第二十話 夢渡
今回は長くなり過ぎたので少し区切りが悪いかも知れません。
なるべく早く投稿できるように頑張ります(`・ω・´)ゞ
ゆらゆら、ゆらゆら、ゆらゆら、ゆらり。
空中に浮かんでいるような、水の中を漂っているような、不思議な感覚がして、気がつくと真っ白い空間にいた。
「……ここは、………何処?」
目が覚めたのか、はたまた明晰夢なのか、段々と自分の意識が覚醒してきて、脳が自分の置かれた状況を把握しようと動きだした。
私は、最近ここに来たことがある……。
段々と記憶を探っていくうちに、魔力量と適正を調べる前に来たことがあると思い出す。
そうだ、ここは確かツァールトハイト様と会った時の状況に似ている。
あの時も、気がつくと辺り一面が真っ白い世界で驚いたんだ。
でも、どうして……?
「フィー?」
後ろから声がかけられて、ふと振り向くとツァールトハイト様が驚いた顔をして立っている。
「ツァールトハイト様ですか……?」
名前を呼び返して見ると、「そうだけど。偽物が出てこられても困るでしょ?」と苦笑しながらツァールトハイト様がこちらへ歩いてくる。
「ツァールトハイト様が私を呼んだのですか……?」
困惑気味に質問すると、「いいや?僕は呼んでないよ?」と心底不思議そうに返事が返ってきた。
あり? 私ってばお呼びでない? じゃあ何でこんなところにいるんだ。寝る前にツァールトハイト様のことを一瞬でも考えたから? それで何でこうなった。わけがわからない。
「少なくとも僕は呼んでないよ。多分だけど……君には『夢渡』の素質があるんじゃないかな」
「……ユメ、ワタリ?」
「そうだよ。夢渡っていうのは寝ているうちに他の者の夢の中に入れる所謂、超能力の一種だよ。明晰夢を見易い体質の人に多いらしい。たまに無自覚で他人の夢の中に入って好き勝手荒らしていって本人は記憶なしでケロッとしてるなんてこともあるけど。元々、夢渡の素質があったのと、新しい身体にまだ君の魂が慣れていないからうっかりこっちに来られたんじゃないかな?」
夢渡かぁ……。
なんか人様の心を覗き見しているようで申し訳なくなる。
「あっ、フィー、今『人様の夢を覗き見するなんて申し訳ない』なんて思ったでしょ」
「うぇっ!? なんで分かったんですか!」
「今、そんな顔してたよ」
どんな顔ですか、それ。
「君は気にしなくていいと思うよ。そりゃあ、夢は心を映すものだからあんまり宜しくはないけど……」
「……そうですよね」
「大丈夫だよ」
少し悩んだ後にニコッと笑うツァールトハイト様。
何でだろう、今の会話の中でどうしてその答えに行き着いたのか分からない。
「大丈夫。だってフィーは人の夢を荒らしたり現実でその人の夢を暴露したり、夢で知った相手の弱味で相手を脅したりしないでしょ?」
「そんなモラルの欠けたことしませんよ!」
「うん。だから、大丈夫だよ」
「でも……」
納得がいかなくて、なおも食い下がろうとする私の頭にツァールトハイト様がぽんっと手を置いた。そのまま、ぽんっ、ぽんっ、と安心させるように一定のスピードで私にの頭をあやすようになでる。
「大丈夫。どんな能力も人の毒になるし、逆に薬にもなる。要はその能力を持った人のさじ加減なんだ。自分の能力を正しく理解して、相手の事や周りの事を見て動けるフィーなら、大丈夫だよ」
「……はい、……そう、ですね。私が考え過ぎちゃいました。駄目ですね、マイナス方面にばかり考えてしまう癖を治さないと」
「そうだよ、その調子」
ニコッと笑って最後にぽんぽんっと私の頭をなでてツァールトハイト様が少しうしろに下がっていつもの距離感に戻る。
「でも、こんなに神界に簡単に来れちゃって良いんですか? なんか、こう……修行とかなんか悟りを開いた人だけが来れるみたいなイメージがあるんですけど」
「ぶっ、あははっ!! 何そのイメージっ……! ……ぐ、ふ、ふふっごめっ……ちょっと…ふふふっ…ツボに……はいっ……た……ふふっ…ふふふふっ……っ!!」
口に手を当ててクスクスと笑うツァールトハイト様。
ええええぇ、駄目ですか、私のイメージ……?
結局、しばらくして笑いの発作から解放されたツァールトハイトがこほんっとわざとらしく咳をするまで私は放置されていた。
「ごめん、えっと神界にこんなに簡単に来れていいのか、だっけ?そりゃ駄目だよ。吃驚しちゃうでしょ?」
「えぇ……? それじゃあなんで来れちゃったんですか、私」
吃驚しちゃうでしょって、そんな理由なの? そんなんでいいのか神様。
けろっとした顔であっさりと「駄目だよ」なんていっているけど、それじゃあ私がここに来ているのってすごく問題なんじゃないか?
