43.質問
俺はステータスを見てから、壁に立て掛けている木の槍の攻撃力を調べた。攻撃力は3。
ザックさんの補正を付けてもプラス1。槍じゃあ俺の素肌にすらダメージを与えられない。
レベルは1つしか変わらないのだが、はっきり言って弱い。
神のなんちゃらがないからなのか・・だが、こちらの大陸の人間が魔族だからか魔法力は高い。
しかし魔法は使えない。
「ここの人って魔法力が高いですよね?魔法を覚えたりはしないんですか?」
どう考えても魔法使い向きのステータスなのだ。
「ああ。俺たちが魔力が高いって何故わかるんだ?・・・まあ、最早アンタなら不思議じゃない気もするが、そうだな・・魔族って事らしいな。俺らは。だが、俺らにとっては魔力が多いのが普通なんだ。
そういう物だろうとしかわからん。それに魔法は誰かに教えて貰うものなのだそうだ。
それも詳しくは分からんし、誰に聞けば教えて貰えるのかも分からん。
恐らくみんなわかってないんじゃないか?稀にレナみたいな特別な奴がいるが・・・。
崇め奉られ、仕舞に教会に押し込まれちまって。あれは見てられんかった。」
レナさんにそんな経緯が・・・。それにしても誰かに師事しないといけない訳か。
俺もそうなのか?・・まあアランを信じるしか道はないんだけど。
しかし、ここの人達は宝の持ち腐れ感がヤバい。
レベルアップ時のステータス上昇の恩恵が魔法力に半分は注がれているような気がする。
魔法も使えないのにだ。
それよりだ。まずは1つ目、ここの食料の調達。魔獣は食べられるらしいので魔獣を狩る他ない。
「魔法の事は分かりました。ところで、魔獣が食べられると聞いたのですが?」
「ああ。食べられるぞ。普通に肉だ。美味いぞ。だが、外に出て狩るのも一苦労するが、それよりも門から中に魔獣の死体を持ち込むと西下層の人間は罪になるんだ。」
俺は驚いた。
「なぜですか?今にも栄養不足で死にそうな人ばかりじゃないですか?」
ザックさんも「そうなんだが・・」と腕を組んだ。
「死んでほしいんだろうな。俺達、西下層の民に。」
俺は手を振り否定の言葉を出す。
「ですが・・・それなら攻め込みさえすれば、もう出来た事じゃないですか?」
「そうだな。だがここは貴族と大商人達の街なんだ。奴らがそれを許しちゃいない。
西下層に男は少なかったろう?・・・鉄の鉱山に送り込まれてる訳だ。労働力としてな。
それをギルドが管理している。大きな壁の向こうの誰かの指示でだ。
採れた鉄は北にある王国に売れるそうだ。戦争でもしているんだろう。
要は、壁の向こうのお偉いさん達は俺達を生かさないといけない訳だが、ギルドはそう思っていないという事なんだろうな。」
だったらギルドの連中は相当、頭がよろしくないのではないか・・。今使えてる奴隷を減らそうとしてる訳だが後の苦労は自分たちに跳ね返ってくる。
俺みたいな旅人が頻繁に訪れるならまだしもだ。
限られた少ない奴隷を減らして何になるというのだ。
鉄を採掘する人間を殺してしまえばギルドで・・自分たちで掘らなきゃいけなくなるだろうに。
「先程、レベルの高い3人がギルドを仕切ってると言ってましたよね?」
「ああ。2人しか知らないのだが、俺の妻と、その義妹のエリンを売ったのがホークって野郎で娼館や飲み屋を仕切ってる。パーティションっていう飲み屋の女のところに入り浸ってるのは知っている。
それとチャフって野郎が商人ギルドを仕切ってる。・・えっと、さっき話したな。兵士の家族惨殺の件だ。それを操ってたのは奴だろう。って話だ。もう1人はよくわからねぇんだ。全く尻尾を出さねえしな。」
パーティション?英語なのか・・・?そこの女が怪しくないか?もう仕切ってる感がビンビンするのだが・・。まあそんな事はないだろう。隠す気がないなら分かるが、さすがにな。
「もう質問は明日でいいか?蝋燭の蝋が勿体なくてな。」
ザックさんは、ふぅと蝋燭に息を吹き火を消した。ひんやりしたレンガ床の地面に茣蓙を敷きそこの男2人が寝転がる。西側の狭間から星が見え、俺は頭の後ろに手を組み星を見上げた。
「ここは星だけは綺麗なのな。」
前も言ったセリフをまた呟いた。その星の後ろにすら見える赤い光が天まで届いていた。真っすぐ寝れたのは久しぶりだ。俺は暫く星を眺めてから眠ることにした。
寝たのが早かったのか俺は早朝に目を覚ました。起き上がりリュックのサイドポケットから歯ブラシを出し歯を磨いた。少し恥ずかしいが外で用を済ませる。
「起きてたのか?」
ザックさんが目を覚ます。
「ああ。すみません。起こしてしまいましたね。」
ザックさんは起き上がり狭間から外を見やる。
「ああ。いや・・いいんだ。俺も起きる。」
ザックさんも用を済ませいつもの革装備を着こみだす。
「あの・・・気になってたのですが、その革、どこで手にいれたんですか?」
通常の革装備だ。ここには通常の狼やウサギ、牛などは全く見ない。魔獣ばかりなのだ。瘴気が濃ければ生まれてすぐに魔獣だろう。と俺は思っている。逆にレアだろ。
「これか?これはファングウルフの革だが?」
「だって、ファングウルフって魔獣ですよね?」
ザックさんは目を細めて俺を見る。
「解るのか?さとし君、アンタは本当になんなんだろうな。知識があるのか・・無いのか・・。まあ・・いいか。」
ザックさんは頭を掻いた。そして話を続けた。
「さとし君。魔獣はな親から生まれはするが瘴気を吸って生を成している。モンスターは瘴気そのものだ。瘴気を吸い永く生きた魔獣やモンスターはレベルを上げていく。
そして魔獣やモンスターは瘴気の濃い地へ移動していくんだ。理由は解らんが魔獣達は北へ北へと移動する。そこには瘴気が濃い地があるのだろうと推測の域を出ん。
そのレベルなのだがここはレベルの低い魔獣も多くいる。俺達が倒せるレベルのな。1から3ぐらいのやつだろう。そいつらは瘴気を溜め込んでないため魔獣の革としてステータスが認識しない。
普通の革装備だ。魔獣装備はGからレナの所で確認できるが、昔はファングウルフを倒してはレナの所に鑑定に持って行っていたものだ。魔獣防具は防御性能が段違いだからな。」
なるほど。よくわかった。
「それで、鑑定した魔獣の革は売れるんですか?加工して自分で着るとか。」
ザックさんは胡坐をかいて座り話し出す。
「本当に質問が多いな。アンタは。」
ザックさんは笑う。
「すみません・・・。」
「いやいや。楽しいんだ。いや、嬉しいのかもしれんな・・。つい前はな、この西下層に鍛冶師も革加工師もいたんだ。買い取りは東だが、今は安く買いたたかれればいい方で、罪に問われる可能性もあるな。」
世知辛すぎる。ザックさんは出かける準備をしだす。
「最後に・・・ここの・・お金の事を教えて下さいませんか?」
ザックさんは驚いたが大笑いしながら俺は肩を叩かれた。・・・エリクに聞いとけばよかった。
俺はこの街の通貨を教えて貰った。じい様の顔の入った銀貨を渡され、これ1枚がザックさんの日当だそうだ。約千円くらいだ。
「じゃあエリンの所にいくか。」




