3話
ようやく森を抜け、村が見えると男が二人近づいてきた。村は主に木造で、文明レベルは低そうだ。村男1,2が喋り出す。
「あんた!無事だったのか!3日も出てこないからやられたのかと思ったぞ!」
「そんなに強いやつだったのか?まさか変異種か?怪我ないか?」
次々に質問攻めしているが、秋人には全く理解できていない。エスタの後ろで置いてけぼりである。地図を取り出し、返しながらエスタがようやく話す。
「ん、普通のサイズテール。…地図良くない」
「そんなバカな!これはみんなで作ったし、国も協力して作ったやつだぞ!」
「ん、でもいなかったし、迷った。それよりこの子」
「ん~、見かけねえ子だなあ。おい、知ってるか?」
「いや、ここいらの子じゃねえな。どこで見つけたんだ?それよりこの子、怪我してるじゃねえか!おい治療が先だ!今先生来てるからいってこい」
前に押し出されさ秋人だが、対応に困る秋人。じろじろ見られいい気はしない。だが突如腕もつかまれ、抵抗する。男がそれを見て腕を離さず、ぐいぐいと引っ張っていく。
「おい、こら!怪我が膿んでもしたらやばいんだぞ!おちつけって。な!」
「ん、待って」
何を言ってるのか分からないので抵抗を続ける秋人。が、エスタがフォローしたのか腕が解放された。
「この子、言葉違うから。困ってる。場所教えて。連れていく」
「言葉が違うってーのは珍しいな。森超えたとしてもフランカには着かねえはずだぞ…。訳有か…」
「んなことあとでもいいって。まずは治療だ、治療。」
今度はエスタに手をひかれ、抵抗せずについていく。そんな中、秋人は考える。
(どうする?こんな文明レベルじゃやばいかもしれないぞ。地球でだって奴隷がなくなったのはコンクリができた結構後だろ?身元不明の俺なんか身売りに出したら、こいつらにとっては、誰も損せず、金が入るって飯うまなだけじゃねえか!やばいぞ。村にいるのはまずいかもしれない…)
判断材料がないため、言葉による意思疎通がないためネガティブになっていく秋人。そんな事を考えているうちに医者のもとについたようだ。
「先生!こいつ見てやってくれ。サイズテールにやられたらしい!」
「はいはい、見てやるからまってな。私はどこにも行きやしないよ。見たところ、大怪我でもないし、応急措置はされてるからね。検診が先。いつまで男がここにいるんだい。女の裸を見るのは嫁だけにしときな!」
初老を迎えそうな女性が、聴診器や手で診察をしていた。どうやら女性の順番らしく周りは女性によるブーイングの嵐。男二人はさっさか退散していく。子供故に秋人は大丈夫らしい。10歳くらいの女の子は恥じらっているが…。先生と呼ばれる医者は検診しながら聞いてくる。
「で、怪我してるのはお二人さんともかい?怪我してないなら体洗って出直してほしいんだがねえ。」
「ん、この子、言葉が違う。落ち着かない。」
「ふーん。珍しい子がいたもんだ。生憎、この歳でも他言語は喋れなくてね。まあ、しかたないね。せめて鎧でも外して、外においてくれ。誰も盗みやしないよ。」
ん、と一言いって鎧を外し、外においてくるエスタ。その体は成長途中だが、女性の特徴がちゃんと自己主張していた。周りは女だらけ。初老の女性や器具を見て視線を固定させる。
「はっはっは、心はいっちょ前に男のつもりかい。安心し、もうすぐみてやるからさ」
大人の女性はクスクスと笑い、同い年くらいの子は体を背ける。エスタも心なしか唇の端があがっているようにも見える。周りの反応からからかわれているのがわかった秋人だが、視線を動かすかけにもいかず、腕も組み、貧乏ゆすりして順番を待つしかなかった。そしてようやくの順番。秋人とエスタを見る。
「サイズテール相手にソロで傷一つなしかい…。その歳でよくやるねえ。…にしてもこの包帯巻いたのもあんたかい?傷作るのになれてんのかい?まあ処置は間違ってないからいいけどね」