「さっき言ったように、元々、夢渡の素質があったのと、まだ魂が身体に慣れていなくて離れやすかった事、後は僕が加護を与えていた事と、僕とフィーが一方的にではなくお互いに面識があったことかな」
「どういう事ですか?」
「そうだねぇ……、日本人がわかるように言うと、縁があったって事かな。夢渡ってその人との縁の結びつきが強ければ強いほどその人の夢につながる可能性が高いんだ。多分だけど、僕がフィーに加護与えてるでしょ? その縁をたどってここに来たんじゃないかな」
「なるほど……。それじゃあ、愛の女神様や魔法神様や武神様のところに行く可能性もあったって事ですね。……ツァールトハイト様で良かった……」
「ん? どうして?」
「だって、ほとんど知らない神様のところに行っても緊張しちゃうだけですし。私、今ツァールトハイト様以外の神様のところに連れていかれたら、キョドって喋れなくなる自信があります」
「そう?フィーなら何とかなりそうな気もするんだけど」
「まぁ、なんとなーくツァールトハイト様に会いたいなぁーって思ってたし私としてはこの力をフル活用して今後もツァールトハイト様に会いに来る所存です」
「へぇ、会いたいと思ってくれてたんだ? 嬉しいけど何で?」
ちょっと照れながらぽりぽりと頬をかくツァールトハイト様が私に理由を聞いてきた。
うーん、なんでって言われるとなぁ……。
言葉にしにくい? って感じがする。
「えっと、なんか言葉にしにくい感じですけど、ツァールトハイト様といるとぽかぽかするっていうか、ほわほわぁーっとなにかに包まれてる気がする? っていうか……安心します」
「そうなの? 自分じゃ分かんないんだけど、フィーがそう思ってくれてるなら良いってことにしとこう」
「そうですか? 拙い言葉ですみません」
私を置いてひとり納得しているツァールトハイト様。
うん。喜んでもらえたようだけど、理解してもらえたかは微妙だな。
「それじゃあ、フィー、そろそろ帰った方が良いよ。フィーのいた世界だともうそろそろ夜が明ける」
「はい。それじゃあツァールトハイト様、またね、です」
「うん、じゃあね、フィー。またね」
ツァールトハイト様の返事を聞いてすぐに私の意識はプッツリと途切れたのだった。
✳✳✳✳
…チュンチュンッ……チュンッチュンチュンッ……
目を開けるとそこは旧騎士寮の私の部屋で、窓の外を見れば小鳥が、元気に窓から見える空を横切っていった。
「ふぁ……、お腹空いたな……。うわ、よく考えたら私お昼前にふて寝して、もう朝になってるって事はお昼と夜とを抜いちゃったのか。あぁ、そう考えるとお腹空いた……」
スッカラカンのお腹を抑えながら、服を着替えて、何か冷蔵庫に入ってたっけとがさがさ去ってみると、天然酵母で焼いたパンが10個ほどとミルク、大量に作って作り置きしている自家製コンソメスープと自家製ベーコン、後はじゃがいももどきとほうれん草もどきが出てきた。
あとはレタスもどきと水菜もどき、とうもろこしもどきと、自家製マヨネーズもあった。
あ、玉子も5つだけ発見。
うーん、じゃあ……、コンソメスープとほうれん草もどき、ミルクをつかってほうれん草もどきのポタージュ作って、レタスもどきと水菜もどき、コーンをつかってマヨネーズでサラダにしよう。
玉子とベーコン焼いて、パンに挟んで、醤油少し垂らして、あ、棚の上に紅茶も入ってたっけ?
紅茶つくって、余ってた林檎もどきのジャム入れて、ロシアンティーっぽくしちゃおう。
そんなことしながら、材料を冷蔵庫から出していると不意に玄関の扉をノックする音が。
誰だろう。
「はぁーい」
急いで玄関の扉を開けると、目の前にはこの前テオ兄様とフェリ兄様を護衛していたエレンさんが目の前に立っていた。
エレンさんはぜぇぜぇと肩で息をしながら、私の姿を見る。
何があったんだろう……?
「テオドール殿下とフェリドール殿下がこちらで御朝食をフィオーネ様のつくったものをフィオーネ様と食べたいと仰せで、至急おふたりの朝食も用意してくださいませんか?」
「……ふぇ?」
……え?
ちなみに、夢渡は私の考えた能力ですからあしからず。
既存の能力に似たものがあって、夢渡とどこか詳細が違ってもその能力を参照したわけではないです。




