22.NPCの子孫たち
私達もポールに手を振り中に入る。長い階段を登り中間層で訓練をしている兵達を覗いて最上階に到着する。エリアドルさんはまだ上の祠にいるようだ。
「晩御飯を作るわよ。友紀も手伝いなさい。」
「はーい。今日もスープとパンだよね?」
お母さんはフフンと鼻を鳴らした。
「今日はうどんを作るわよ。小麦粉が売ってたのよ。友紀は井戸で水を汲んできて頂戴。」
「うどん!やったー。すぐ汲んでくる。」
私はダッシュで階段を駆け降りる。
私は水を汲み桶を2つ持って登っていると兵達が慌てて走り寄って桶を取り上げられた。
「私達は巫女様達用にここに20人もいるんですよ。使って下さい。」
とゲオルグさんが頭を下げた。申し訳ないと私も頭を下げる。最上階に登りお母さんの手伝いでうどんを作り昨日の6人で食事をした。お母さんがバッグからカツオダシの粉末を出した時には驚いたが、嗜みなのだそうだ。
みんなも美味しいとホクホク顔だ。今日の晩遅くに迎えが来てカルナック兄ちゃんが帰るそうだ。今のうちに考えていることを話しておこうと思う。前のスタンピードで2つの国が滅んだ。間に合わないのかも知れないのだ。
決して偉ぶるつもりはない。みんな生きて欲しいのだ。
「じゃあ、ちょっとみんな聞いて。まずカルナック兄ちゃん。」
「はっ。」
「さっき町で聞いたのだけど、ゼストには死の森含めて大きく4箇所モンスターや魔獣が出る場所があるんだって。このカルナック領にはモンスターや魔獣が出る場所はカルナックの森以外に何か所あるの?」
「その4箇所程ではありませんがカルナックの森と西のウエストウッド、少し大きな村と川に隣接した深い森です。馬車で半日程になります。」
「どちらのモンスターが強いの?」
カルナック兄ちゃんは素早く答える。
「ウエストウッドにございます。」
「・・じゃあその村の人達でモンスター達を撃退したりしてるの?・・・って、え?ウエストウッド?」
「・・・いえ。過去に壁を建設してその壁で守っている状態です。」
「そこにいる兵士達で対処出来るのかしら?」
お母さんが私をちらりと見て話に加わる。
「いや兵士は常駐ではありません。ですが月に1度ほど定期的に巡回を行っております。・・が、何か?」
カルナック兄ちゃんは答えた。
「・・・・・」
マジか・・・。私は言葉がもう出なかった。エリアドルさんも答えない。サランとミランは頷いてすらいる。
「あのね、友紀は心配してるのよ?あなた達やカルナックの町や村のみんなの事を。森は何で瘴気を出すの?瘴気が増えるとどうなるの?強い個体が現れて村が滅んだら?・・・村に強い個体が住みついて瘴気が溢れた森からモンスターが押し寄せたらどうなるの?誰が討伐するの?って簡単に想像できるじゃない?」
「・・あっ!・・はい。」
カルナック兄ちゃんも気付いた様子だ。・・・・分かった。分かった気がする。ここの人達は危機や状況の管理ができないんだ。簡単な数手先が読めない?なんで?・・だけどお母さんの話に・・そこで一定の理解を示す。
「で・・ではどうすべきでしょう?友紀様。めぐみ様。」
真剣な目でこちらを見るカルナック兄ちゃん。民を思っているのは間違いなさそうだ。民を見捨てる気でないのにホッとする。心底に素の感情なのだ。
「じゃあ私が偉そうなこと言ってごめん。エリアドルさんは塔の兵を5人ウエストウッドに送って。カルナック兄ちゃんも明日早速10人程の兵士を送って、あとお金と。」
「お金・・ですか?」
「そう。お金。村の人に常駐する場所を作って貰うの。ちゃんと賃金を払って。サランかミランはどちらかがそこに付いて行って。塔側の兵の討伐期間は3日の5人ずつ入れ替えで10日間の討伐任務を与えます。」
「はーい。わかったよ友紀様。」
「了解しました。」
「それでは私も友紀様にお任せ致します。私も出来ることがあれば言って下さい。」
エリアドルさんは頷く。
「エリアドルさんは通常運転でいいよ。宝玉もあるし。とにかくゼストを変えたい。という同志のレベル上げ。後はおいおい話しましょう。」
一つ一つ指示を出していくことにしよう。もう決めたんだ。なるべく不幸になる人を減らさないといけない。
「明日は私とお母さんでカルナックの森に行こうと思うんだけど?」
エリアドルさんが一言だけ口添えをした。
「サランかミランのどちらかをお連れ下さい。」
私は頷く。
「うん。そうする。それと兵達も誰か連れて行こうと思うの。塔の中層で訓練しててもレベル上がらないでしょ?それに私達もレベル上げないと偉そうなこと言えないじゃない。
それにカルナック兄ちゃん言ってたよね?兵士数がどうだとか公爵領と同数だとか。それは違うと思うんだよ。実際レベル3程度の1000の兵が攻めてきてエリアドルさん1人に勝てないでしょ?
