プロローグ
『ライバーデビューするから付き合え!!!』
『オッケィ!』
『流石だ心の友よ』
僕、西条壱莉は友達である東真弐のDMにそう送った。
すると一瞬で気さくな返事が返って来た。持つべきものは小学校以来からの友達だね!
っと、真弐からまた新たな返答が。なになに?
『今更だけどなんでライバーに?』
確かに理由は伝えてないな。こういうのはちゃんと教えておかなきゃね。報連相、大事。
『高校受験合格おめでとう記念で、親から一緒に【アストラル☆トラベラー】買ってもらったじゃん?』
『おう』
『一緒に遊びたいじゃん?』
『おう』
『でもどうせ遊ぶなら、楽しんでる様子を見てもらいたいじゃん?』
『おう』
『ライバーになるのが手っ取り早いと思わない?』
『妙案だな』
『理解が早くて助かるよ心の友よ』
【アストラル☆トラベラー】とは?
今年発売されたばかりのゲームで、ジャンルはVRMMO。
剣と魔法のファンタジー世界を、専用のヘッドギアを装着することでまるで現実と同じような……いや、それ以上の体験を味わう事が出来るゲームとして、CM等を通してものすっごい人気を集めていたゲームだ。オマケに味も匂いも触感なんかも完璧に再現できるそうな。
そんなゲームが発売されるとあっては、まだまだ遊びたい盛りの僕らは、絶対に欲しい代物だ。それはそれはもう頑張って高校受験に取り組んだ。その甲斐があって、何とか二人揃ってゲットできたのだ。
それと同時に、僕は前々からライバーになりたいという願いがあった。
色んな動画サイトで、自分のやりたい事に一直線に進んでいくその姿勢に憧れた。ゲームに一喜一憂して、一緒に考えて攻略していったり、ネタバレ食らいそうになって文句言ってたり。
そういう………なんだろう、一緒に突き進んでいく感じ?が味わいたかった。
……あとついでに遊びながらお金も欲しいし……。
そういう訳で、配信に必要な機材もこれまた合格記念として買ってもらった。うん、両親は僕に甘い感じもする。次の二人の誕生日の時に何か気の利いた物をプレゼントしなきゃ。
『配信準備はできてるのか?』
『ヘッドギアに同期する事で色々できるみたい。便利だね』
『じゃああとはログインするだけ?』
『そういう事です。まぁ今日からサービス開始だから、人とか多いだろうし、ライバルライバーもめっちゃいそうだけど……まぁ、うん。何とかなるでしょ!秘策もあるし!』
『んじゃ、早速遊びますか』
『応とも!』
真弐と軽く話したあと、早速ゲームカセットを挿入したヘッドギアを装着した。さぁ、ドキドキワクワクの冒険が待っている……!ログイン、スタート!
《ログイン完了。アストラル☆トラベラーへようこそ!》
「おぉ~!」
目の前に広がるは見渡す限りの大草原!
………なんてことはなく、0と1が入り混じる質素な空間だった。まだゲームスタートではないみたいだ。
とここで、アナウンスの声が響いてくる。機械音声が某歌姫みたいな感じで非常に良き。
《ここでは、貴方の分身であるアバターを作っていただきます。では始めに、貴方の分身に名前を付けてください》
「名前か……。これはもう決めてるんだよねぇ~」
目の前に表示された入力ボードに、『イツリハ』と入力する。ちょっと名前に一文字付け足した程度だけど、まぁ下手に凝った名前を考えて恥ずかしい思いするよりはマシでしょ!
おっと、性別も決めなきゃ。男か女か、或いは無性別に変更できるけど……ここはまぁ、普通に男でいいでしょう。ネカマとかライバーっぽいけど、そういう度胸も設定もないので、ここはスルーしまーす。
《次に、種族を決めてください》
次に種族決めか。種族によっては、攻撃力が高かったり防御力が高かったりするけど……どれどれ?
「ヒト、獣人、エルフ、魔族、蟲人族かぁ……」
何々?ヒトだとオールラウンダー型で、獣人は一部を除きパワー型、エルフは魔法特化型で、魔族は魔法寄りのオールラウンダーで、蟲人族がスピードが速く、オマケに防御力も高い種族……ふむ。
「こういう時はルーレット~」
迷うなら、天に任せろ、ホトトギス。
という事で、ヘッドギアに接続してるパソコンからルーレットが出来るサイトに飛び、種族5つ書いて……ルーレット、スタート!