「ん、日常茶飯事。傭兵だもの」
「はあ~。傭兵ね。そんな歳でやる必要なんてあんのかい。にしても相変わらず、すごい切り傷だ。まあ薬塗っときゃすぐ直るさ。」
塗り薬らしいがとても臭い。思わず鼻を摘まんでしまうほどだ。顔にもありありと出ているのだろう。エスタも3mほど後ろに下がっている。はれもの扱いにも思えるのはまだネガティブ思考だがらなのだろうか。
「臭いかねえ。長年やってりゃこんなもん、屁でもないがねえ。まあいい薬なんだ。我慢しとき」
脇腹や足、腕と色々な場所に塗られたため、全身臭い。近寄んなレベルである。エスタがまた下がったのは気のせいだろうか…。治療された故に、臭いには困ってるが一応頭を下げる。意味は通じたようで、そこら辺は同じらしい。
「まあ、ガキンチョなんぞに頭下げられてもね。チビは元気に走り回ってる方が一番だよ!」
「ん、お代」
銅貨を何枚か持ち、手渡そうとするエスタ。これは秋人にも何なのかは分かる。それを断る初老。
「あんたの子ならまだしも、違うんだろ?ならいいよ。こんな薬ここいらじゃあっさり取れるからね。本来なら金取る方がおかしいさ。膿んでるならまだしも、ただの切り傷じゃねえ」
「いいの?」
「かまわないよ」
「ん、ありがとう」
エスタが金をしまい、頭を軽く下げたのを見て、もう一度頭を下げる秋人。それを見て女性は軽く笑い、荷物をまとめ始める。
「あんたはどうすんだい?わたしゃ一泊して明日の朝出るけどさ」
「この子の相談。村長と」
「そうかい、依頼できたんなら宿はあるだろうしね。困りゃしないか。じゃあね。若い女があんま傷作るんじゃないよ」
秋人の頭をポンポンとやさしく叩くように撫で、出ていく女性。秋人はもう一度頭を下げておいた。無料の礼だ。感謝のしるしくらい何度もしてもいいだろう。ただ先ほど考えた問題が浮かび上がってくる。これからどうする、どうなるのか?そんな事を考えているうちにエスタに手をひかれて歩きだす。エスタは村の人に何かを聞き、ある家に向かう。ノックして家に入るとそこには歳にして40くらいの髭を生やしたおっちゃんと若い兄ちゃん。エスタと秋人はテーブルにつき、秋人を置き去りに会話を始める。
「サイズテールは討伐できたと聞きましたが…」
「ん、これ」
と袋から目と宝玉を取り出す。
「確かに、確認しました。印を渡します。契約通り、宝玉は結構。こちらが報酬です。おい」
と何かしらの紙をエスタに渡したのち、兄ちゃんが袋を持ってくる。銀貨5枚と銅貨5枚が入っていた。それをエスタが確認すると村長は本題に入る。
「その子なのだがね。やはりこの村の子でも、周りの村の子でもないようだ。ここいらの村はどこも小さいからね。次世代の子はどこも把握しているよ。」
「ん、問題は…どうする?」
「引き取っても構わないが……。言葉が通じないとどうもね。冬も近づいているからみんな収穫や、作業に忙しい。場合によっては苛立って問題を起こすかもしれん。」
困った顔でこの場にいる3人が秋人を見るが、理解していない秋人は首をかしげるのみ。やったのはエスタの服を掴むのみ。
「ふむ。懐かれているようだね。命の恩人故かな?」
「ん、うちは余裕があるからこっち持ちでもいい」
「それはまあ、助かるが…。いいのかね?君は一般兵のような立場だろう?」
「この子に何か素質があれば……平気…な、はず」
「か、確証があるわけではないのか…」
不安な返答に村長側は苦笑するしかない。秋人はただいるだけ。村長は念押しする。
「傭兵団に彼の居場所ができるかね?それさえあれば問題はない。言葉は生活していくうちに覚えるだろうからね。冬さえ超えればこの村でも問題はないんだ」
秋人の顔を横目に話す村長。だが秋人にはこの横目がマイナスに働いた。欲目に見ているように感じたのである。服を掴んでいた手に力が増した。これを察したエスタ。
「ん、大丈夫。みんな陽気。言葉なくても笑って過ごす」
