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転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
2章 2部
42/82

42.門兵長ザック


俺達はまずあばら家やテントが混在している南に向かい少し東に歩くと古いレンガ壁の家に辿り着いた。やはり扉などはなく垂れ幕で仕切られて中で小さな灯りが揺れていた。


「ザックおじさん。あんちゃんを連れてきたよ。」


ザックさんが垂れ幕をめくり顔を出した。


「おう。二人とも入れ。」


俺とエリクは中に入っていく。壁も地面も天井もレンガでしかも狭い。トイレはどこか外で済ますのだろう。


「ザックさんお世話になります。」


ザックさんは頷いた。


「ところで・・・エリンはどうだった?治りそうな見込みでもありゃあ嬉しいんだが・・・。」


エリクは笑顔で頷く。


「もう治ってるぞ。もう歩くことも出来るようになったんだ。」


ザックさんは目を大きく開き口をパクパクさせる。


「それは本当なのか?こんな短時間で?・・さとし君だっけ・・何をしたんだ?」


俺は色々聞かれ肩を掴まれ揺すぶられる。ザックさんの目に涙が溢れていた。


「何をするんだ!ザックおじさん。あんちゃんは俺達の命の恩人なんだぞ!」


エリクがザックさんの足にしがみつく。


「あ・・・悪い。・・・さとし君、すまなかった。」


ザックさんは俺の肩から手を放しゴシゴシと乱暴に涙を拭いた。


「エリク、これを持っていけ。」


ザックさんはエリクにパン入った紙袋を渡す。


「俺の日銭じゃあ少ないがな。」


エリクは頷く。


「ありがとな。ザックおじさん。じゃあ、あんちゃん、また明日迎えに行くからな。」


エリクはズボンで手を拭き俺に握手を求めてきた。


「ああ。よろしくな。エリク。」


俺とエリクは握手を交わす。エリクは笑顔で走り出した。


「まあ座ってくれ。椅子も無いんだがな。」


ザックさんと俺は胡坐をかいて壁にもたれて座った。


「さとし君。今日は甥や姪、更には義妹まで救ってくれてありがとう。」


ザクさんは改まって頭を深く下げた。


「いえ。ザックさん頭を上げて下さい。・・・あの聞きたい事が色々あるんですが・・。」


ザックさんは顔を上げて俺を見る。


「ああ。なんでも聞いてくれ。それに俺に出来ることはなんでもしよう。・・ただもう疑ってる訳じゃないんだが。・・・エリンの状況だけは見ておきたい。」


俺は頷く。


「はい。そうしてあげてください。」


ザックさんは笑顔を作って頷いた。


「おお。ありがとな。・・で、聞きたいこととは?」


ザックさんは直ぐに真剣な顔になった。


「はい。お察しの通り、この街の現状です。まずは貴族達のいる壁の向こうは置いておくとして、西下層と東下層について、お願いします。」


ザックさんは腕を組み立ち上がり奥に置いてある壺の蓋を開け杓子で壺の中身を飲み、奥の小さな棚に置いてある木製のコップにそれを注ぎ俺に渡した。


「これは西にある湖の水だ。まあ、水しかないが飲んでくれ。」


俺は恐る恐る口を付ける。普通の水だ。若干硬い水だが・・飲めないこともない。


「水は・・・手に入るんですね。」


俺はザックさんを見る。


「ああ。西下層の住人達にもこの水は行き渡る。俺達兵士がいるからな。だがこの水さえも今はギルドが管理していて量が限られる。俺達の少ない収入の半分が西下層の水代と言う訳だ。

しかも俺達が取りに行かされる。当然近いとは言え街の外だ。たまに死人も出る。その死人も増えていく一方だ。食事も行き渡らないからステータスにも影響がでてるのが主な原因だ。

