小さい奴らの大無双(3)
その頃、シルバスとソルジャーもデーモンと衝突。
「硬ぇな…」
剣と爪がぶつかり合い、金属音と火花が飛び散る
『!』
ソルジャーの1発がデーモンの肩を撃ち抜き、デーモンが苦悶の咆哮を上げる。
「不条理だろデーモン! あんな人形の攻撃が痛いなんてなぁ!
オレも同じだ!」
シルバスが近接で隙を作り、ソルジャーが魔法攻撃を放つ隙を潰す。
「だが、もっと反則なのはこれからだ!」
小瓶を軽く投げ、剣で切って刃に浴びせる。
クロスエイドから受け取った付与油を。
「よそ見すんなよ!」
一方、ダンジョンが作ったものか、デーモンの魔法か、展開しっぱなしの魔法陣からゴブリンが次から次へと湧いてくる。
「くそっ、キリがねぇ!」
「ここまでか…」
「コケっコココッ!」
「「「コケェーーー!」」」
兵士たちの横を白い丸が通りすぎると同時に、まるでボウリングのピンかのようにゴブリンたちが吹っ飛ぶ。
「なんだ!?」
「増援! ってコッコ!?」
『…ジャマ!』
吹き飛んだゴブリンの外周を黄色い残像が通り抜けると共に、ゴブリンの全身に無数の傷が入る。
1匹と4羽の完全な連携に、前にいたゴブリンはあっという間に一掃されたのである。
「い、今のうちに負傷者をつれて下がるぞ」
「おう! お前達すまない! ちょっとの間、持ち堪えてくれ!」
「負傷者をこっちに!」
「急げ!」
カラアゲ達が向かった方角から負傷者を抱えて何人か走ってくる。
「子供!? こんなところにいたら危ないぞ!」
「バカやろっ! この子達に助けられてるんだよオレたちが!」
「は? お前何言って…うわぁ!」
突然、岩壁に何かがぶつかった音がする。
次の瞬間、地面に深々と刺さる鎌の刃のようなものーー爪だ。
壁の向こうで見えないが、父さんとソルジャーが確実にダメージを積み重ねている証拠だと理解した。
「オレたちはあのコッコに加勢に戻る。 ここは頼んでいいか」
「待ってください。 お2人がもっている剣も槍も、もう限界です。」
「それでも行くしかない。 護衛対象を最後まで守るのが兵士の役目だからな」
「その覚悟は立派です。ですがもう少しマシな装備をもっていってください」
兵士たちを引き留め、近場に転がっていた盾や剣を次々に白いキューブに吸わせていく。
「錬成開始」
緊急事態だから出し惜しんでいられない。
「必ず戻ってきてくださいね」
キューブから吐き出された剣と槍を渡す。
「元通りに…なった」
「ありがとう。 君も気をつけてな」
「はい。あとこの棒を僕の従魔達に渡してください。 身一つで戦うのもそろそろ限界のようで」
「えっ あいつら体術だけで戦ってたのか!?」
「とにかく行くぞ! 必ず届けるからな!」
「そっちは頼んだぞ!」
心身ともに復帰した兵士に武器を持たせて送り出し、僕はまたヒーラーとしての役目を全うする。
そして前線
「月弧! そこだっ!」
デーモンの爪による斬撃を弾き、反動を利用して身を翻して腕を斬る。
その隙を逃さずソルジャーが急所の可能性が高い角、右目、口をビュンビュンと撃ち砕き、流石のデーモンも大きくよろめく。
「今だ!」
一気に踏み込み、剣を振り下ろす。
胸部の硬い外皮が砕け、赤く強い光を放ちながら鼓動を打つモノが露出する。
「シロすけ! そこだ! キッチリ決めやがれ!」
『!』
「!」
喧騒の中、その声は僕にも聞こえた。
まるで、ソルジャーと感覚が一瞬だけリンクしたかのように。
相棒が僕の言葉を待っている…と
「ここお願いします!」
「ちょっと待ちなさい! 危ないわよ!」
岩壁から出て叫ぶ
「ソルジャー! 無限光弾幕!」
『!!!』
ソルジャーの目がキラン!と光り、エネルギーを銃口の先に集める。
「ちょちょちょちょちょ! オレまだいるって!」
父さんが慌てて離れる。
その間に巨大化し、わずか数秒でバランスボール大になった魔力球はトリガーを引くことでデーモンのど真ん中ーー核を目掛けて容赦ない光弾の雨を降らせる。
心臓どころか胴体を失ったデーモンの身体は音もなく砂粒のように崩れ落ち、階層全体を覆っていた黒い魔力が霧のように消えていった。
「終わった…?」
「…生きてる…」
「オレ達…生きてるぞ…!」
誰かがそう声を上げたと同時にあちこちで立っていた者が膝をつく音が聞こえる。
「助かった…」
「本当に…もうダメかと思った…」
フロア全体に安堵の声が広がった。
僕もヘニャヘニャとへたり込む。
「よかった…」
『♪』
「コケッ」
「コケコケ」
「ケケコッ」
「コッコケ!」
『アルジ…タダイマ』
カラアゲ達、ソルジャー、コングも戻ってきて、メープルが僕の肩に乗り、赤く目を点滅させたソルジャーが目の前まで進んできて、力無く僕の手の上に落下する。
「みんなお疲れさま。 本当に助かったよ」
「なんとかなったな。」
「はい…父さんもみんなも無事で良かったです」
父さんの手が僕の頭に置かれる。
「まったく…とんでもないことばっかりやってくれるバカ息子だなお前は。」
父さんの顔がいつもの父さんの顔に戻りつつあるのを見て、僕はホッと息を吐いた。
ゴゴゴゴゴゴゴ…
「なんの音だ?」
「父さん、後ろ…」
フロアの奥、デーモンが守っていた壁の一部が軋みながら横に開き始める。
グゥォォォオオオオオーーーーー
「あの音…」
「まだ…終わりじゃないってことか」
戻りかけていた父さんの表情がまたこわばる。
僕も、仲間達も自然と扉の奥を見つめていた。