でれれれれれれれれれれれ、でん!
「選ばれたのは、獣人でしたー。わーパチパチパチパチ」
という事で獣人種を迷わず選択!次は……え、何の獣人か選べ?……これは予想外でしたなぁ…。
「ん~……うわ、どれ選んでも面白そうだなぁ……配信映えしそうなのは……お?サモエド犬いいな、尻尾モフデカでインパクトがデカい。これにしよーっと」
という事で、獣人はサモエドタイプ!思ったより尻尾がデカくて面白いねぇ。あとでセルフもふもふしたろ~っと。
《次に、キャラクターのデザインを決めてください》
お、キャラクリのお時間ですな?
基本は僕の顔を弄り回す感じだね。なら……ん~、どうしようかな。
「髪の毛の毛量をちょっと増やして、さらに犬感増やして……サモエドっぽい印象強める為に、髪はもう真っ白にしちゃおうかな。肌色は~……そうだな、小麦色にして白髪がより際立つ感じにしよう!目は……ちょい垂れ目気味の方がウケいいのかな?あと、目の色変えよ。……いや、サモエドなら黒のまんまがいいのか。やっぱ辞めた」
ライバーとして活動するため、ちょちょいと自分のアバターに改造を施して……真弐からはバカ笑いされそうな気するけど、拳で黙らせれば解決するので問題なし!
……ついでに、身長も本来より低くする。その方が犬感出るかもだし。普通は逆に伸ばす方がいいのかもしれないけど、それは二流の考えってもんですよ……!!
《次に、初期スキルを10個選択してください》
次はこのゲームを遊ぶために欠かせない、スキル選びの時間だ!正直、ここで沢山の人がうんうん悩むかもしれない。
でも、実は僕、最初に選ぶスキルは既に決めてたりするんだよねぇ。
「まずは、【召喚士】スキルをゲット!」
召喚士。それは、モンスターを召喚して戦わせることだ。
なんでこれにしたのかというと……ロマンです。男はロマンに弱いんです。モンスターを使役して戦わせるなんて、ロマン以外に何か理由が必要ですか!?ないですよね!?はい論破!てことで次!
「モンスターだけに戦わせるのもあれだし、【剣術】と……火力はあって防御もそれなりにできる【土魔法】を習得しようかな。そんでもって……」
たっぷりあるスキル欄の中から、色々悩んで悩んで悩みまくった結果―――
【召喚士】【剣術】【投擲】【土魔法】【回復魔法】【地形把握】【薬剤】【簡易製作術】【足場作成】【釣り】
―――こうなった。まぁ、良い感じじゃない?
召喚士は後ろで指示出してるだけなのは何というか、配信映えする感じがしないので、自分から積極的に狩りに行くスタイルも織り交ぜた。んで、相棒モンスターを助ける名目で、回復魔法とか地形把握、薬剤なんかもゲット。簡易製作と足場作成もそんな感じ。釣り?面白そうだからゲットしてみた。一つくらいネタに走っても大丈夫でしょ、多分。そこまで鬼畜なゲームじゃない筈だし!
《―――以上で、アバター作成を終了します。最後に、こちらで問題なければ、そのままOKボタンを押してください》
改めて映し出される、僕の分身となるアバターを眺める。
身長は大体160あるかないかくらいで、ピンと立った犬耳がピクピク動いていて、雪みたいに真っ白な髪をウルフカットにしてる、小麦色の肌がその白さをさらに際立たせてる。あと、目が垂れ目になってて自分で言うのも何だけどキューティー。
そんで、如何にも村人Aみたいな質素な服を着てて、腰に武器となる剣がぶら下がってる。あと、もっふもふなデッカい尻尾がフリフリと動いてる。
そんなアバターの出来に……僕は、大変満足してらっしゃいます。えぇもう、自画自賛レベルです。100満点中、1億点叩き出しました。わーパチパチパチパチ~。
という訳で、OKボタンを押しました。
《お疲れ様でした。それでは、アストラル☆トラベラーの世界をお楽しみください!》
アナウンスと共に、0と1の世界が白く輝き始めていった。
ここから先が、ゲームスタートのようだ。
あぁ、胸がバクバクする!新しい世界への旅立ちって、こんなにも心躍るものなんだ!
「絶対に大バズしまくるライバーになって、世界中を湧かせてやるぞー!!!」
声を大にして、僕はアストラル☆トラベラーの世界へと足を踏み入れた―――!!




