51.楽しんだもの勝ち
「先に言っておくよ。多分だけどこの試合には勝てない」
始まってすぐりゅーさんがそう言い放つ。
それに続けてスーリンとアリサも
「そうだね。戦力がちょっと足りないかな?」
「まぁ、私たち最前線組スーリンしかいないしね」
と言う。
僕は知らなかったのだがこのチームはさっきの予選で優勝するのすら、かなり厳しかったらしい。
僕がいない間に戦ったという二チームも実際の戦力差でいえば、三倍以上はあったとか…
「だからね、今回はユーヤ君にどうするか決めて欲しくて」
「え、僕ですか?」
「まぁリーダーだからね」
どうするかと言われても何をどうすればいいのかが分からないのでどうしようもないというのが本音である。一つ言えるのは楽しみたいということかな??
まぁそれを言っちゃえばいいか
「楽しみたいです!」
「OK。そしたら隠れるのはやめてより多くのチームを潰しに行こうか」
「さんせーい」
「じゃー、ピーちゃんで探しとくね」
「みなごろし」
みんな乗り気で戦いをしようとする。
まぁ僕も隠れるよりは戦いたいからいいんだけど。
「前方に1チーム発見したよー」
「よし、じゃー行こうか。今回はユーヤ君が楽しむことを重点にするからユーヤ君は前衛ね!」
「え、でも僕が死んだら…」
「いいの!!みんなもう納得してるしね」
そう言われみんなを見るとスーリンは親指を立てて、アリサはそーだよと言い、レイナちゃんは首を縦に振ってくれる。
よし、それなら頑張って倒して行くぞ!!
そこからは僕達は何も考えず、がむしゃらに戦った。
僕以外の四人は既に二回死んでおり、僕もフェニックスの羽衣を使用しているので皆あと一度でも死んだらゲームオーバー。
しかしそのおかげで15チーム倒すという快挙を成し遂げた。それはアリサの上空からの指示、レイナの錯乱、りゅーさんの情報、スーリンの圧倒的殲滅力があったから可能だったことで、常にギリギリなのだ。
それに加え、レイナが初心者だと思われ先に攻撃されることが多かったのも、僕がここまで生きてこれたことに大きく関係しているだろう。
そして、残りは5チーム。
僕達はスキルの消費が激しく、皆あと一度でも死んだらゲームオーバー。
他の4チームがどうなのかは分からないがかなり不利なことは容易にわかる。
しかし僕達は最後まで全力で楽しむべく積極的に戦いへと向かう。
「前200メートル先に1チームいるよー」
「わかった。みんな残りのチームのことは考えずにとりあえず勝つことだけ考えて!!」
アリサが敵チームを発見し、りゅーさんが指示をする。
「りょーかい」
「わかった…」
「はい!!」
僕達は返事を返し、戦闘準備に入る。
そして、徐々に近づきついに目視できるぐらい近くなった。
「んー、強そうなプレイヤーは居ないけどここまで生き残ってるから強いスキル持ってるかも。
多分リーダーは中心の男!チェーン装備だから結構防御力低いよ、盾持ちは多分カウンター使ってくるからスーリンは攻撃せずにリーダー狙って欲しい。盾持ちはアリサのモンスターの数で攻める!」
「わかった。チェーン装備のやつね」
「りょーかい、みんな頑張って!!」
毎回敵を目視したらりゅーさんが的確な指示をしてくれる。
まずは敵のリーダーを倒し復活できなくする。
そして、そこからは力技で押したり、足止めスキルで倒していったりする。
それが僕達の戦法だった。
というかこのイベントに参加しているチームのほとんどがこういう作戦だった。
僕の役割はひとつ。
混乱している内に後ろからグサッとナイフで刺すだけだ。あ、それと回復。
まずは敵が気づく前にりゅーさんが霧を発生させる。
その中をスーリンがスキル『視覚強化』を行い走り抜け、一撃でリーダーと思われる敵を倒す。
次に空と地上からアリサのモンスターが盾装備の人に襲いかかる。
それを合図に僕が走り、敵の背後へと回る。
そして、霧が晴れた頃には敵は二人だけになっており、一人はスーリンがもう一人を僕が倒して勝利した。
呆気ないような感じもするが、一つでもミスをしたら即ゲームオーバーの可能性もあるので、それが成功した時の嬉しさも大きくみんなで喜びあった。
これで僕達は16チーム倒したことになる。
100チーム中16チームはかなりすごいのではないだろうか?
しかし僕達の無双タイムは終了してしまった。
アリサのモンスターもさっきの攻撃でかなり消耗してしまったし、僕も回復スキルは使えない。
スーリンはクールダウンのないスキルもあるのでまだ行けるらしいが、りゅーさんとレイナちゃんもほぼ全てのスキルがクールダウンが必要になっている。
実質スーリンしか動けないのだ。
そんな時に新しい敵が来た。
そして僕達は為す術もなく倒されてイベントが終了した。




