24.魔獣戦
サランがそう告げた。直ぐ後、左側の雑草が生えた茂みから茶色の大型犬くらいのウサギ?が現れた。2本の角を生やしている。
「ホーンラビットです。」
ポールが魔獣の名前を告げ、お母さんが相手のステータスを確認して左右の腕の魔獣の革の籠手を外し飛び出した。ポールがお母さんを抑えようとするがそれをサランがそれを止めて首を横に振る。
先頭に立ったお母さんに向かってホーンラビットがシュタシュタッと走り出した。
少し早いけど私なら回避できる。お母さんはその速さに追いつけないが目をよく開きホーンラビットの突貫を腕で受け止めた。
左の二の腕にホーンラビットの角が刺さり貫通し血がポタリポタリと地面に落ちる、両者が至近距離で睨み合う形となる。が、ホーンラビットは動けず暴れる。
お母さんはニコリと笑いそのまま地面に腕ごと押し倒し、残った右腕の拳でホーンラビットを殴りつける。ダメージが入ってる。
防御力が少ないしレベルも低い。籠手を外し最初からこの捨て身で行くつもりだったんだ。
何度も顔を殴り付け角が折れホーンラビットが離れ地面に足を添えた所を狙い右手で投げナイフを投げた。
サクッとホーンラビットの胸に吸い込まれるように刺さった。ドシャっと音と共にホーンラビットが倒れ目が白くなっていく。
「友紀ー。干し肉を1枚頂戴?」
なんなのだ。この女コマンド―は?
私はポケットから干し肉ならぬチョコボールを1粒出しお母さんの口にコロンと入れた。みるみる傷が塞がっていく。
お母さんは魔獣の革の籠手を何も無かったように装備し直した。
―――――――――――
岩下めぐみ レベル2
シーフ
剣士
拳闘士見習い
HP 15/15
MP 10/10
攻撃力 9 + 2
防御力 8 +26
敏捷性 8 + 1
魔法力 5
魔法防御 4
装備
素手 攻撃力に+1 転移者補正+0 格闘+1
防刃服 防御力に+8 転移者補正+4
魔獣革の籠手G 防御力に+5 転移者補正+2
魔獣革の膝当G 防御力に+5 転移者補正+2
スキル
剣技 レベル3
剣使用時 攻撃力+6
格闘 レベル1
素手、ナックル 爪 攻撃力+1
投擲 レベル1
投げ武器 攻撃力+1
隠密 レベル1
敏捷性にボーナス+1
転移者補正 武器防具 1.5倍
身に着けた武器防具に1.5倍補正
魔法
―――――――――――
ホーンラビットはレベル3だった。確かに籠手を外さないと攻撃力が10のホーンラビットは手すらダメージをお母さんに与えられなかった。速さで勝るホーンラビットを捉える作戦だったのだろう。
ポールとリズは引いている。私もそうだ。引きまくりだ。怖くないのか?
「友紀。大丈夫。死なないわよ。殺さないと殺される世界でしょ?この世界はステータスに依存した世界でレベルを上げたもん勝ち。
だけど多くの人が何故かこんな簡単な理屈に理解を示さないのよね・・でも常にステータス見れないのも考えとしてあるわね。
前の世界ではこんなことできないわよ?考えてもみなさい、私たちは大量のエリクサーを持ってここにいるのよ?もうチートじゃない?それに優君だってきっと強くなって帰ってくるわよ。
さとしくんなんか化け物みたいになって帰ってくるかも知れないわ。」
お母さんは笑った。
「じゃあ友紀様もめぐみ様も行くよー。今日は中心まで行くよ。なんか瘴気が多いんだよね。」
サランが声かけをする。
「よーし。行こう。」
私も気合が入る。お母さんはいつも正しかった気がする。少しずつ少しずつ進んでいくとまたも1mサイズのホーンラビットが現れた。でも数が多い。5頭だ。レベルは2〜3程度。
「じゃあ私が行くよ。」
「私もいいかしら。」
サランがため息を付く。
「ちょっと待って。ウィンドバリア。」
サランの手から緑色の風が吹き私とお母さんを包む。
「いいよー。気を付けてね。友紀様だと少しダメージ受けるから頭は絶対に守ってね。」
サランがゴーサインを出す。私たちはホーンラビット達に向かって飛び出した。
「サラン隊長!宜しいのでしょうか?」
「宜しいも何もないよ。強くならなきゃいけないのは事実なんだし、最悪、頭にダメージ追っても死ぬことはないでしょ?だから防御力底上げしたんだから。
