21.武器交渉とギルド
「ガドルさん武器の準備出来た?」
ガドルさんはこちらをちらりと見てカウンターの椅子から立ち上がりこちらに歩いてくる。
「ああ。準備出来てるぜ。これは細くて使いやすいが歴とした鋼の手槍だ。お嬢ちゃんでも持てるはずだ。攻撃力は兵士の槍よりも上で騎士の槍よりは下ってところだ。刺してよし。斬ってよし。投げてよしだ。
それと嬢ちゃんの母ちゃんが2階に来てるぜ。とりあえず杖を2つ出してある。が、嬢ちゃんの母ちゃんは投擲用のナイフを探してたぜ。」
お母さんはランボーにでも成るつもりなのだろうか。ガドルさんに頷き私は2階に上がった。
「お母さん何探してるの?」
「あら友紀来てたのね。私ね、さっき冒険者ギルドに行ってきて冒険者になったのだけど・・・。」
と言い首に茶色のプレートを掛けているのを見せた。
「冒険者になったの?ってか冒険者って何?」
「冒険者になるとね、魔獣なんかの革や材料を買い取ってくれるみたいなの。私はFランクで駆け出しらしいわ。そこじゃなくてギルドの会員が世界的に少ないらしいの。カウンターの人も喜んでたわ。」
「平和だからじゃないの?まだモンスターも魔獣も見たことないもんね。」
「でもこのゼストにも何か所かモンスターや魔獣が発生する場所があるみたいなのよ。とにかくヤバい場所は死の森らしいわ。そこ以外は弱いモンスターや魔獣が発生するっていうんだけど、放置してる期間が
永いと瘴気が増えて強い個体がたまに出るらしいの。ウエストウッドって所だったかしら。大鬼の討伐依頼もきてるみたいよ。それとね、何人か冒険者が居て聞いたんだけど職業を変えると敏捷とかにボーナス付いたりするみたいなの。」
「カレンさんがシーフだったんじゃなかった?剣も上がるし敏捷のボーナスも付いてたよね。」
「そうなの。それでね、剣術スキルを3以上にするとシーフに為れるみたいなの。私もシーフに為ったわ。隠密レベル0ってなっているんだけど戦闘で回避したり逃げたりすると上がるみたい。」
それって隠密と言えるのか疑問はあるがそうなんだろう。
「それで武器屋に何を探しにきたの?シーフだから投げナイフとか?」
「投擲を覚えたいだけよ。戦闘も木刀でまだまだいけそうだし、この優君に貰った大型ナイフを1本友紀に渡しとくわ。友紀は槍にしたんでしょ?腰に付けてても邪魔にならないし、この世界の人はスキルボーナスって概念をあまり知らないみたいよ。剣術も敏捷も上がるのはお得だし、投擲から派生される職業も魅力的じゃない?」
やはり私のお母さんだ。考えていることが似ている。そして昔のロープレ脳だ。それよりもステータス診断できるギルドに冒険者が少ないという事は大半の人がステータス自体に興味が無いってことかもしれない。
「友紀様、めぐみ様、そろそろ決まりました?お昼を食べて帰りますよー。」
サランが2階にやってきて私たちの横に並んだ。
「私はこれ3本と革製の籠手と革製の脛当てにするわ。」
お母さんは20cm程の短い投げナイフ3本と革製の手と足の防具を手に取って微笑んだ。
「サラン、ちょっと待ってくんな。」
ガドルさんが2階に顔を出す。
「サラン。この嬢ちゃん達は要職のようだな?そして・・ゼスト側でもないな?」
「そうだね。ガドルさんが嬢ちゃん達とは呼べない位にね。ゼストとも敵対したしね。」
「そりゃあいい。サラン、金は持ってきてるのか?」
「まあ少しはね。」
「ちょっと待ってな。」
またガドルさんは奥の倉庫に入って行く。そして直ぐに荷物を抱え出てきた。
「これは革の籠手と脛当てなんだが獣じゃなく魔獣の皮を使っている。軽くて使いやすい上に防御力も倍以上ある。獣の皮を加工して革の籠手や脛当てを作っても精々防御に+2になる程度だがこれは+5は上がる。
