初ログイン、そして合流
「うっほぉー!!!」
白く輝く視界が開ければ、そこに広がるは沢山の人で賑わう、ファンタジー作品なんかでよく見るような中世みたいな街並み、『トースファ』と呼ばれる最初の街だった。
ヒト、獣人、エルフ、魔人、蟲人があっちこっちに動いていて、見ているだけでとても忙しくなりそうな光景で、とても興奮してきたよ!
あぁ、遂にアストラル☆トラベラーの世界に来れたんだ!サービス初日なだけあって、マジで人酔いしそう。しないけど。
『おい友よ、今どこだ』
お、真弐からDM来た。どうやらあっちも無事にログイン出来たみたいだね。
『ついさっきログインしたばっかだから、今は街中なんだよね。確か、トースファの真ん中に噴水広場があるからそこで合流しようよ』
『おけおけ。丁度噴水広場に着いたばっかだから、お前が来たら分かるようにしておくよ』
『アライグマ』
『?………あ、そういうこと?理解した瞬間吹いて周りか引いてったじゃねえかどうしてくれんだコノヤロー』
『じゃまた後で~』
『逃げるな』
……よし、向かうとしよう。
トースファの中を歩き始め、色んな人達とすれ違っていく。
カブトムシみたいな蟲人がノシノシと歩いてて、巨大な剣を背中に携えたヒトが店主に何かしら値切ってたり、装備を整えた魔人とエルフが一緒にトースファの外へ行こうと息巻いてたり、ネコの獣人がご飯を食べてたり。
そんな光景を横目で眺めていくだけでとても楽しいのに、トースファのあちこちからとても良い匂いが漂ってきて、夕飯を食べたばかりのお腹が空いてくるのを感じる。本当に最近のVR技術の進歩のすごさを感じるよこのゲーム!
「お、着いた着いた」
とか思ってたら、合流場所の噴水広場に到着。
教室にすっぽり入りそうなくらいの大きさの噴水が、水のアーチを作り出しててとても幻想的だ。気のせいじゃなければ、涼しさも感じるね。
おっと、噴水の凄さに驚いてる場合じゃない。えーと、真弐はどこだ?僕が来たら分かるようにしているって言ってた………け、ど………。
「…………」
「……あれだと認めたくないなぁ…」
エルフ特有の長い耳も、獣人の毛並みもなく、蟲人みたいな感じでもなく、魔人のような角もないから、多分ヒトなんだろう。金髪だけど。
腰には弓矢をぶら下げてるが、その他にフライパンがある。多分あれはスキル【料理人】の副産物だろう。あいつ、定食屋の子供だからこのゲームでも料理したいって聞いてたし。
……そんなヒトが、『迷子の新米ライバーを探しています。さっさと来やがれコノヤロー』って書かれたボードを持ってたら……ちょっと、いやかなり声を掛けたくなくなってしまう。
あ、目が合った。こっちに近づいてきた。
「……お前か?」
「はて何のことやら」
「……アライグマの件に関して何か申し開きがあれば、明日の昼飯は半額にしてやる」
「大変申し訳ございませんでした」
「反省っ!」
「あいったぁ!?」
拳骨された。とても痛い。
でも、これで目の前にいるやつが真弐だというのが分かった。何とか合流出来て良かったネ!
「ったく……。で、お前のプレイヤーネームは?」
「イツリハでーす。そういう真…YOUは?」
「シン・リョウリニンだ」
「嘘でしょ……?」
「流石に嘘だわ。ネクスツーだよ」
「それもそれでどうかとイツリハ思うわけ」
いや、本当に名前それでいいのかなぁと思うの。ネクストとツーを混ぜ合わせたんだろうけど……ネクストって次って意味だし……名前と合ってない……。
何?真を新にして英語にしてネクストにした?普通に真だけで良かったんじゃ……いやまぁ、もう名前は変更できないし、気に入ってるんなら良いんだけどさ……。
「というか、ヒトにしたんだ」
「料理人足るもの、獣人は毛が入るから論外だしエルフは男じゃなくて女子の方が見栄えがいい、魔人は気分じゃないし蟲人も獣人同様論外。最終的にこうなった」
「エルフと魔人はお前のさじ加減じゃん!」
確かにエルフは女子の方が可愛いし綺麗だけどさぁ!折角のゲームなんだからヒトとは違う感じにしたいという気持ちは出てこないのかぁ!?