「そ、そうか。そんな陽気なら、彼もわ、笑って?すごせるかもな…」
微妙な返答に困りながら返す村長。だが秋人の処置は決まったようだ。
「で、これからどうしますか?宿は一応用意しております。帰るにしても今からでは夜を3回またぐ事のなりますが…」
「ん、今日は泊まる。この子も疲れてる」
「分かりました。宿に案内します。鎧も剣も届けておきます。わかったな?」
最後は兄ちゃんに話し、席を立つ村長。それに続きエスタ達も立ち、宿に向かう。
宿に向かう、その途中…
「くお!おい、この大剣すげえ重いぞおお、おお。やばい!倒れる。助けろ。たすけてくれ。」
「おいおい。嬢ちゃんは担いで歩いてたぞ。ってマジでやばいな。もう一人来てくれ!」
「なにかしらの魔法かスキルか。道理であの年で傭兵が成り立つわけだ」
「…お前のスキルなんだっけ?」
最初に運ぼうとした男に聞く最初に助けに来た男。が、返ってきたのは凄んだ顔だった。
「俺に聞きてるのか?本当に聞いてるのか?」
「おう… 悪かったな。聞かなかったことにしてくれ。(なんだったかな?こいつ)」
運びながら3人目が小声で教える。
「ククククク……寝てるときにガスがたまったら屁が出るオートスキルだよ!」
「ああ!寝ッぺか!」
つい大声をだす、最初に助けに来た男。それを聞き2人をぶん殴り、どこかへ去る男。このあと宿まで二人で運ぶことになったのであった。世の中色々なスキルがあるようだ。
宿の布団に入ると昼間にも関わらず、すぐに落ちた秋人。慣れないサバイバルで疲労がかなり溜まっていたようだ。だが、動物たちは、早いようで早朝に騒ぎ出す。秋人が目を開けるとそこには女性特有のふくらみが。どうやら秋人はエスタの抱き枕にされているらしい。体は子供、頭脳は青春真っ盛り。嬉し恥ずかしのこの状況。どうするか。寝ぼけていた事もあるだろう。
「うわーい」
と小声で言った後、顔をうずめたのである。そんな事を寝ぼけながら満喫していた時、響くノック。
「そろそろ朝飯にすんよ。馬車早く出さないとイースト着くのも遅くなるじゃないか」
何を言ってるのか分からないが、声は初老の女性だった。
(邪魔すんなよなあ)
もうただの変態と化していた。だがエスタは気配で目を覚ましたようだ。のろのろと体を起こし伸びを一つ。
「ん。~~。んん~~」
体がまた倒れてくる。二度寝しようとしているらしい。が、ノックが激しくなる。
「早くしな!あんたと同じ馬車らしいんだよ。こっちは患者が待ってんだ!」
患者と聞いてすぐ起きるエスタ。傭兵故か、命が関わる事には敏感だ。さっさか着替え(秋人は無視されていた)飯を食いに行くエスタ。着たきりすずめの秋人はついていく。朝飯を一緒に食べる3人。スープにやわらかいパンと簡易的なものだった。
「で、その子どうするんだい?」
「ん、連れていく」
村長に見送られながら馬車に乗り村を出る3人。だが秋人は村長よりも気になるものがあった。それは馬。と、いうよりもトカゲだろうか。荷、人を運ぶのは緑の体を持ったトカゲ。しかし首から上は馬である。緑も鬣に緑の頭。知っている馬とは違い気色悪く感じてしまう。
「なんだい。ポーがそんなに恐いのかい。なっさけないね~。こいつは基本無害だよ。産気ずいてさえいなければね。普通見たことがあるだろうに」
「ん、大丈夫」
どうやら違うように解釈されたようだ。二人にとってはこれが常識。恐がる要素がない。持ち運びにはこのポーが使用されている。頭が馬故に声帯は同じ。ブルルルと鳴く。体がトカゲでも全長は大きい。横に大きいが縦には大きくないため何ともアンバランスな生物だ。朝から昼は飯を食い、ポーの手綱の仕方を手振りと様子から馬の動きから覚える。夜はエスタの抱き枕。そんな日を2日間。そして3日目の朝、3人(プラス御者の計4人)はイースト着くのだった。
日数修正入れました




