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幸せプリンは黒い味!?(3)

1週間後

「こっちがエルク村、こっちがニーハ村、これがもう1カ所ですね。」


母さんの目の前に蓋付きの木箱を並べる。 アイテム袋と同じく中の容量を広げてある木箱にはその見た目からは想像がつかない量が入っている。


「用意した物のリストです。 アルフ兄に代筆してもらいました」

「確認するわ」


僕から受け取った紙面に目を通す

指を動かしながら上を向いてブツブツ言っているのは多分、供給と消費のバランスでも計算しているのだろう。


「そうね、これだけあれば1ヶ月どころか2ヶ月、やりようによっては3ヶ月は保つと思うわ」


合格をもらえたことにホッと胸を撫で下ろす。


「ちなみに聞くけど…苗の方はどれくらい魔改造したのかしら」

「成長速度は1.5倍、自然影響への耐性が2倍となってます。」

「なかなか手厚いこと…」

「そこまでに調整するの苦労したんですよ。 なんせ僕の付与魔法って少数が絡むと加減が難しくなるんですもん、3倍にするより半分の1.5倍の方が難しいってどういう構造してるんだか」

「それは知らないけど…自然影響への耐性ってあれかしら? 雨がどれだけ降ったかとか、寒さで成長が妨げられたりみたいな」

「認識としてはそれで十分です。 もし場所に原因があるならそこも防いでおいた方がいいですし、日持ちもするんで。 ただ…デメリットもあります」

「下に書いてあるコレのことね。 『普通に育てた方が美味しい』『青臭いのが嫌い』『芯が固い・歯応えが強過ぎる』…」

「いっぺんにたくさん作ったせいかあまり美味しくないみたいで、しっかり煮込んで味付けをすれば食べれるんですが、こっちの世界の味付けでは臭みが残って子供の口には合わないんです」

「メリットがあればそれに見合うだけのデメリットがあるのは当然よ。特に今は贅沢言ってられないわ」

「いえ! 子供がいるご家庭用には別で村の人たちから分けてもらった分を用意してるんで、そっちを。」


思わず語気が強くなった僕に驚き、少し目を見開く母さん


「あ…すみません」

「いいのよ。 でもその考えって、やっぱりそういうことかしら」

「病院で食べてたご飯ってあまり美味しいと感じたことがなくて…。

大人にとって食べれるものであっても、子供が食べて美味しくなければ食べたいとは思えない。 食べたいと思えなければ生きる力も生まれない。

見ず知らずの大人を助けるのは気が進まないけど、腹を空かせた子供から希望を奪うことはしたくないから。」

「そういう考えもあるのね…でも助かるわ。 おかげでスムーズに事が進みそうよ」

「俺に…いや、僕たちにできることはしました、あとの交渉はお願いします。」

「えぇ、任せて。 責任もって預かるわ」




さらに数日後、母さんが帰ってきた。 たくさんの依頼報酬を携えて…


「コケッ!」

『アルジ…』


「母さん…この子たちは一体?」

「コッコと蜂、それぞれの代表者よ~」

「現物ではなく生産元が来た…」

「もちろんタマゴとハチミツはもらったわよ~。この子達はなりゆきで来ることになったのよ~」

「どうしてなりゆきで生産元まで連れて帰ってくる話になるんですか…」

「実はねぇ~」



母さんの話をまとめると…

前もって母さんと取引相手を護衛するよう命令しておいたソルジャーを同行させていたところ、エルク村の近くで遭難していたコッコと村の子供がゴブリンに襲われており、命令を拡大解釈して実行。

はぐれたコッコを助けたという恩義で何羽かのコッコがついてくることに。


ニーハ村では、不作の影響で蜂の数に対して花が育たず、このままだと見殺しにすることになるから引き取って欲しいと打診を受けた母さんが魔法で花を咲かせてやったところ、蜜が大変気に入ったらしく、母さんについてきちゃったらしい。



