手のひらサイズの農業チート(3)
畑をコング、ソラ姉、キッド兄に任せ、僕たちは村の木こりであるボッカさんのところを訪れていた。
「こんにちはー」
「おぉ 来たか」
「こんにちは ボッカさん」
「ん? アルフ坊か デッカくなったな
一瞬誰か考えたぞ」
「ご無沙汰してます。」
「ったく、たまには顔見せに来いよ。 よっこらせっ」
話しながら枝を落とした丸太をヒョイっと肩に担いでしまう。
「すご…」
「来い、頼まれてた木はいくつか見繕ってある。 こっちだ」
「やった!」
「いつの間に連絡を取ったんだい?」
「昨日のうちにホワイトソルジャーに手紙を届けてもらったんですよ。
なにごとも報連相ってやつです」
「無敵のホワイトソルジャーが伝書鳩にされてる…」
「小屋と井戸をって話だったが、なんか細工はすんのか」
「小屋はアイテム袋みたいに中の空間を広げたいですね。
井戸自体は普通なんですけど、滑車じゃなくてポンプを設置したいので板材で余ってるのがあったら欲しいです」
「なら小屋を優先した方がいいな。 これなんかどうだ?
魔力の流れは1番いいから付与にもってこいだ。」
「どれどれ…」
紹介された木の肌に触れてみる。
僕は魔法使いではないけれど、スキルのおかげか師匠たちの教えのおかげか、素材の良し悪しや魔力の流れを触れることで感じ取ることはできる。
サラサラと流れる冷たい小川でありながら、命を育む温かい感じ…
「この木がいいです」
「お気に召したようで嬉しいぜ。 次はこっちだ」
2本、3本…と順調に小屋に使う木を選んでいく。
「こんだけあれば充分か」
「ですね」
「そんじゃ斬るか 危ねぇから離れてろよ」
「あ、待ってください。 実は試したいことがあるんですけど、やってみていいですか?」
「かまわねぇが、どうするんだ?」
高くそびえ立つ木に右手を触れ、あのゲームのイメージを強く持つ。
「錬成」
いびつな楕円の木肌に格子状の線が入り、まるで木だけ世界線が変わったかのようにカクカクとしたシルエットに変化していく。
手を伸ばし、変化した木の一部を手に取ると木製の立方体がジェンガのピースのように抜き取れた。
立方体の角材は縦3つ×横3つで縦にずーーーっと積み上がっているのだ。
「思ったとおり成功です!」
もう1個、木の立方体の角材…木のキューブを抜き取る。
パッと見はジェンガのように崩れそうなものだけれど、どうやら水で言うところの表面張力みたいな力で互いを惹きつけあっているのか、崩れる気配はない。
「な…何がどうなってるんだこりゃぁ!
どうして枝も落としてない生木が丸ごとカックカクに変化しやがる!?」
「僕の錬金術の特徴を使った裏技です。
そしてこうすれば、錬成」
木のキューブ2つを重ね合わせ、もう一度詠唱する。
すると、一度バラバラになった事実が嘘かのようにピッタリくっつく。
「運搬も加工もしやすくなるわけです。」
「なるほどなぁ、バラせば運びやすくなって、向こうで並べてくっ付ければ子供だけでも家が建てれるかもって考え方だな」
「その通りです! あ、でもこういうのって林業を生業にしている方からすれば失礼にあたったり…」
「いや、この村にいる奴らなら坊のやり方に嫌悪感を示すことはないだろう。
だが本職の人間として守ってほしい点はあるな」
「守ってほしい点?」
「1つ。たとえ小屋でも建物は建物だ。 高い場所での作業には十分に気をつけろ」
「はい。 高所作業はミニロボット達に担ってもらって僕たちが高いところに上がる必要がないようにします」
「そ、そうか それなら安心。
もう1つ、何かするときは自分達だけでやろうとせずにちゃんと大人を頼れよ。