少々高いが命には変えられん。それとこの魔獣の防具にはランクがある。装備してギルドでステータスを見て貰えば分かるんだが、これはGランクの魔獣防具だ。上からSからGまである。D以上は魔法防御まで備わっている。
まあこれは魔獣防具の中では最低のランク防具だが獣の皮よりはよっぽど防御性能は高い。Aはドーガ様が装備しているらしい。俺が本人を見たのも1度しかないんだけどな。Sなんて物は噂の領域だ。」
ガドルさんは笑った。お母さんは装備させて貰ってホクホク顔だ。投げナイフを収納するホルダも購入していた。払ったのは勿論サランだ。
「あと嬢ちゃん。この矢、作れるぜ。1本が銀貨2枚だ。」
「そうなの?ガドルさん。サラン何本注文していい?」
サランは顎に手を当てて考える。
「ねえガドルさん60本で白金貨1枚でどお?」
「ちょっと待ってくれサラン。金貨2枚分はあんまりだろう?前金の55本だ。」
「よし。それでいいよ。時間はどれくらいかかる?」
「2週間だ。2週間くれ。」
「解った。ガドルさん。じゃあ2週間後にまたくるよ。」
装備を全部ポールに預け支払いを済ませた。そこにお母さんが近づく。
「ねえガドルさん、魔獣の皮はまだ残ってるかしら?」
「ああ。あるにはあるが・・・姉さん何に使うんだい?」
「まあ姉さんだなんて嬉しいわ。実は盾を作って欲しいの。」
「盾・・・か?きょうび聞かないが・・。」
お母さんは左手に装備している魔獣革の籠手を外し説明する。
「わかった。作ってみよう。その左手の籠手に装着出来ればいいんだな?」
「そうそう。いつか友紀が大量に発注するかもしれないわよ?」
そうなの?まあお母さんが言うならそうかもしれない。
「この嬢ちゃんがか?そりゃあ楽しみだ。じゃあ姉さん安くしとくぜ。盾も矢のタイミングで作っておく。」
ガドルさんとお母さんが笑い、サランは財布を見ながら顔を引き攣らせた。
私たちは町でお昼を済ませ馬車に乗り込みカルナックの町を後にする。太陽がオレンジ色に変わり馬車の影を長く見せていた。
私は馬車の中でライトの魔法をフワフワ浮かべクルクルと回していた。途中でライトの魔法が小さくなり消えそうになったが口の中にポンとチョコボールを投げ込むとまたライトの魔法が大きくなった。
「ねえ友紀様、その黒いのがチョコボール?」
「そうだよ。ほれ。」
私はサランに1個チョコボールを放る。
「ちょちょ・・勿体ないよー。貴重な食べ物なんだよ・・・。食べていい?」
「いいよー。美味しいよー?。保存がきかないから食べないと。ポールもどうぞ。」
私は立ち上がり御者のポールのもとに行き1個手渡す。
「私にも?・・・宜しいのでしょうか?」
ポールは涙ぐむ。大げさだよ。
「美味しい!甘い!」
「でしょでしょ。」
ポールは大事そうにチョコボールを胸ポケットにしまった。食べればいいのに・・・。外をみると夕日がもうすぐ沈む頃合いだ。塔がもう近くに見えてサランは降りる準備を始める。私達も自分の荷物を各々持ち降りる準備を始めた。
ミランが扉を開け中から現れる。
「友紀様、めぐみ様、お疲れ様でした。町はどうでしたか?」
「楽しかったよ。お昼ご飯は味が薄かったけど・・・。」
「武器や防具もいっぱい買っちゃったわ。エリアドルさんにお礼を言わないといけないわね。」
「そうですか。それは良かったです。どうぞ中にお入りください。」
ミランはそう言うと私達を中に促した。馬車の方をみるとポールが手を振っている。
「ポールもありがとねー。」
「はい。楽しいでした。またお誘い下さい。」




