1話
闇の中に突っ込んだ青年。そこを抜けると雪国だった……ではなく緑豊かな森の中。神社から自宅への間に森はない。
(な、なんだ~。どこだこりゃ~ な~んだこりゃ。)
彼は体に違和感を感じるがアルコールのせいだと判断し、どうするかを考え導き出した。そして身近にある木を違和感ある体でえっこらえっこら登り、ある程度の高さにある枝で横になる。
(なにがなんだかわからん! とりあえず…… 寝る!眠いぞ~寝るぞ~ヤッフー!)
変なテンションだが、とりあえずアルコールを抜く事にしたようだ。木に登ったのは多少の自衛効果に期待したのだろうか。アルコールの入った体はすぐに心地よい眠りへといざなった。
日が出始めたそんな早い時間。青年こと遠山秋人はギャーギャーとうるさい鳥の鳴き声で目を覚ました。二日酔いにはなっていないようだ。木の上で寝たためか体に違和感がある。木の上からさっさか降りる秋人。そこで彼は重大な事に気がついた。
(なんだ?手小さくないか?いや、小さいどころじゃない!幼いんだ!)
動揺しながらも木も下り、まじまじと手も見つめる秋人。いつまでも見つめているわけにもいかず、動揺をしながらも状況判断する。
(まずどこだここ。森なんて近所にあったか?こんなでけー木が何本もある森なら知らないってことはないと思うんだが…)
状況がわからずとりあえず日が見える方へ歩いていく秋人。鳥がギャーギャーと相変わらず鳴いており、風で葉と葉がすれる音を聞きながら歩く。歩いてしばらく秋人は重大な事に気がつく。服が違うと。上着は色がまず違う、下はGパンから短パンになっている。手が幼い。足も短いし幼い。そして視点が低い。これらのことから答えを導き出した。
(おいおいおい!背が縮んだってより、若返ったのか?それとも誰かの体を乗っ取ったのか?)
「一体俺に何が起こってるんだ!」
混乱のあまり、ついには叫ぶ。ただそれがいけなかったのだろうか。気配など消さず、堂々と歩いていたのが原因かもしれない。秋人の後ろからのびのびと成長している草をかき分け、生物が出てきた。細長い胴体。手には鎌がついている。足は6本。目は虫独特の目。どう見てもカマキリである。地球に生息しているカマキリとの違いは5mほどある背丈としっぽにあるサソリのようなしっぽ。そんな既知のようで未知なる生物が、黒眼などないので視線はわかりずらいが、こちらをガン見しているのが分かる。そんななか、虫は比較的大丈夫な秋人はというと
「わあああああああああああああああああああ!?」
大声で小さな手足で走り出した。…どうやら自分よりはるかにでかい虫はだめらしい。まあ餌として見られているような状況では当たり前なのだが。 最初に歩いていたのが功をなしたのか、普段とは違う体でも走る事ができた。必死で走る秋人。ブワッと大きなものが空気中で動く音を感じ取ると、木がある右方向へヘッドスライディングすると同時にでんぐり返しの要領で立ち上がれるように半立ちになる ガッという音とともにメキメキメキ!ドシン!っという音も聞こえる。振り返ると自分よりはるかに高い木はなく、そこには刈り取られ、倒れた木と振り終えた右腕と左腕を持ち上げる体勢のカマキリ。とっさにもう一度、今度は体が向いている前方へ飛ぶ。
ブン!という空気を裂く音を聞いた秋人は振りかえりもせず、また必死に走りだす。どうやらスタートダッシュはカマキリは遅いらしい。音が遠のき、後ろを確認する秋人。考えてみれば分かる事だが、身長差がある分、歩幅が違うしパワーも違う。ましてや相手は全長5mはあるのだ。差ができたとしてもどんどん近付いてくる。差が縮んでいると気がつくと命を駆られる恐怖がじわじわとわき上がる秋人。命のやり取りなどない日常を送っていたのだ、叫びだしてもしかたがないだろう。
「うわあああああ!なんなんだよ!な、なん、なんだよアレ」
息継ぎもおぼつかなくなる秋人。ただ走る、走る、走る。追いつかれながらも、必死で森の中を走り、また飛び込み前転を繰り返して鎌を避けること数分。足や脇腹をかすり血の筋を作っていた時、緑だらけの森に赤が見えた。炎のような赤。目がそちらに行ったせいなのか、体も赤がある方へ向きを変え走り出す。もはや何も考えていない。新手の敵の可能性すら思いつかず、ただ走る。細い胴体とは言え、5mもある体のカマキリ。木を切り裂きながら前進するため、時折、秋人との差が生まれる。そんな差が出来た時、秋人は 赤が何かに気がつく。余裕がないため走り抜く。
それは背中に大剣を背負った赤い髪を持つ少女とも女性とも言えるような女だった。




