片鱗の欠片
そのまま接近していき、隼人に蹴りを入れた。突然の攻撃で、かわすことが出来ず、地面に叩きつけられる。
「ぐあっ…」
痛みが後から、響く。いきなりの攻撃とはいえ、全く反応が、出来なかった。わかったことは、蹴りをくらって、地面にひれ伏していたことだ。
「不意打ちとは、やってくれるな」
「お前が飛び込む世界には、不意打ちぐらいざらにある。それに、卑怯な真似をしない悪人が、この世界に何人いる? これが戦場なら、お前はすでに死んでたな」
確かに正論だ。俺が進むと決めた道は、茨の道であり修羅の道。これくらいの予測も出来なければ、命がいくらあっても足りない。ゆったりと立ち上がると、歯を食いしばりながら、向かっていく。何発か食らっても、一発を当てるという、考えだった。
「一発でも当たればと、考えたのだろう。だが…」
殴りかかろうとした瞬間、何十発ものパンチを受けて、数メートル飛んで、地面に倒れこむ。一体何が起きたんだ? 近づいた後、攻撃をしようとして、返り討ちにあった。一回でダメなら、もう一回だ。同じことしようとした時、新開が溜め息をつきながら言った。
「お前さ、さっきと同じことしようとしているだろう。だったら、やめとけ」
「なんでだ?」
「下手な鉄砲数撃てば当たるって、知っているか? どんなに下手くそでも撃ち続けていれば、いつかは当たるという意味だ。だが、それで当たるのは奇跡だろう。同じことをするってことは、相手に予測されてるってことだ。それが回避につながり、反撃にもつながる。だが、さっきの攻撃をするなってことではない。やるなら、ばれないように避けられないようにしろ。どんな攻撃にしろ、相手に読まれたら負けだ。相手の予想を裏切るような行動をしろ。そうすれば勝てる」
俺の考えは甘かった。そう思わずには、いられなかった。言うことは正しかったし、なにより、相手に読まれていれば、どんな攻撃も意味が無い。それを上回る行動ができるほどの実力はない。ならば、俺に出来る範囲の行動で、どう、こいつを倒すかだ。
「おっ、武器を使うのか? 禁止してないから別にいいけどな」
鉄パイプが置いてあったので、それを使うことにした。左手を握り締め、右手にそれを持つと、さっきと同じように突撃していった。
「行動が同じだと、読まれるぞ」
ああ、ここまでは同じさ。だが、さっきと同じと思っているなら、そこに勝機がある。握っていた左手から、石を投げた。相手が、弾くか避けるかをして足を止めていられれば、その間に間合いをつめ、一気に叩く。だが、その考えをスグに裏切られる。
「残念だが、予想範囲だ」
投げた直後、石等気にすることなく、向かってきた。そして一気に懐に入ると、そのまま殴り飛ばされた。
「足止めのつもりなら、甘いな。それに、想定範囲の攻撃なら、対策しようがある」
なんでもいい。とにかく、新開を倒すためには、行動あるのみ。
「フットワークか。しかし、動きが粗いな」
動きが読まれ、さっきと同じように、殴り飛ばされる。
「うおおおおっ!」
叫び声と共に、向かっていく。顔や体を狙わなくても、膝が地面につけば俺の勝ち。なら、足狙いで行く。足に向かってぶつかろうとしたとき、蹴り上げられた。
「足狙いに切り替えたとことで、意味は無いよ」
可能性を狙って、様々なことをしたが、意味はなかった。どの攻撃も掠りもせず、終わった。
「残り十分を切った。色々と試したけど、ダメだった。そんなにボロボロになっていては、そんなに動けないだろう。だから、諦めるんだな」
残り時間を見て、体の様子を見て、諦めることを進めてくる。残り時間も少なく、ロクに体も動かない。だが、諦めようとは考えなかった。
「まだ、諦めないのか? いい根性してるな。だが、それは、無謀と言うものだ」
フラフラになりながらも、立ち向かっていく久那森を、容赦なく叩きのめしていた。そして、さらに時間が経過した。
「残り、一分。どう頑張っても、お前に勝ち目は無い。これで、終わりだ」
新開は断言する。確かに、もう体がボロボロで、動くことすらやっとだ。意識もフラフラして、曖昧だ。
「残り十秒か」
新開が時計を見た瞬間、そのたった一瞬の行動を見逃さなかった。久那森が新開に向かって走り出す。「なっ!?」
新開は驚いていた。満身創痍でボロボロだったはずが、こんなにも動けるとは思ってなかった。 ガッ。鋭い蹴りが、顔へと放たれる。とっさにガードして防ぐが、攻撃が凄まじく、数メートル後退した。
くそっ、なんて蹴りだ。数メートル後退して、ガードを解こうとした時、目の前に久那森が近づいていることに気ずく。パンチを繰り出した久那森の攻撃をガードするが、力任せに地面へとねじ伏せる。地面に膝が着いた瞬間、時計のアラームがなった。そして、久那森は組織入団を認められた瞬間だった。




