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転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
2章 2部
40/82

40.西下層の教会



「ではさとしさん・・・この街の外壁門から中に入り北に真っ直ぐ大通りの先に大きな壁はご覧になられましたか?」


「はい。中に入ってからはそこまで見ませんでしたでしたけど、外の広陵から眺めましたんで。」


エリンさんは頷く。


「そうですか。では、通りの奥の北の壁の手前まで外壁の内側は下層と呼ばれ、門の前、西側に兵士の詰所などがあります。

門を境に西側は西下層。最もと呼ばれ最下層ともいわれますが・・

そして東側が東下層です。商人やギルドが軒を並べ、その人達が住む地域です。

北の壁の向こうは大商人や貴族の住まう場所ですが、行ったこともありません。」


門から西が貧民層で東が庶民層って感じか・・。北壁の向こうがお貴族様って事だな。


「・・差し出がましい質問ですがなぜあなた達はこちらに?」


エリンさんは下を向く。エリクは下を向き、外に出ていった。俺は目でエリクを見送る。


「・・・私は元々ここの兵士の娘でした。

以前は城主に雇われた兵士だったのですが、城主がホムラ様に変わり冒険者のギルドが兵士の雇用主となりました。

元々、南にある鉄鉱石の鉱山をギルドが所有していましたので。

ここの鉄製の武具が少し北に行った国の方が1年に1度買い付けにくるそうです。

それからホムラ様がここ10数年で北に壁を建設され、更に奥に城を取り囲む様にまた更に壁を建設したと言われています。

その壁を建設していた、ちょうどその頃に私は兵士に憧れていましてね。

兵士になった訳なんですが女性の兵士は珍しく雇用主のギルドのメンバーに目を付けられてしまい・・。

それから数年で私の稼ぎは剣から身体になってしまって・・・。」


フフッとエリンは寂しそうに笑う。・・いや全然笑えないです。


「エリクとマリンの父は誰かも解りません。

でも私が母であることには変わりはないし、今では私の宝ですから。

ですが不憫をさせているのも事実です・・・。」


エリンは話を切り、目に涙を溜めた。俺はリュックを下ろし干し肉を一枚抜き取りエリンさんに渡す。


「この干し肉には魔法を掛けています。凄い栄養価ですよ。まずは体をしっかり治しましょう。」


俺は笑顔でエリンさんに頷いた。近所のディスカウントショップ50%オフの魔法だ。

・・・アランの瞑想と同じ理屈だ。恐らく最大HPやステータスが減っている。

アランはあちらの食べ物で一定数回復させた。あとは瞑想でいけるらしいが・・そもそも瞑想とは何ぞや?だ。エリンさんは恐らく干し肉と水だけで完全回復出来るだろう。しかも少量でだ。


「ありがとうございます。」


とエリンさんはお腹も空いていたのか早速干し肉に齧りついた。半分は千切って置いてあるが兄妹に分けるのだろう。


するとどうだろう。エリンさんは肌艶が上がりみるみるステータスも回復していく。


――――――――――― 

エリン レベル3


剣士見習い


HP  15/15

MP  10/10


攻撃力   7 +1

防御力   7 +1 

敏捷性   6

魔法力   8

魔法防御  3


装備

素手       攻撃力に+1

襤褸ぼろ       防御力に+1


スキル


剣技 レベル2

格闘 レベル1  攻撃力に+1



魔法 


―――――――――――



レベルは3。先程まで最大HPは8だったのだが干し肉半分でこれだ。

栄養が不足したり長年動かなかったりすると基本性能が下るのだろう。

元々兵士を何年かしていた割には低いレベルだ。

城壁に守られているせいもあるだろうが・・そして魔力がレベルに対して高いのか?

