第二十五話 魔宝石と書いて争いの元と読む
第二十五話お待たせしました。
ぼんやりとした眠りから覚醒して目を開けると、何故か人が増えていた。
えーっと、誰だっけ?
ジェイドさんを叱っていた、いつぞやの薄い縹色を三つ編みにした、アメジストのような綺麗な紫の瞳を持つ綺麗系イケメンさんだ。
「おはおうごじゃいましゅ。かみゆしゃん……かみ、りゅ……かみ、る、しゃん……と、じぇいぢょしゃん……じぇい、ど、しゃんを、しかっちぇら、ひちょ?」
「おや、覚えていましたか」
「あい。……えと、……りょんぢょしゃん…りょん、じょ、りょん、ぢょ、りょ♯¿×*▼ひょ¡/※□っいちゃっ……」
ロンドさんの名前が呼べない……!
ロンドさんの名前も、カミルさんの名前も、ジェイドさんの名前も、寝起きのなまった舌っ足らずな舌には優しくない名前です。
ぶっちゃけ呼びにくい。
ラ行とダ行の発音が難しく、ロンドさんの名前を呼ぼうと試みるが、無残にも私の口から出てきた音はロンドさんの名前の原型を留めていなかった。
何度も繰り返して呼ぼうとするが全く進展を見せず、更に悪化している気がする。
ついでに舌を噛んだ。地味に痛い……。
「……ロンドと言いたいのはわかりましたから、もういいですよ」
「あい……」
ロンドさんのもういいよ宣言に名前を正確に呼ぶことにあえなく撃沈した。
……こっ、今回は呼べなかったけど、いつか絶対にちゃんと呼んでやるんだから! リベンジするんだからね!!
……ラ行とダ行、覚えとけっ!!
「……で、フィオーネちゃんは、どうしてここに来たんだい?」
うわぁ、そうだった。
出来ればこのまま忘れておきたかった……!
✳✳✳✳
かくかくしかじかで、私のやらかしたことを二人に伝えると、ロンドさんがいい判断です、と褒めてくれて、カミルさんに頑張ったな、と頭を撫でられた。
どうやらこの2人は叱るより褒めて伸ばす教育方針のようだ。
「そうですね……魔宝石というのは、魔石の上位互換でして、宝石に魔力が宿ったもののことを言うんですが、魔力総量が1万を越したものは流石に初めて見ましたね……。……取り敢えず、この魔宝石は私達が預かってもよろしいですか?」
「あい」
全然大丈夫です。
むしろ是非。
ついでに返却不要ですよ、零円であげちゃいますよ!!
「というか、魔石や魔宝石てつくれるんだな……。フィオーネちゃん、このことは人に話しちゃだめだよ。……それとも、もう誰かに話しちゃった?」
「まだでしゅ。としょかんでいろいりょとしらべちゃだけで、はなしちゃにょは、りょんどしゃんとかみゆしゃんがはじめてでしゅ」
「そっか、それじゃあジェイドさんと国王様とアコニットさんには僕達から伝えておく」
「……あい」
助かります。ただ、できるならアコニットさんに伝えるのは勘弁してください……。
無理は承知なんだけど。分かってるけど。
それよりも……
「にゃんで、りょんどしゃんは、まえとしゃべりかちゃが、かわっちぇるの?」
そこがここに来て私が1番気になったことだ。
「私の喋り方がどうかしましたか?」
「まえは、けいごをつかっちぇにゃかった」
そう、前はロンドさんは、~だ、だろう、といった喋り方をしていた。正直いって少し怖かったのだけど、今は全然そうでない。どういうこっちゃ。
「あぁ、あの喋り方をするのは仕事場だけなんですよ。あそこは変人が多いので、なめられると些か面倒なもので」
何でだろう、二人とも笑顔なのに、ほのかに漂う哀愁。
すごく、苦労してるっぽいな……。
今度お菓子でも差し入れしてみようかな……。




