61章 招待状―――八百年・二月(三)
協定者との逢瀬を何処から聞いて来たのだろう。幼き女王陛下は、ある日突然墓場へ現れた。
「あ、私の事はお気になさらず。ああ、そうだこれ」
白い封筒の表書きは『招待状』。しかし、何故か差し出されたのは二通だった。片方の宛先を読み、車椅子の隣で事の趨勢を見守っていた教え子が目を丸くする。
「いるんでしょ、そこに」
真っ直ぐ人差し指が伸び、二人共思わず吃驚仰天。
「視線がずっとそっち向いてたから。簡単な推理だよ」
「クランちゃん、彼の事は」
「絶対内緒。分かってる、不真面目な女王でもそれぐらいは出来るよ。―――後一週間で何処まで聴けるレベルに仕上がるかは分からないけど、良かったら観覧しに来て。面白い見世物ぐらいにはなる筈だから」
「随分個性的なクイーンだな。先公の母親と良い勝負じゃねえか?」
全く同じ感想に強く頷いた。タイプは違うけれど、生きていたらママとさぞや気が合いそうだ。
封筒を受け取り、ありがとう、楽しみにしているわクランちゃん、車椅子の側面のポケットへ仕舞った。
と、空になった手を引っ込め、何故か彼女は踵を返す。
「?どうしたの?」
「勘の良い誰かさんに、練習を途中で抜け出したのがバレちゃったみたい。そう言う訳で私は孤独な逃亡者に戻るよ。じゃ~ね!」
手を挙げて城と反対側へ駆け出す少女を、勤務先から走ってきた衛兵が追い掛け始める。
「何処行く気ですか女王様!?戻って下さい!!」
「止めてー!私に乱暴する気でしょう、エロ同人みたい、エロ同人みたいにー!!」
「誤解を招くような事を微妙に大声で言わないで下さい!!」
まるでコントのような展開に、私達二人は思わず同時に噴き出してしまった。




