剤を振り実演して見せた。


「これは?なんですか?」


エリンさんは興味深く観察する。


「何かあればこれを相手の顔に振って下さい。」


ノズルの噴射口まで丁寧に説明する。噴射口を間違えて自分で自爆しないようにだ。ピストルタイプの噴射口だから間違えようがないが念の為だ。

エリンさんは心配そうにそれを眺める。


「大丈夫です。死ぬことはないと思います。・・・たぶん。失明する程度でしょう。」


ギルドの奴らの悪行を散々聞いている。失明くらいさせてもバチは当たるまい。


「エリクとマリンにも仕事を頼みたいんだけどいいかな?」


エリクとマリンは笑顔で頷いた。エリンさんは心配そうな顔をしている。


「じゃあ、これをレナさんの所に持って行って手伝ってあげてくれないか?」


エリンさんはホッとした顔をする。・・・いやいや危ないことはさせないよ。今はね。


「大丈夫。任せなよ、あんちゃん。」


「任せなよ。あんちゃん。」


エリクとマリンは白い薔薇の入った麻袋を担いで北の方へ走り出した。

俺は下していたリュックからポケットティッシュを取り出し2枚抜いた。

魔法の袋から干し肉の欠片の入った瓶も取り出し蓋を外す。

その抜いたティシュに干し肉の欠片を10枚程握り2人に渡す。

効能を知ってる2人は干し肉の欠片を包んだティッシュを大事そうに受取り神妙な顔で俺を見た。


「これは、まあ・・慎重に扱って下さいね。手足が切れても繋げる程の回復薬です。出来れば信用の足る重病者に飲ませて下さい。」


ザックさんとエリンさんは息を飲んだ。俺は、ディスカウントショップの割引きビーフジャーキーなんだけどな。と、独りごちる。回復させる人間を差別するのは忍びないがこれは、仕方がない。


「ザックさんは木剣を。エリンさんは人探しを。俺は・・東下層に行ってきます。」


ザックさんとエリンさんは目を見開く。


「やめといた方がいいです。さとしさん。」


ザックはエリンの肩を抑え首を振る。


「さとし君、門から東、まあ南の方から行くといい。商業区だ。幸いアンタの事を知る人間はいない。

東下層の北には・・・出来れば・・行くな。」


俺はザックさんの言葉に頷き、話しを終わらせ、ザックさんとあばら家を後にした。

エリンさんが心配そうに手を振っている。


「しかし、大丈夫なのか?」


大丈夫かも行って見なければ分からない。

魔獣やモンスターの跋扈する外よりはよっぽど安全だろうと思うのだが・・・。


「ヤバければ逃げてきますよ。」


「そうか。ならサラマンドラの加護を。」


俺は頷く。が、サラマンドラの加護か・・・。

そんな加護があれば火の魔法の1人や2人持ってるだろうに。


もしギルドの奴らが火の魔法を使えた日には教会のサラマンドラ像の破壊は確定事項だ。



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