手のひらサイズの農業チート(2)
翌日
「さぁて 始めますか」
既存の畑は村のもので好き勝手使うわけにはいかないので、ベンドリック家の隣、何も手が付いておらず雑草の生い茂る場所を好きに使えばいい。と許可が降りたので早速取りかかる。
「ねぇクロス…まさかとは思うけど」
「これ全部草取りからするとか言わねーよな…」
僕が何かをすると言うと嬉々として参加したがるこの2人もさすがにいやそうな顔をするが、そこはお構いなく。
「大丈夫ですよ この子がいるんで」
新たな仲間を2人に紹介する。
「へぇ~、母さんとなに話してんのか気になってたけどコイツのことを話してたんだな」
「白い子とちがってカァワイィ~~!」
「可愛いですかこれ…」
まぁ、猿系の見た目で2.5頭身だしホワイトソルジャーの騎士っぽさからのギャップで可愛くも見えなくもない…か?
「よろしくねファーミーコング」
ウィン…ウィン…
背中から電池を装填するとホワイトソルジャー同様に目に光を灯して周りを見回す。
周囲を確認し終わったのか僕に向き直り、空き地を指して首を傾げる。
『?』
「そうだよ これから僕たちの畑を作るんだ。
早速たのんでもいいかな?」
『♪』
「今度の機体には感情表現機能があるのか」
「ホワイトソルジャーもコアチップは同じものを使っているので片方にそういう機能が偏ることはないはずです。
人間と同じように擬似的な性格や個性があるんじゃないですかね」
「な、なるほど」
足のキャタピラをうまく使って手のひらの上で回れ右をし、手首ギリギリまで下がって全速ぜんしーん!とばかりに手から飛び出す。
「うぉっ、はやっ!」
「可愛いだけじゃなくて足も速いのねぇ!」
姉たちの声など聞く間もなく自分の仕事場所へ急行するゴリラ君。
畑の中心…にするのであろう場所に着くとグルッと一周見回し、鍬を振り上げザクっと振り下ろす。
数回掘ったと思うと今度は少しだけ掘った場所に鍬を棒倒しの棒のように突き立てて、そのまま再度離れるように走り出す。
「どこに行くの!?」
「草取りするんじゃねーの?」
北向きへとある程度進んだ後ギュッと直角に曲がる
「多分、土地の区画を設定してるんだと思います。
広すぎても畑を管理しきれなくなっちゃいますから」
さらに進んで直角に曲がるを4回繰り返し、最初に曲がった北の直角線を曲がって中心へと戻り、突き立てた鍬を引っこ抜いて肩に担いでこっちを向く
『?』
「これくらいの広さでいいか?ってことかな」
「え~っと、オッケー! それくらいでおねがい!」
『♪』
「正解みたいね」
この世界の長さの単位はわからないけど、20mあるかないかくらいの正方形が開墾する広さとして適正だと判断したのだろう。
わざわざタイヤ痕をつけて回ったのは僕に分かるようにしてくれたようだ。
『~!』
鍬を天高かく掲げ、魔力を練り上げている。
本格的な作業が始まるらしい
ヌン!
『!』
ザクっ…と静かな音をたてて突き込んだ鍬から地面に魔力を流す。
すると、正方形の外周と内側に光の線が浮き上がる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
膨大なエネルギーが大地を鳴らし、足から振動を感じる。
「地震…?」
「うわ揺れてる!」
「どうなるの!?」
『!!』
ゴリラ君がこっちに向きながら身振り手振りで伝えてくる。
おっ
「3人とも下がって」
パァッ!
光の直線に沿って亀裂が入り、亀裂からさらに強い光が飛び散る。
「うわっ!?」
「キャっ!」
「なんだ!?」
「ワァっ!?」
20秒ほど魔力の高まりは続き、それが治るとともに視界が徐々に開ける。
目を開けるとそこには、文字通りの『田』を描くように縦横と外周を通路とした4面の畑が出来上がっており、その奥に小屋くらいなら楽々建ちそうな開けたスペースも確保されていた。
「うぉーーーー! 草取りが一瞬で終わったぁ!」
「なんでぇ? どうやったのおサルさん!」
『♪』
「草取りと整地を数秒で…やっぱり常識破りもいいところだよ…」
「あれくらいならまだ序の口ですよ。 そもそも何も無いところに火を創り出したり、触ることのできない風を自由に操ったり、物理の常識ではありえないことを実現させる。
要するに魔法というものは常識をぶち壊すためにあるんですから」
「魔法のない世界を知るクロスから見れば、そういう見え方なんだね…」
ドタバタっ!
家の方から血相を変えた母さんと父さんが飛び出してくる
「お前たち無事か!?」 「みんな大丈夫!?」
「 なっ… なんじゃこりゃぁーーー!! 」
「あら~、やっぱこうなるのね~」
説明中…しばしお待ちください
昨日の時点で相談済みの母さんは出てきて2秒で全てを察した様子だったが、父さんは別。
聞けば聞くほど顔が赤くなり僕を含め子供たちの顔はどんどん青ざめる。
「村の財政と自由研究のための畑…か」
「その過程で、ちょっと耕したらもう畑ができちゃいました…的な?」
「いやそうはならんだろ」
「ですよね…」
「普通、この広さなら草取りだけでも3日、整地して耕すなんて1ヶ月くらいはかかる。それをお前たちは…」
「2分で済んじゃいました。 エヘっ」
「エヘっじゃない! 少しは常識を知れバカもんが!」
ゲンコツッ
「いったぁーい!」
「クロスが怒られてんの珍しっ」
「いつもはキッドの役目だのものね」
「ソラ姉があれこれ言ってくるせいだろ!」
「キッドもよく文句言うじゃいない!」
「はいはい、どーどー」
「「 馬じゃない! 」」
「フローラも何か言ってやれよ」
「私は別にこの程度、予想済みだからなんとも思わないわよ?
魔法というものは時に常識をブチ壊すためにあるものらしいもの~」
「お前もそっち側か…」
「あの」
「なんだバカ息子」
「作業の続きに入ってもいいですか?」
「コイツ…! 話を聞けぇい…!」
「適度に休憩するのよ~」
「はーい」
「それから、家の方が崩れかねないから揺れる作業は最小限にして頂戴ね~」
「お、おーい フローラ?」
「あら~ あなたが月末の私と仕事から逃げてなければ『シロちゃん』と協力することができて、元々の損失は少なく済んだと思うのだけど~?」
「うっ、あの、その…」
「それとも、この畑以外に村の損失を取り戻せる策があなたにはあるのかしら~?」
「いやぁ、それは、なんというか…」
「息子の常識にケチつける暇があるなら仕事しましょうね~」
ガシっ
「あ、あの おたすけ…あぁ」
ズルズルズル…
青筋の拳を静かに制し、口ごもる父を引きずるように家へと撤収していく母を見送る…
「それじゃ気をとりなしまして作業に戻りましょう!」
「怒られたのに全然心折れてねぇ」
「どこにクロスを突き動かすなにかがあるのかしら…
ちょっと怖くもあるかも」
「ソラ姉、キッド兄、ここからはマンパワーも必要になります、手伝ってくれますか?」
「お、おう!」
「もちろん!」
「アルフ兄」
「分かったよ…それで何をすればいいの?」