と言っても、白スケ様に手紙を届けさせる時点で分かりきった話だがな」
「えぇ。 根回しは社会の基本と母さんに習いましたので」
「英才教育がしっかりしてることで。
ってなわけだ、油断してっと置いてかれんぞ長男」
「しょ、精進します…」
ボッカさんのところにアルフ兄を残し、アイテム袋に木のキューブを詰めてもらい、白スケ様ことホワイトソルジャーに空輸してもらう。
その間に僕は畑へと戻る。
「小さい村と言っても、歩くとちゃんと遠い…なにか移動手段が必要かも」
「おかえりクロス! ちょうどこっちの畑は種植え終わったわよ」
「え? もう済んだんですか」
「つってもほとんどアイツがやったんだけどな」
「別にいいじゃない、みんなで植えたようなものよ」
キッド兄の指す方角を見る。
畑の奥、小屋を建てる予定の場所の傍に土魔法でこさえたのであろう支柱4本とツタのロープ。
それが囲む中から一定のリズムで土が放り出されていくつかの山が出来上がっている。
「お~いコング~って…ワォ」
『!』
バリケードの中にいるであろうコングに声をかけようと覗くと直径にして60センチほどの穴が口を開けており、底が見えず、その先が真っ暗な闇と化していた。
穴の奥深くから何やら聞こえてきたかと思うと、勢いよく土の塊が斜めに飛び出してきた。
「コング!?」
『♪』
「どうしたの、井戸掘ってとは指示出してないよ」
『?』
「いや、いずれ掘るつもりではあったけどさ」
『♪』
「うん、ありがとう。 あ、小屋のための穴も掘ってある」
戦闘用ではないためか、農民に必要なスキルがほぼほぼ網羅しているシゴできゴリラさんは、4面の畑に種植えをさっさと済まし、僕が戻ってくるまでの時間で井戸掘りと小屋の基礎工事を始めてくれていたようだ。
『♫』
「ん? どうした?」
今出てきた穴を指し、テンション高めにエッホ♪ウッホ♪と喜びのダンスを披露する。
「ま、まさか!」
コングを持ち上げ、泥人形のように土で汚れたコングの手や脚部に触れ、確信する。
「っ! 濡れてる」
「ぬれてるってお漏らしか?」
「そんなわけないでしょ! 地下水がでてきたのよ!」
「わかってるって、ジョークだよジョーク!」
「アンタねぇ!」
キィーーーーーーーーン!
白い運び手の飛行音が近づいてくる。 木材確保チームからの最初の便だ。
上からは家の資材、したからは穴と水の気。
「どうやら、忙しくなりそうですね」
並の子供なら農作業も小屋を建てる作業も嫌でしょうがないだろう。
でも、僕たちにとっては違う。 むしろ夢の秘密基地を作っているワクワクに満ちている。
僕たちは美味なる食と、まだ見ぬワクワクのためにレンガを錬成しては井戸を囲い、木のキューブを並べては繋げる。
1段、また1段と直方体や立方体が積み上がっていき、ついにはログハウス調の小屋と、四角く囲われた井戸が完成したのであった。
「「「 できたぁー! 」」」
気づいたら真っ赤な夕日が地面を染めていた。
「ちょっと見ない間にずいぶん開拓が進んじゃったみたいだね」
「あ、おかえりなさいアルフ兄」
「おつかれー」
「やっぱり、今日のうちに必要最低限のものは完成しちゃったね。後で父さんになんて言われるやら」
「た、たしかに…」
「その時はシロちゃんとおサルさんの出番よ。
3年は夢に出るくらいコテンパンにしちゃえばいいわ!」
ソラ姉はホワイトソルジャーの銃撃ポーズや鍬を振り回す真似をする。
へへへっ
アルフ兄も土まみれだな」
「こっちはこっちで大変だったんだよ
キューブにした木が強風で崩れたり、上の方のキューブが落ちてきたりね」
「無事でよかったです」
「ホントだよ」
「さすがにヘトヘトね」
「あーつかれたぁ~」
『♪』
『…』フっ