「って訳で連れて帰ってきちゃったの~、私からの報酬だから受け取ってちょうだい♡」

「なんか大事になった気がするけど、村で卵と蜂蜜が手に入るのは嬉しいし、いっか! これからよろしくね!」


「コケっ!」


ブ~~ン♪

『アルジ…』



「卵と蜂蜜かぁ、作れるものが一気に増えるなぁ。 何をつくっ…」

「どうしたの?」

「プリン…食べたい…」

「ぷりん?」


ソラ姉が首を傾げる


「すっごく甘くて美味しい…幸せの食べ物です。 せっかくですし作ってみましょう!」






場所を変えて台所に。


「卵はある、砂糖の代わりに蜂蜜を使うとして・・・」


まだこの村に牛乳はない、でも


「牛乳がなければ豆乳で作ればいいじゃない…ってね」


まずは大豆と水を混ぜて・・・


「錬成!」


生豆乳ができた。 これを鍋に入れて弱火で加熱する。 少し経つと表面に白い膜ができるので取り除く。


「ソラ姉、前やったみたいに冷やしてもらえますか?」

「オーケー! 甘い物のためなら特大魔法でも使える気がするわ!」

「いや、そこまでされると…」

「分かってるわよ、ちょっと冷たいくらいでいい?」

「お願いします」


次にボウルに卵を割り入れて蜂蜜を目分量で流し入れる。

泡立たないようにゆっくり、でもしっかり混ぜる。


「もっと早く混ぜないの?」

「泡立つと口当たりが悪くなるらしいんですよ」


混ぜながら少しずつ豆乳も加える。

完全に混ざりきったら液を布で濾してプリン液は完成だ。


「もう完成か!?」

「いえ、まだです。 プリンの幸せの秘訣はここからが難しいんです!」


蜂蜜を弱火で煮詰める。 焦げやすいのでヘラでこまめに混ぜる


「濃いめの飴色になるタイミングは…今だ!」


今できたカラメル、プリン液の順でガラスの器に流し入れて水が入らないよう防水の付与をした紙で1つ1つ蓋をする。


「次は弱火で蒸し焼きにしてっと」


蒸し器なんてものはこの家にないので、大きめの鍋に3センチほど水を張り、加熱しても大丈夫な器を底に並べて台座に。

その上にザル、そしてザルに人数分のプリンをセッティングすれば蒸し器の代用としては十分だ。


「15分くらい蒸して、冷蔵庫で3時間くらい冷やして完せ…」


言いながらあることを思い出し、僕の顔から血の気がサーッとひく。

嘘であってくれと、台所を見回すが…


「ない…え、無いじゃん」

「どうしたの?」

「冷蔵庫が…ない…! 母さん! この家に食べ物を冷やす設備は!?」

「ないわよ~、この家で甘味なんて作ったことがないもの~」

「なん…で」


思わず膝から崩れ落ちる。


「寒くなってきたんだから外に置いときゃいいだろ?」

「いい訳ないでしょう! プリンとは繊細な食べ物なんです! 外に置いておいたら常温では固まらないんです!」

「お、おう…ごめん」

「まさかここまで来たのに…もう手に届くところにあるのに…」

「なんだかよく分からないけど冷やせばいいなら、わたしやるわよ?」

「多分…ソラ姉では冷やしきれないと思います…結構な冷気で長時間冷やすんで」

「ねぇクロス、この際だから作れないかしら~?」

「あっ…」


母さんの何気ない提案を聞いて体に電流が流れたような衝撃が迸る。


「そうだ、僕は生産職。 無いなら自分で作ればいいんだ!」



「時々クロスってバカなのか天才なのか分からなくなるよな」

「うるさいわよキッド、そんなに言うならあんたの分は抜きよ」

「別に悪口で言ってねぇよ!」


キィーーーン!

『…~~~~…』


白いキューブ先生からのアドバイスもスパイスとなり、無意識に口角が上がる。


「制作開始、ですね」


作業小屋で余っていた木の立方体を取りだし組んでいく。


「錬成」


大体の形ができていれば錬金術で隙間なく1つに繋げることができ、一本の丸太をくり抜いたのと同じことになる。

木の箱が出来たら同じ原理で石を板状に錬成して、木箱の内側にくっつけて補強と保冷性を高める。


「手元に部品はないけど、僕にはこれがある。」


キューブに鉄屑を入れて魔力を込める。


「錬成開始」


カッシャン…カッシャン…カッシャン…カッシャン…

チーン! ぺっ!


できた蝶番を扉と木箱に固定する。


「ソラ姉、キッド兄、魔力を分けて下さい」

「いいけどどうやるの?」

「手をかざして下さい」

「お、おう」


恐る恐る手をかざす2人から遠慮なくとばかりに魔力を吸い込むキューブ

僕の魔力を込め、石ころを投入。


「錬成開始」


カッシャン…カッシャン…カッシャン…カッシャン…

チーン! ぺっ!


石板に大きな魔法陣が施されており、その真ん中には緑、青、黄色の結晶が1つずつ嵌っている。


「なんだコレ?」

「冷却装置です。 水属性で冷気を生み出し、風で冷気を循環させる。

雷属性は温度を測る魔法陣と他2つに繋がっていて、中の温度を調整してくれます。

最後にコレを取り付ければ…」


石板を冷蔵庫の天井に取り付ける


「できた! ソルジャー、時間は!?」

『…』


小さな手で親指をグッと突き立てる。

間に合ったみたい。


魔力を軽く流すと冷却装置が動き始める


「触ってみてもいい?」

「まだあまり冷えてませんがいいですよ」

「うおっ! ホントに冷てぇのが出てる!」

「すごいすご~い! こんなに冷たくなるのね!」

「あら~、これはいいわね~。 夏場は食材がいたみやすいからこれが一個あるだけで助かるわ~」


家族が満足してはしゃぐのをほどほどに、プリンを中に並べて扉を閉じる。


「よし、お昼前なのでおやつの時間まで冷やしましょう。

食べるのが楽しみですねぇ!!」


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