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私の答えにもっと疑問が湧いて来たみたいで、陽菜が訊いてきた。


「モギってな~に? おばあちゃん」

「結婚式場ではブライダルフェアというのが行われるの。その時にデモンストレーションを行うことがあるのよ。本当は他の方達にお願いしていたのが、インフルエンザにかかり急遽代役を立てなくてはならなくなったのよ。明宏さんの従兄がここに勤めていたこともあって、ブライダルフェアに参加する予定だった私達に白羽の矢があたったのね」

「それって嫌じゃなかったのか」

「嫌も何も結婚式場に予定よりも早めに連れていかれて着替えさせられたのよ。断る隙はなかったもの」

「両家の母親たちが乗り気だったのだよ。当日は神前結婚にすると決めていたから、チャペルで疑似体験ができると喜んでいたからね」


夫も当時のことを思い出してそう言った。あれは2月のことだった。私立大学の入試前だったけど息抜きよと、この日にブライダルフェアに行く予約をされてしまったの。本当ならもっと早い時期のブライダルフェアに行くものらしかった。でも、結婚に必要なあれこれは両親たちに任せていたもの。私が結婚式場で決めたのはドレスだけ。・・・いいえ、これも自分では決めていないのかしら。私が試着した中から母たちに強く勧められたものをえらんだのだったから。


「私もブライダルフェアに行きたかったですわ。私達の式は急に決まったからバタバタして、気がついたら結婚式になっていましたから」


朱美さんの言葉に二人の結婚式を思い出す。二人の式は朱美さんの妊娠が分かったことで急遽籍を入れて行われたの。本当に慌ただしくて、朱美さんはつわりが酷いものではなかったからよかったけど、そうでなければ結婚式は諦めることになったかも知れなかった。今思えば出産した後に改めて式をしてもよかったと思う。


陽菜が手を伸ばしてアルバムのページをめくった。次は卒業式前に行われた予餞会の写真だった。

各部活の後輩達が出し物をして、そのあとわが校恒例の『大告白大会』が行われるの。持ち時間はそれぞれ1分。マイクを2か所に用意して入れ代わり立ち代わりに言いたいことを言ったの。中には先生の悪口を言ってその先生に追いかけられたリ、真面目に告白をしてにわかカップルが出来たり、失恋したりと悲喜こもごもの時間だ。

この告白大会には3年生も出れるので、先に出場者を募って人数次第では抽選になると聞いていた。私も夫も出たことはなくて、皆の告白を楽しく聞いていたのだ。


「ええっ~!!!」


陽菜がページをめくって現れた写真を見て、大声を出した。息子と朱美さんと裕翔も驚いた顔をしていた。


「ど、どういうことなの~。おばあちゃ~ん、おじいちゃ~ん」


その写真はステージの上で白い膝丈のドレスに短めのヴェールをつけ手にはブーケを持った私と、白い学ラン姿の夫が並んでいるものだった。他にも神父の恰好をした校長先生と一緒に写っていたり、夫が私の頬にキスをしている写真まであった。


「これはな、余興にされたということだな」


夫はにこやかにそう答えた。


そうあの時、予餞会の告白大会を楽しんでいたら、前生徒会長がステージ上に現れたの。

そうしたら夫と私を名指しで呼び、クラスメイトに押し出されるようにステージ上に上がったのね。

そのまま別々に連行されて服を着替えさせられて、体育館の入り口に私は連れてこられた。

入り口には担任の先生(男)が待っていた。そういえば、今日の先生は珍しく背広姿でネクタイを締めているなと、朝に思ったの。


扉が開いて驚いたわ。真ん中にレッドカーペット(に、見立てた赤い布)が敷かれ、両側に別れて生徒が座っていたの。その中を私は先生に手をを預けて進んだわ。

ステージの下には白い学ランを着た夫が待っていた。そこまで来ると私は先生から手を外し夫の腕に掴まった。

二人で階段を上がりステージの上に立った。校長先生が神父っぽい服を着て立っている前に、二人で並んだ。


校長が真面目なのか不真面目なのか分からない言葉で誓いの言葉を促したり、指輪の交換(金色のモールを輪っかにしたもの)をした。そうしたら誓いのキスをというので、夫は固まった私の左手を取るとその指先にキスをしたの。


だけどブーイングが凄くて私達は困ってしまったの。

というか、だめよねえ。皆の前でなんて。


余りにブーイングが凄くて先生方が静まらせようとしたけど、生徒は誰も聞いていなかった。どうしようかと困っていたら、夫の手が私の両頬にあてられた。屈んできたと思ったら目の前に夫の顔のドアップがあった。すぐに離れたけど、そうしたら歓声と指笛で、凄い騒ぎになった。


前生徒会長が出てきて、彼の言葉で皆は静かになっていった。そしてピアノの演奏を聞きながら、私と夫はレッドカーペットを歩いて外に出て行った。


扉が閉まると同時に私達は脱力した。そこに待っていたクラスメートに連れられて、服を着替えに行ったけど、皆にさっきのキスのことを言われたの。夫が堂々とし過ぎだとか、なんとか・・・。


教室に戻ってクラスの皆から今日のことについて話しを聞いた。私達が婚約をしていることは皆知っていた。それで11月以降時々結婚式場に出入りする私達を、何人かが見かけたそうだ。結婚式が近いということが分かったけど、その話をしない私達に水臭さを感じていたそうなの。でも実際に結婚することが判って、もし招待をされたらどうするかという話になったらしい。皆まだ学生だ。招待をされてもご祝儀なんてだせないだろう。そういうこともあって、親戚だけで式をするのではないかと、推測したそうだ。


皆の推測は正しかった。高校を出たばかりで式を挙げるのだから、友人を招くのはどうしようかと、夫と話しあった。友人達に負担を強いるのもどうかということになり、親とも話し合い親戚とどうしても外せない仕事関係の方を招待することが決まったのだった。皆には4月になったら結婚の報告の葉書を出すつもりだったの。


最初はうちのクラスだけでサプライズをしようと動き出したそうなの。この予餞会が終わった後にクラスでプチウエディングをするはずだったとか。それが演劇部の子にヴェールがないかという話から、他のクラスの演劇部の人に後輩から話が伝わり、3年全体が知ることになったとか。


そこから前生徒会長が指揮を執ってのサプライズウエディングに発展したのよ。先生方まで巻き込んでの大騒ぎとなったのでした。


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