この・・・つい先日の話だ。一人の兵士が水を盗んだそうだ・・。女房が熱を出したらしくてな。

それで水を少しちょろまかしやがった。俺達に言えばよかったのに・・・。

次の日、その兵士や女房、子供・・全員殺されてたんだ。

女房は手を切られ、その兵士の前で犯された挙句に殺されて燃やされた。

・・・東下層の糞野郎共にだ。」


ザックさんは一息ついて水を飲む。手は明かに震えていた。


「・・・そんなことが・・燃やすことまで・・。」


ザックさんは俺を見る。


「知らないのか・・。女はそういう場合燃やされるんだ。

アンデットを産み出す化け物になって蘇るからな・・。

だが、そうだとしても許されないだろう。人としてだ。

許されないし・・悔しいが今の俺達は従うしか生きる事さえ叶わないのも事実なんだ。」


ザックさんは下を向く。知らなかった。・・・もうそういう世界って理解するべきなんだろうな。


「では、あなた達兵士はギルドの連中より弱いのですか?」


「そういう訳ではない。と言いたいところだが、勝つのは難しいだろうな。

まず1つは俺達のステータスの低下だ。食料が不足して飢餓状態の奴らがほとんどだ。

2つ目は、武器だ。あいつ等は鉄製の武具を使用しているのに対して俺たちは革製の防具と木の槍と木剣で戦わざるを得ない。

3つ目に、ギルドを仕切ってる奴が3人いるんだが、そいつらの強さとギルドの人間の数だな。」


もう・・・全てじゃないか。ザックさんは水をもう一口飲んだ。ザックさんの親指に鉄製の指輪が見える。


「この指輪・・・はなんですか?・・・実はレナさんもしてたんで。」


「ああ。これか?アンタには話しても差支えないだろう。これは独立の同志の指輪だ。

夢を捨ててなければ付けているはずだ。」


そうなのか。まだ望みを持って戦っているんだな。


「そうだ。レナさんから湖の白い薔薇の事を聞きました。」


ザックさんは驚き、こちらを見た。


「レナのMPは回復したのか?」


俺も、もう話しておこう。ザックさんはこちら側だ。いや俺の方がザックさん側なのか・・・。


「はい。最大HPもMPもステータスも全て回復しているはずです。エリンさんもです。

ですので白い薔薇と水魔法で西下層の人達を救いたいそうなんです。」


ザックさんは小さな自分の家の奥に行き水瓶を動かし、その下のレンガを剥がした。

その下に麻袋が埋められていて、その中から乾燥した白い薔薇を大量に取り出した。


「白い薔薇はある。いつか・・・レナが・・。」


ザックさんは膝を付き地面に涙を落とした。


「それで・・皆さんの回復ができますね。」


「ああ。出来る。少しだろうが生きながらえる。」


本当はザックさんも心が折れかけていたのだろう。

申し訳ないが干し肉を全員にしかも数日、行き渡らせるのは無理だ。

だがザックさんには渡すべきだと思った。レベル5。戦力になるはずだ。

俺は瓶を取り出し蓋を開けザックさんに1枚の干し肉の欠片を渡す。


「これは?・・・そうか。いいのか?大事な物なのだろう?」


「はい。ザックさんは戦力になると思いまして。」


ザックさんは頷き口に入れゆっくりと小さな干し肉を咀嚼し味わった。


「美味いな。力が湧いて来るみたいだ。」


本当に小さい肉で恐縮なのだが・・・ステータスを確認してみよう。




――――――――――― 

ザック  レベル5


剣士

槍術士見習い


HP  24/24

MP  15/15


攻撃力   10 +2  

防御力    7 +7

敏捷性    9 

魔法力   12

魔法防御   6 


装備

素手      攻撃力に+ 2

革の鎧     防御力に+ 3

革の籠手    防御力に+ 2

革の脛当て   防御力に+ 2


スキル

格闘 レベル2 攻撃力に+ 2

剣術 レベル3 

槍術 レベル1 


魔法 


―――――――――――





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