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Vtuberの妹の中の人ですが  作者: 針坂時計


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21話

「わ~髪さらっさら~」


「肌白いわね。どんな美容液使ってるのかしら?」


「しかも、もちもちぷにぷにだぜこれ。永遠に触ってられるわ」


「ふふ。話には聞いていましたが、本当に小さくてかわいらしいですね」


あ、ありのまま起こったことを話すぜ。

おれはカラオケ大会の現場に来たら美女軍団に玩具にされていた。

うん、全員にこぷれのライバーさんの中の人なんだけども。

上から順に花村りのさん、如月橙子さん、桃崎らむさん、紫上柚葉さんだね。

みんなライバーの姿と中の人が似たようなイメージだなあ。顔がそっくりってわけじゃなくて、全体の雰囲気とかがね。紫上さんは着物でこそないけど和風美人だし、桃崎さんは地雷系というかパンクロリータみたいな感じ。花村さんは大人ガーリーな柔らかい感じで、如月さんはジャケットにパンツでピシっとした雰囲気。


「指で梳るだけで気持ちいい〜」


「え、美白美容液使ってないの? 天然でこれ?」


「うーん押せばもちぷに撫でるとシルク。これが若さか」


「こう、抱きしめるとちょうどいい大きさですね。はぁ、お持ち帰りしたい…」


うん、正直めちゃくちゃいい匂いとかするけどそろそろ解放して欲しい。あと紫上さんは自重してください。


「はいはい。愛ちゃんがかわいいのはわかるけどそのへんにしてあげてね」


レオナさんが止めに入ってくれた。

1期生のふたりとはこの前のカラオケの時にあってるから、これで全員とリアルで顔合わせしたことになる。

うん、タイプはそれぞれ違うけど、全員美人だ。VTuberじゃなくてモデルとか芸能事務所って言われても納得するレベル。こんなマンガとか小説みたいな展開あるんだなあ。自分だけ学生でちょっと肩身が狭い。



で、ここはにこぷれ本社の近くにあるレンタルスタジオである。人数が人数なので会社の配信ブースではなく、こういう場所を借りて配信することにしたらしい。ライバーさん以外にもスタッフさんいるし、機材の持ち込みとかもあるしね。

私が呼ばれたのはライバーさんへの面通しと、お披露目の予告のため。予告だけならオンラインでもいいので、面通しが主な目的だろうね。8人もいればスケジュール調整も難しいし、丁度いいタイミングだったんだろう。


みんなは私を弄り倒した後、打ち合わせと軽いリハに向かった。

…やることないな。お茶でも淹れるか。淹れるっていってもポットから注ぐだけだけど。

自分の分と、機材や配信の準備をしてるスタッフさんの分も紙コップに注いで配る。

期待してたわけじゃないけど、笑顔で「ありがとう」って言われるとやっぱ気分はいいね。ていうかスタッフさんみんな若いな。全員20代じゃないだろうか。

配信事業自体がビジネスとして成立して10年かそこらの若い業界だから、自然とスタッフさんも若手が中心になるのかもしれない。

一人のスタッフさんが、私が暇そうにしてたのがわかったのか、配信機材やソフトの設定を見せてくれた。こういうのも覚えていったほうがいいんだろうな。

ふむふむ、教え方が丁寧だなこの人。20代後半ぽい男性で左手薬指に指輪。既婚者か。

設定が終わって、そのまま談笑した。結婚2年目で、産まれたばっかりのお子さんもいるそうで。写真見せてもらったけどめちゃくちゃかわいかった。私が目をきらきらさせてると男性も満更ではなさそうな顔で、それをみた同僚さんに揶揄われてたりしてる。ライバーさん以外もいい雰囲気の現場みたいだな。



仕出しのお弁当でお昼を食べて、13時から開会配信スタート。

この後は各ライバーのチャンネルをリレー形式で回すらしい。そうすることで、リスナーの共有というか、同じ箱の他のライバーに興味をもってもらう機会を増やすんだそうな。よく考えてるもんだと思ったけど、こういうのは業界では定番だそうで。

