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第十九話 面倒事の予感

今回はちょっとシリアス風味です。

 




 私がこちらの世界に転生して早数日。

 テオ兄様とフェリ兄様と最初に部屋でお茶をしてからも二日程経ちました。


 今日はお昼ごはんの材料を食材置場まで取りにいこうと部屋を出ようとドアを開けました。


 えぇ、開けましたよ?

 すぐにドアを閉めましたけど。


 何故かって、ドアを開けたらそこにジェイドさんがいらっしゃったからです。


 しかも仕事服。

 この間助けてくれた時のフォーマルなお洋服と違って仕事服なのですよ。つまり騎士服。

 これが意味することはつまり、私にお仕事の方で用事があるという事です。

 つまり、ジェイドさんのお仕事から察するに魔王様が私をお呼びだろう、という事。


 これはつまり、あのこわぁい、こわぁい、腹黒執事さん(アコニットさん)とエンカウントフラグです。

 嫌です。怖いです。会いたくないです。面倒臭いです。


 そんな、まさかね……。

 気のせいだよ。気のせい。

 こんなところにジェイドさんが来る筈無いでしょ。

 だって魔王様直属の騎士団の団長さんだよ。

 ないない。有り得ない。


 さて、と気を取り直してもう一度ドアを開ける。


 ……。


 「おはよう。フィオーネ」

 「…………おはようごじゃいましゅ、じぇいどしゃん」


 いた。

 気のせいじゃなかった。


 挨拶するだけしてドア閉めようとしたらガッツリ靴をはさんできた。

 何処の悪徳業者ですかあなたは。


 「どうしたんだフィオーネ。そんなにドアにしがみついて」

 「……」


 足で妨害しといて何言ってるんだこの人。

 貴方が足を挟むからドアが閉まらないだけです。

 はやく足を退けてください。


 「いつもはこれくらいの時間に昼飯の材料をもらいに行ってるそうだな。この時間に来れば会えると思って待っていたぞ?」

 「……」


 誰から聞いたんですか? ストーカーなんですか?

 ちょっとジェイドさんに私の行動パターンを教えたやつ出てきてください。お姉さん怒らないから。ね?


 「そういえば、最近はテオドール殿下とフェリドール殿下とお茶をしたそうだな」

 「……………ごようけんを、どうぞ」


 やっぱり帰ってくれそうもないですし。

 ジェイドさんには諦めてもらえそうにありません。

私が折れるしか道はなさそうです。


 「レオが……国王様がフィオーネに用事があって会いたいそうだ」

 「拒否け…」

 「拒否権は無い」


 うわぁお。

 最後まで言わせずに拒否権無しって言い切ったよ。

 なんでだよぅ。私なんにも悪いことしてないよぅ。


 「行く、よな?」


 うわぁ、ジェイドさんの笑顔が黒い。なんだろうなこの圧迫感と強制力は。

 ちゃんと疑問形で聞かれているのに、疑問形に聞こえない不思議。


 「……はい」


 結局は圧迫感と強制力にボロ負けして、半ば無理矢理魔王様の元へ行くことになった。




 ✳✳✳✳




 足が遅いためジェイドさんに抱っこされて魔王様の元へ運ばれて、現在降ろされたソファで待機中です。

 ジェイドさんのお膝の上に座ってます。

 イケメンのお膝の上です。羨ましいですか?

 お膝のうえに座らせられている意味は、「お前絶対逃げんじゃねぇぞ(意訳)」ですが、本当に羨ましいですか?

 BGMは哀愁漂うドナドナですが何か?


 なんせ3歳児ですからね。

 膝の上にのせておけば床に足つきませんし、目の前にいるので逃走阻止しやすいですしおすし。

 ここに来る時の抱っこも、その方がはやく到着後できるというより、逃走阻止の意味合いが強かったのかもしれない。

 そんなに私は信用ないのかな……ってあるわけないわ。

 前にここに来た時嫌がってジェイドさんの腕の中でジタバタもがいた記憶があるわ。

 おまけに、罵詈雑言吐いた。

 そりゃ無いわ。むしろある方がおかしいわ。(遠い目)


「どうした、そんな目をして?」


 気がつくともう魔王様が部屋に入ってきたところだった。

 そんな目=遠い目ですよ魔王様。

 貴方が元凶なのにどうしてそんなに不思議そうなんですか。


 ドS執事(アコニット)さんと数人の護衛を引き連れた魔王様は、むかいのソファにそっと座るとにっこり笑って話しかけてきた。


「もうここに来て数日経つが、どうだ。ここにも慣れたか?」

「はい。おっきなおへやもありがとちょぉごじゃいましゅ」

「あぁ、それなら気にするな。もともと、前に住んでいた騎士があの部屋で病死してから、めっきり人が減って今はあのざまだ。気にすることは無い」

「えっ……。たいしょくしたんじゃないんれしゅか?」

「退職? ………あぁ、ジェイド、お前もしかして…………?」

「……はぁ、せっかく隠しといたのに……」

「……すまない」


 なんであんなにいろんな荷物が揃ってるんだろうとか、日用品まで置いてって生活に困らなかったんだろうとか、いろいろ思ってたけど、まさかの事故物件かーいっ!!


