小さい部隊の大無双(2)
ダンジョンに突入する。
中は真っ直ぐ続く岩の洞窟。
倒された魔物の死骸はダンジョンに吸収されるらしく、もう無い。
たまに魔物と遭遇するが
「お前たち、やってみろ」
「「「「コケェーーーー!」」」」
「次はメープルな」
『メープル…ヤル!』
父さんの出番はない。 もちろんソルジャーとコングの出番も。
「何も…心配する要素がないですね」
「あいつらならそんじょそこらの低ランク魔物に苦戦することはない。
それに向こうもモルヴァインの私兵が護衛についてるし、トラップも、ほら」
壁の至る所にチョークで円を描いてある。
確かに、よく見れば周りの壁より出っ張ったりへこんだりしている。
「さすがはダンジョンのプロってわけですね。 察知は完璧だし、踏みそうな起動装置は入念に無効化してあります」
「はぐれたのがいるとしたらさっきの1人とボス部屋付近ってところだな。」
階層を降りる階段までほぼノンストップ。 だが、
グゥォォォオオオオオーーーーー!
「!!」
「!!」
階層を貫くように響き渡る轟音。 あの時、村で感じたのと同じ圧を感じる。
「ビックリしたぁ」
「大丈夫か」
「はい。 みんなは」
従魔たちを確認する。 流石の大きな音に驚いて転がってはいるが、声をかけると大丈夫そうな返事が返ってくるので下の階層に降りることに。
「父さん、止まってください」
「どうした」
「ここ、調べてもいいですか」
僕が示したのは壁に開いた穴。
「そんなとこ調べてどうするんだ」
「下から上に向かって空気が流れてるんです。 もしかしたらボスのいる最下層につながってるかも…」
僕の膝くらいの高さにあいた穴へ耳をすます。
「人の声が聞こえます!」
「どけっ …確かに人の声だ。距離は2階層以上離れてそうだな」
「この穴のサイズなら、いけるか。」
「お、お前まさか…階層を!?」」
「そのまさかです。 ソルジャー、この穴の先に行って天井をぶち抜いて!」
『…』
「ちょ待て待て待て!」
父さんの静止も虚しく、ソルジャーは穴の中へ身を投じる。
15秒ほどたった頃、僕たちのいる階の床を見慣れた小さな魔力の弾丸が1発! 2発!…と突き抜ける。
「下がってください」
「こんな雑な探索する奴はどこ探してもお前だけだぞ…」
次第に弾痕は床に円を描き、円の真ん中に一発空いたその瞬間、床が音を立てて崩れる。
「わぁ~びっくりした。 さっ 降りましょう」
「なんでそんな淡々とリアクションして次に進めるんだよ!」
来た時に使った魔法の絨毯を使って階層を安全に降下していく
舞い上がる粉塵、飛び交う怒号、血と火炎の匂いが鼻をつく
「…ひどい状況…」
倒れた人、無数に湧いたゴブリン、あちこちから血を流しながらも戦う兵士たち。
初めて目の当たりにする戦場の空気は、僕の思考に衝撃を与えるには十分過ぎるほどだった。
「ぐっ…!」
「まだ立てる奴はいるか!?」
「誰か回復魔法を!」
調査団と兵士たちは壊滅寸前。
両手で数えきれないほどのゴブリンの波に押しつぶされ、残りわずかとなった戦力では全滅など時間の問題であった。
「あれが元凶か」
父さんの声が重く響く。
ゴブリンの奥、壁のように見えていた巨大な影が、ゆっくりと姿を現した。
デーモン。
赤紫がかった黒い外皮。岩を削るような鋭い爪。ひと目で“普通の魔物ではない”と分かる異様な存在感。
そこに立っているだけで、場の空気がぴりつくように張り詰める。まさしく、この異変の中心だった。
父さんの手が無意識に剣を抜き、稽古で見たことのない構えに、ガチの臨戦体制をとる。
デーモンが腕を振り上げ、黒い炎を放つ!
「伏せろ!!」
間に合わない!
「コング!」
『!!』
僕の肩から腕を駆け抜け、人とデーモンの間に入って鍬を振り下ろす。
地面から岩壁がせり上がる。
黒炎が岩を叩くが、爆散。
岩壁も4割ほど消し飛ぶが、かろうじて立っている。
「なんだ今の!?」
「ロックウォール…一体誰が…」
コングの生成した壁が防御として機能することを確認した僕は仲間たちに向けて叫んだ。
「ソルジャーは父さんの後方火力! コングは防御壁を作ってセーフティゾーンを設営!
メープル、カラアゲ、タツタ、ロースト、ナンバンはゴブリンを倒しながら避難誘導、セーフティゾーンへの退路を確保して!」
『…!』
『! ♪』
「コケコッ!!」
「コケココッ!」
「コケェーッ!」
「コケコッ、コケッ!!」
『メープル…ミンナ…タスケル!』
仲間たちの返事を受け取り、ポケットから1本の瓶を取り出す。
「父さん、僕たちで後ろは繋ぎ止めます。 “これを“」
「あぁ。 前線はまかせろ! そっち頼んだぞ!」
「はい!」
コッコたちは特製の木の棒を構え、メープルは羽音を高めて全速力で、父さんとソルジャーはゴブリンの波を高々と飛び越えてデーモンへ。
「…よし。 コング!」
コングを下げて、僕も負傷者の元へ駆ける。
「大丈夫ですか、分かりますか!?」
腹部から血を流して倒れている人に回復薬をかける
傷が塞がるのを見る間も無く次の人へ
「使ってください」
「小僧、助かる…」
「そこのお兄さん、これを」
「もらった!」
「こっちにも2本くれ!」
「ごめんなさい投げます!」
「おっし!」
回復薬の数は足りるが僕1人で見るには怪我人が多過ぎる。
行儀が良いだの悪いだの言ってもいられないので、動ける人に手渡し、時にはアンダースローで投げ渡し、1人でも多くの人を助けるために最善を尽くす。