「そういうお前は……サモエド?」
「サモエドって可愛いよね。ワンワン」
「お前は可愛くない」
「なんだ、戦争か?」
軽く……軽く?雑談した後、今度はスキルの見せ合いっ子だ。
召喚士になることは事前に伝えていたからその辺の反応はなかったけど、剣術スキルも取ってたことには驚いてた。だって面白そうだし。動画映えしそうだし。
さて、真弐がゲットしたスキルは~…?
「【料理人】と【弓術】は言ってた通りで~……【水魔法】と【炎魔法】。二つ取得したの?」
「料理人としてその辺は必須だろ」
「確かに。で、【鑑定】に【索敵】と……」
残りは【筋力強化】に【視野強化】、そんで……?
「この【瞬間上昇】と【魔法壁】ってのは?」
「最初のはHPもMP削って発動するやつで、数秒間だけ攻撃も防御も速度も大幅上昇するやつ。ただし、反動として数分間使えなくなる。んで魔法壁はMP削って魔法攻撃によるダメージを減少させてくれるやつ」
「ほうほう」
とことん後方支援って感じだね。で、隙をついて瞬間火力をぶっぱなす……コンセプトとしてはそんな感じ?
…………ていうか。
「弓術と魔法選んだなら、エルフにすれば良かったのに……。その方がぽいじゃんか。確かエルフだと弓術と魔法、レベル上がりやすい補正があるはずでしょ?」
「プライドに関わるので無しです」
なんだよそのプライド。そんなプライド捨てちゃえよ。
いやそもそもどういうプライド?
「俺の話は良いんだよ。で、どうする?このまま外行ってモンスターと戦う?」
「ん〜……。そうしたいけど、その前に召喚したいんだよね」
「あぁ、そういやサモナーになったんだもんな。じゃあそれしてから行くか?」
「そうしましょ〜。てことで……」
一先ず移動する。公共の場でモンスター召喚するのは迷惑になりかねないので、とある施設の中で行う事に。
「おぉ〜、すっげぇ人で賑わってる!さすが『ギルド』だねえ!」
「料理の練習も出来るのか。すごいなここ」
たどり着いた場所はギルド。
ここで、依頼を受注してお金を得たり、倒したモンスターの素材を売ったり、飲み食いしたり、得たスキルの練習が出来たりする。
要は見てて飽きない楽しい場所!
早速受付に向かって個室を借りることに。1時間だけだったら無料で使えるということで、そこを使います。
これで問題なし!
早速個室に到着したので、受付で貰った鍵を使って中に入る。
部屋の中は、案山子が置いてたり的が遠くに設置してあったりと、なるほど練習にはもってこいな感じだった。
「よっし着いた!さてさて、準備準備〜♪︎」
「おー。確か初回限定で無償で召喚出来るんだっけ?」
「そうそう!それも、☆3以上確定!」
召喚できるモンスターにはランクがあって、それが☆として数値化されて……まぁ詳しい話は召喚が終わってからにしよう。
「……ん?なにしてんだ?」
「配信準備。ヨシ、準備完了!」
「あ、準備ってそっちの方?」
あぁ、ワクワクするなぁ!
既にチャンネルは作ってて、このアバターアカウントと接続してる。既に配信準備は整ってて、残すはボタンを押すだけ!
「基本は僕が全力で遊ぶ!真……ネクスツーは時折でもいいから遊びに来る感じで!」
「あぁ、その辺配慮してくれたんだ?」
「定食屋の手伝いがあったりするやつに迷惑掛けすぎてもね。じゃ、配信するよ……!」
配信開始のボタンを押す。
それと同時に、目の前に僕と真弐が映る画面が出てきて、横にはコメント欄が現れる。
配信が始まった!
僕は予め作っておいた挨拶を、元気よく出した!
「こんイチワーン!今日からライバーデビューした、サモエドサモナーライバーのイツリハでーす!今日から元気に、世界駆け回りまーす!!」