ウィンドバリア掛けためぐみ様は・・・もうアンタ達では勝てないかもよ。
でも転移者か・・・。
もともとの強さにステータスの上昇が多い・・いや多いうえに全ステータスが上がるのかな?」
「全ステータスがですか?一斉に?・・それは頼もしいですね。私達も負けていられません。」
リズが笑顔で頷いた。
「僕たちより強くならないといけないのは分かりますが、めぐみ様も巫女様も無理し過ぎだと思いますよ。」
「そうだね。ポール。そう思ったら雑談やめて弓を構える。援護は適確に行うように。」
「「はい。」」
ポールとリズが頷く。
私は速さを活かし垂直に飛び1頭めのホーンラビットの頭を目掛け槍を突き立てた、が、ダメだ。
攻撃力が足りない。傷をつけるに留まった。敏捷命の私はすぐ横の木を蹴りもう一度、同じホーンラビットに飛び掛かり槍で一閃するがまたも傷を増やすだけに留めてしまう。
苦しそうだから早めに止めを刺してあげたい。などとは思わない事にした。
そんなのは偽善で人間のエゴなのは分かっている。そう思うなら最初から魔獣とは戦ってはいけない。
HPは残り3分の1。もう少し、と思っていた所に先程足蹴にした木の横からもう1頭のホーンラビットが突っ込んできた。目の前に現れたホーンラビットに目を白黒させたが、またもジャンプして切り抜けようと試みるも太腿を角で削られる。
「痛っぅ!」
マジで痛い。
「友紀様!」
サランが叫ぶがサランの方を見て笑顔を向ける。
お返しとばかり私の足を太腿を削っていったホーンラビットのお尻に槍をぶっ刺す。チョコボールをポンと口に放り口の中でモゴモゴしながら振り向いたばかりのホーンラビットに真っ直ぐ槍を構えて突っ込んだ。
「おーりゃあ」
ホーンラビットの首筋に一突きダメージが入るが私の下腹部も貫かれた。おへその下はちょっと手薄だったかな。咳き込むと血が口から流れ出す。
だが左手で角を掴み右手で槍をホーンラビットの背中に突き刺した。また抜きもう一度刺す。
ようやくそのホーンラビットはブルブルと痙攣し横倒しに倒れたが角が刺さったままの私も倒れそうになる。
1歩後ろに下がり角を抜きモゴモゴしていたチョコボールを噛み砕き飲み込んだ。中身はピーナッツだ。キャラメルでなくて良かった。歯の裏にこびり付かせてる場合ではないのだ。
あと1頭が対面に構えこちらを狙っているが動かない。HPが残り3分の1の奴だ。
「ライト」
光で気を逸らそうと発動したライトをホーンラビットに向けて投げつけ私もその後に槍を構え走り出した。
パフンとホーンラビットに光の玉が当たり目が眩んだ隙を狙い槍を突き刺そうとした瞬間、もうホーンラビットの顔が吹き飛んで無かったのだ。
「うん?・・・あれ?」
頭のないホーンラビットがフラフラと倒れた。
「ねえサラン。このライトって敵も倒せるなんて聞いてないんだけど・・・。」
「うん・・・。私も知らなかった。友紀様が馬車の中でクルクル回してるあれだよね?体に当たってもパフンって消えるだけの・・あれだよね?」
「そうだよ。それしか知らないから私。でも今パフンって頭無くなったよね?エリアドルさんには光る魔法としか聞いてないし。」
「魔獣やモンスターには有効なんじゃない?」
3頭倒したお母さんがやってくる。頬と肩に深い傷が見える。
「サランちゃん、友紀が作った干し肉の飲み物を頂ける?」
「あーはいはい。」
とサランはバッグを探り1本の小さく刻んだ干し肉の入った小瓶を出して蓋を開けお母さんに渡した。
「まっず。」
お母さんは舌を出したが頬や肩の傷はみるみる塞がっていった。
「サランちゃん精霊の水だけでもこれくらいの傷は塞がるのかしら?」
サランは首を横に振る。
「いいえ。私だと無理だと思います。精々HPで3くらいじゃないでしょうか?」
「私のHPも3しか減ってなかったわよ?」
「割合だと思いますよ。最大HPが低い人にとっては・・例えば町の住人だと最大HPで6くらいなので精霊の水だけでも万能の薬に見えるでしょうし、めぐみ様の今のHPだと深い傷程度なら消せるんだと思います。」
「そうね。瀕死になった人に試してみないといけないわね。」
この人はなんてフラグを立てるんだ。