アランの話だと魔族は見た目は同じだが魔法力や魔法防御の上昇が多い代わりに攻撃力や防御力が低いという事だ。

一概にも言えないのだが均等に上昇するのとランダムに上昇するのはその個人の趣が変わってくる。

かなりレベルが上がった時の平均値なのだろう。


「ごちそうさまでした。」


と、エリンさんは笑顔でこちらを向く。

綺麗な人だったんだな。髪はまだパサパサしてるが濃い青い髪で鼻が高い美人さんだ。目も蒼いのか。


「よかった。もう大丈夫ですね。俺はこの街を見て回りたいので、これで失礼します。」


俺は少し照れながらそそくさとあばら家を出る。


「さとしさん。少しお待ちください。西下層の北に教会があります。

そこでこの街のことが少しは詳しく聞けると思います。またいつでもいらして下さい。」


俺はエリンさんに向かって頭を下げた。


「今日の事は内密にお願いします。」


エリンさんも頷く。


「訳ありなのでしょう?わかっております。」


俺はあばら家を出た。


「あんちゃん待ってたよ。聞こえてた。教会に行くんだろ?案内するよ。」


俺はエリクに連れられ教会の方に歩く。見渡す限りあばら家とテントだけ。

少し東に目を上げるとレンガ作りの小さな建物が。その更に遠くに大きな建物が遠くに見える。

大通りの向こう、東下層区の建物なのだろう。俺はあばら家の間を縫うように北へと歩を進める。

小さな赤黒い教会が見え、周りは砂地で地面も赤黒く同化しているようにみえた。

エリク達と同じ襤褸い服を着た子供たちが教会の前で砂遊びや追いかけっこをしているのが見えた。

が、みんな痩せている。教会の角のレンガに腰を下ろしている少女が昆虫の羽を毟って食べている。

線の細い、修道服を着た若い女性が物干し竿にシーツを掛けて、赤砂が舞う外に干していた。

俺はそのシスターに頭を下げた。


「あら・・・見ない顔ですね?・・・エリク・・マリンはどうしたの?」


エリクは元気よく頷く。


「母ちゃんの所で寝てる。」


シスターは少し安堵した表情を浮かべた。


「そう・・・よかったわ。」


それだけ言うとシスターは覚束ない足取りでまたシーツを竿に掛けて、半分しか開いてない目で俺を見る。


「えっと・・・あなたは・・ステータスの測定で来られたのですか?・・それでしたら火の神サラマンドラに銀貨1枚のご寄付をお願い致します・・。」


火の神?ここでステータスの測定が出来るのか?・・まあ、教会だものな。


「すみません。お金は持ってなくて。」


「そうですか・・・。」


シスターは肩を落とす。シスターに申し訳なく思うがどうしようもない。

本当に金が無いのだ。俺は息を吐き教会の周りを見回した。

教会の直ぐ裏には15m級の貴族たちの壁が遥か東へとそそり立ち、西には5mの外壁。

角にある教会は真昼でないと殆ど太陽の恩恵は受けないだろう。


この街は・・・・。俺は歯を食いしばり強く拳を握った。

あちらでも他の国はそういう国もあったろうが、やはり日本人の俺に受け入れるのは難しい。


「・・シスター。少しお話をいいですか?」


俺は洗濯干しをしているシスターに声を掛けた。


「あ・・・すみません。私としたことが・・。如何なされましたか?」


シスターは目を伏せて下を向いていたがゆっくりと血の気の引いた顔を上げこちらを見た。

間違いなく栄養失調だろう。


「お忙しいのにすみません。俺はさとしといいます。エリンさんにこちらでここの街の話を伺えると聞いて。」


シスターは大きく目を開きこちらを向いた。


「エリンが?・・・エリンが会話出来るようになったのですか?」


「ああ。このあんちゃんが治してくれたんだ。」


そこにエリクが干してたシーツの下から顔を出した。俺はため息を吐いた。・・さっき内密と言ったばかりというのに。まあ今のは俺も悪い。


「治したって・・・・だって・・エリンは・・。」


シスターは話しながらポロポロと涙を落とす。


「あんちゃん。この人はシスターのレナさん。母ちゃんの友達なんだ。ごめんな。この人には伝えておきたかったんだ・・。」


エリクは下を向いた。俺はエリクの肩に手を置いた。


「分かった。エリク。ここのみんなも治していこう。」


今は少しでもここの現状は変える必要がある。・・内緒にしてもらいたいが、それは後で言おう。



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