 いや、何かあるんだろうなーとかは思ってたけど。

 事故物件でしたか。そうでしたか。

 そりゃあ、新騎士寮に人が流れる訳だわ。

 誰だって人が亡くなっている古い寮と便利だしピカピカの新しい寮だったら、よほどの変わり者じゃない限り新しい寮を希望するんじゃないかな。

 比べるまでもないよね。


「……知らなかったのか。…今からでも新しい寮に移るか?」

「だいじょうぶでしゅ。いまのまんまでもんだいにゃいでしゅ。そりゃぁ、あんまりきもちのいいものじゃないでしゅけど、なんのがいもありましぇんから、だいじょうぶでしゅ」

「そうか」

「フィオーネ、隠してゴメンな」


 ジェイドさんが申し訳なさそうに眉を下げながら、私の頭をなでてくれる。


「それで、今日ここに呼んだ理由なんだが……」

「あい……?」


 いきなりダイレクトに本題に入る魔王様に少し困惑しつつ、返事を返してみる。


「護衛たちから報告が上がっているんだが、最近テオドールとフェリドールがきみの部屋に邪魔しているらしいな」

「あい」

「だから、フィオーネ、其方には知っていて欲しいことがある」


 な、何でしょうね……。


 く う き が お も く な っ て ま い り ま し た !!


 いや、流石にこの展開は予想外です。

 何かやらかしたのではと思ったけど、どうやら違うようですし。

 いったい何を言われるんだろうね。嫌な予感しかしない。


「主に、フェリドールについての事なのだが……」


 そうして、重々しく魔王様から告げられたフェリ兄様の事についてまとめると。


 曰く、フェリ兄様は所謂いわゆるオッドアイというもので、隠している左目が青い瞳で、普通に他人にも見せている方の右目が金色の瞳な事。


 曰く、この国には今から五十年ほど前に『狂気マッドネス』の二つ名を持った左目が碧眼、右目が金眼のマッドサイエンティストが存在していて、それ以来オッドアイ、特に同じ目の色彩を持つ者は『忌み子』として忌避される存在となってしまっている事。


 曰く、フェリ兄様本人もオッドアイにコンプレックスを抱いている事。


 ……という感じらしい。


 魔王様は私が傍にいる時だけでいいから、そういったフェリ兄様を馬鹿にする人からフェリ兄様達を守って欲しいんだそうだ。

 何なら魔王様の名前を出してもいいとの事。

 それはいいのだが、なぜ護衛に言わないのかと聞いたら彼らには家があるから、自分より高い身分の者にはどうしても強く言えないからだそうだ。

 それに比べて私は身寄り無し、記憶無し、親しい友人無し、守るようなお家も当然なしなので、むしろ圧力が加えにくいかららしい。

 魔王様もこんなこと考えたりするんだなーと思っていたけど、発案はアコニットさんらしいです。

 くそぅ、鬼畜ドS執事め。

 いたいけな幼女を売りやがって貴様に慈悲はないのか………………!?

 なかったね、1ミリもなかったねそういえば!! 期待した私が馬鹿だったわ。


 ジトっとした目でこっそり見つめていると不意にアコニットさんがこちらを向いた。……うわ、バレた。

 にこぉっと黒い笑顔で微笑まれた。

 ……サッと目をそらしました。

 すみません調子乗りました。許してください。(ガクブル)


 ……ごほん。ちなみに、『狂気』とほぼ同じ時間軸で『血塗れ姫(ブラッディプリンセス)』という、白髪赤目の快楽殺人鬼が存在していて、それに私の色彩が似ているので私も気をつけるように、とのこと。


 それだけ話すと、魔王様はまた公務があるらしく部屋を出ていった。


 ………………なんか、すっごいこと聞いちゃったよ。

 私、忌み子らしい。

 ただ単に、昔私と似た色彩を持つ異常者が存在していたというだけで。


 馬鹿馬鹿しい。


 ジェイドさんに部屋まで送ってもらうとお昼ご飯を作る気も起きず、そのまま寝室に向かい部屋に置いてある大きなベットにぼふっとダイブした。


 やだなぁ……。

 ツァールトハイト様、どうしよう。

 こっちの世界では上手くやろうと思ったんだけど、どうも前途多難の予感です。


 心の中て泣きごとを言いつつうつらうつらとして、私はお昼も食べずに寝てしまった。




フィオーネの中でアコニット君の評価が散々www

意識していたわけではないのですが、多分アコニット君はフィオーネのいじり役で決定です。

今回は少しシリアスにしました。

次回も少しシリアスが入る予定ですが、どうぞお付き合い下さいませm(*_ _)m

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