この世界はそういう事なんだと思うんだ。みんなはずっとこの世界にいるからなのか・・・考えが及ばないのかは知らないけど・・・。
レベル1の市民が大勢居てレベル2〜3程度の兵士が大勢いる。その中にサムソンやゼブラ、サランにミラン、カレンさんやリカルド達みたいなエースがちょいちょい居て、ゼストやエリアドルさんみたいなジョーカーがいる。それで均衡を保ってるんだと思うよ。少なくともこの魔法王国ゼストは。
もし隣国のヴァレンシア帝国の兵士がこっちのエースばかりだったら?1000の兵士が全員サムソンやゼブラだったら?兵士数関係なく滅ぶのはこの国でしょ?まあサランやミラン、エリアドルさんは
この国の人間じゃないし私たちもそう。
でもカルナック兄ちゃんやこの国の人たちには死んでほしくない。言いたくないけど今の今まで何百年もこのままだったのであれば・・・この世界の人々は考えが足りない。と言わざるを得ない・・・よね。
ごめんね。嫌な事言うよね。」
私が下を向くとシュタっとカルナック兄ちゃんが椅子から離れ膝を付き深々と頭を下げた。
「何を謝る事がありますか?友紀様。私達には考えが足りないのでしょう?それは今のお言葉で痛感するばかりです。巫女様に知恵を頂ける栄誉を貰える私は幸せ者です。」
「その通りです。友紀様。賢者と言われ永く生きた私もこういう話を聞かされ初めて気付かされる・・・。お恥ずかしいばかりです。」
普通に考えれば・・まあ・・分かることなんだけど・・・教育とか情報社会とかそんなレベルじゃない気がするんだよね。まあ・・なんとなく解ったからいいんだけど。
「ところでさー。話し変わるんだけどカルナック兄ちゃんってカルナックなんだよね?」
「そうですが・・・何か?」
「お父さんは?おじいさんは?カルナックなの?」
カルナック兄ちゃんはうんうんと頷き笑って答えてくれる。
「いえいえ。家督を継いだ時にカルナックを与えられるのですよ。私も幼少の頃は違う名前でしたし、今父は幼少の頃の名前に戻っております。」
「ああ。なるほどね。」
これは納得した。
「友紀様、私が明日は友紀様とめぐみ様に付いて行くよ。あと2人ばかり見繕ってくる。」
サランが答え後ろでミランが頷く。
「じゃあそろそろ迎えも来てるはずですから私はこれにて。明日は朝一番に10人の兵をウエストウッドに向かわせ銀貨で大量に持たせましょう。うちの兵たちはミラン殿に指揮をお任せいたします。」
カルナック兄ちゃんは一言
「これは未来が楽しみだ。」
といい降りて行った。
私は未来が不安で仕方ないというのに・・・