まだまだ知らないことだらけだ。



「というわけで始まりました、にこぷれカラオケ大会! 今回はね、ゲーム大会のリソースを次回の開催分に回して、代わりにカラオケ大会となります! ゲームを期待してた人はごめん! その分楽しく盛り上がれる大会にするから、よかったら見てってね!」


『これはこれで』

『歌も好きやで』

『全員参加のカラオケって久々じゃね?』

『8人もいるとなかなか揃わんからな』

『セトリ期待』


「高評価数とアンケート投票で順位が決まりますので、よろしければそちらにもご協力くださいね」


「ライバーやスタッフのみんなの意見も入るから気楽に投票してもらっておっけーだよ~」


「終わりに色々告知もあるので、お楽しみにしててね」


「じゃあ、前口上はもういっか! 早く始めよう! わたしが歌いたい!」


「1番手は桃崎らむさんです。このままリダイレクトで移動しますので、そのままでお願いしますね」


「よし、早速いってみよう!」


凄い爆速で開会式が終わった。みんな早く歌いたいんだね。

レオナさんたちがこっちの隅にある待機ブースに戻ってきて、桃崎さんがひとりマイクの前に立つ。

…あの、ナチュラルに私を膝の上に乗せようとするのやめてもらっていいですかね、紫上さん。あなたもそんなに大柄ってわけでもないでしょうに。


スマホで見てた配信が、にこぷれ公式から桃崎さんのチャンネルに切り替わった。

さて、彼女はどんなのを歌うんだろうか。あのファッションだし、やっぱアイドル系かな?


「あたいの時間だァァァァァァァ!!!!!!!」


!?


「っしャァ!!! 桃崎らむのももいろタイム開始だァ! アゲてくぞお前らァ!!! あたいの歌を聴けェ!!!!」


『うおおおおおおおお』

『はい! はい! はい!』

『やっぱこれがなくっちゃあ!』

『桃崎らむ最強! 桃崎らむ最強!』

『初見なんですが何が始まるんです?』

『ももいろタイムだが?』

『お前も桃崎ワールドに染まっていけ』


うお、なんだこれ…よ、洋楽? バリッバリのハードロック(? 詳しく知らない)だ。

普段のアニメ声とぜんぜん違う超絶イケメンボイス。しかもめっちゃ上手い。あと発音が完全にネイティブのそれだ。


「びっくりしたでしょ」


いつの間にかお姉が隣に来ていた。


「かなり」


「ああ見えて帰国子女だからね、あの子」


「えっ」


「しかもアメリカ生まれのアメリカ育ち。だから英語が完全ネイティブ」


「ほへー…」


そうなのか。言われてみれば、自分の個性に真っすぐな気質は日本というより欧米に近い感覚かもしれない。日本語は日本人学校とかで覚えたのかな。

しかしそんな人がなんで日本で酒カスVtuberやってるんだろう…?



桃崎ワールドは続く。場が完全にあったまったらすかさずGAMプロで来た。アニソンもいけるらしい。


「でっけー声出していくぞォ! 窓開けろォ!! ご近所さんにはごめんなさいだ!!! っあい! っあい! っあい!!!」


『うおおぉぉぉぉ』

『ご近所さんごめんなさい!!』

『はい! はい!』

『とりあえずなんか書いとけ』

『はい! はい!はい! はい!』

『うるさい(褒め言葉)』

『暑いけどとっくにアツいからよし!』

『コメント欄がライブ会場すぎる』



気がつけばコメントはスタンプらしいペンライトや弾幕の絵文字で凄い勢いで流れてるし、周りのライバーさんやスタッフさんも立ち上がってコールや手拍子してる。

たしかに、それだけ引き込まれるものが桃崎さんの歌にはあった。


こうして、カラオケというよりはロックバンドのライブのようなノリで大会は幕を開けた。

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